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第五九五話 「息継ぎ」


 「うーん、この辺りかなぁ?」

 「一応、条件とは合ってるッスね。」


 結局、多少チャチャが怖がったものの、浸水は無事終わり、途中、一回、地下2階層に立ち寄った後、更に潜って現在は地下5階層だ。


 途中、いつものように『変成の腕輪』と淫魔法【夜遊び情報誌】のコンボで、ここまでのマップは確保してある。


 今はそのマップを特性【ビジュアライズ】で平面ではなく立体にして見ているところだ。


 ちなみに、さすがに地下5階層までくると探索者の数も減ってきているので、今は人気のないところで淫魔化している。


 降りてきた井戸は天然の岩肌のようで、いかにも海の中というような趣きだったが、そこから入る各階層は、ギリシャを思わせる様相で、おそらくもとは白いであろう床や壁、天井が、いつもの緑色と違い、うっすらと青く発光している。


 水中迷宮といっても迷宮の床から少量の空気が湧き出しており、天井から50センチほどはその空気が溜まって息継ぎが出来るようになっているのだが、その空間が実は曲者なのだ。


 と、いうのも、あまり綺麗な話ではないのだが、排泄物の問題が出てくるのだ。


 迷宮内では、当たり前だがトイレに該当する施設はない。


 だが、普通は迷宮自体が床や壁、天井から生きていないものを吸収するため、ぶっちゃけた話、どこで用を足しても長期的には問題はない。


 ところがこの迷宮だと、水中で『それ』をしてしまうと、水に溶けた『それ』を呼吸することになってしまうので、絶対的な水量で希釈はされるものの、プール内での放尿よりイメージは悪い。


 それどころか、大きい方は重くて水に沈むタイプならまだ床から迷宮が吸収してくれるが、軽くて浮くタイプだと、先程の天井にある空気溜まりの関係で天井に触れられないので吸収されず、水中に溶けた後、迷宮の壁や床から吸収されるという、不衛生極まりないことになるのだ。


 そのため、この迷宮では、用を足す際は床が水中から完全に露出している場所でするのがマナーだと探索者ギルドで釘を刺されている。


 と、いっても小さい方は水中でそのまましてそうな気がプンプンするけどな。

 地下に潜れば潜るほど気温、いや水温も低くなって冷えてくるし。


 普段、私達のパーティーでは、その辺りを淫魔法【腸内洗浄】で大きい方も小さい方もカバーしているのだが、私抜きでこの迷宮で稼ぐとなると、そっちの問題も出てくるので、今はそういう場所を探しているのがまず一つ。


 もう一つは、いつもの淫魔法【ラブホテル】でのショートカット用の扉探しだ。


 こちらも同じく水中で繋げてしまうと部屋の中が水浸しになってしまうので、陸上の扉である必要がある。


 【ビジュアライズ】化した立体化した地図を、今度は水平図と断面図に切り替えながら、それっぽいところを探しつつ、今は移動しているところだ。


 今いる地下5階層は敵のレベル分布としてはランク2の範囲内。


 もう1階層下がるとランク3の敵が現れるようになり、逆にもう1階層上がるとランク1の敵が現れるようになる。


 シルバーの探索者になるためなら、もう1階層上の依頼でも良さそうだが、短期的にランクを上げたいのなら、ドロップ品的にこの階層が手堅いだろう。


 逆にもう一回層下がると、ドロップ品は良くなるが、その分、セオリー的に危険度も増す。


 後は、私抜きで、というか、私のチート能力抜きで、この特殊な環境下、どこまで安定して戦えるかだ。


 一番大きいのは種族特性【ドレイン】を今までのように武器に追加で付与出来ないこと。


 ミツキの投げナイフや、サナも使う弓矢のような複数のものに事前に付与しておくことは出来るのだが、その肝心の飛び道具が、手から離れると『遊泳の加護』を失って水の抵抗を受け、急激に減速してしまうのがネックだ。


 なので、原則、あくまで奥の手として手で持って刺す用にしか使えない。


 ちなみにこの手を離れると『遊泳の加護』を失うというのは魔法にも適用される。


 特に電撃系の魔法は、水中の敵には効果的ではあるのだが、水を伝って周りも感電するので、スキル【魔力操作】などを使って効果範囲を限定できない限り原則使うな。と、こちらも探索者ギルドので釘を刺されている。


 同じ理由で毒系の魔法も駄目だし、当然、火炎系の魔法も役に立たない。


 まあ、その辺りはサナとミツキのことだから上手くやるとは思うが、私がいることによる一番のパーティーとしての恩恵は、何より索敵と鑑定だ。


 何処にどんな強さの敵がいるか?


 これが分かるからこそ、適切な強さの敵と戦え、その戦闘中、ほかの敵に絡まれたりせずに安全に狩りが出来るのだ。


 いや、たまに絡まれていたような気もするが、鑑定はともかく索敵は、私がいないと、おそらくミツキだよりになるだろう。


 あとは敵のスキルや魔法の発動タイミングがメニューのログで分かるというのもかなり大きいか。


 うーん、やっぱり不安になってきた。


 「ととさん、かに?」

 「蟹?」


 そんな事を考えてながらチャチャの指差す方を見ると、遠くに小さな蟹が両方のハサミを立てて威嚇しているのが見える。


 いや、あれ、この距離からあの大きさなら全然小さくないな。


 うん、いきなり泳ぐ相手と戦うより、地上戦っぽく戦えそうという意味では良い相手かもしれない。


 レベルも25と、この階層の敵の強さを図るには良い塩梅だ。

 あれをみんなの初戦の相手にさせてもらおう。


 サナです。


 なんか、あまり水中にいるって感じしないですね。

 確かに意識を変えると、普通に泳げるんですけど、なんか変な感じです。


 でもこれ、『遊泳の加護』のせいで感じないんだと思うけど、たぶん海水ですよね?

 後のお手入れ大変そう…。


 次回、第五九六話 「蟹」


 おっきい蟹?

 やっぱり蟹肉とか落とすのかな?

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