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第五八六話 「一日の終り」


 「んー、食べた食べた飲んだ飲んだ。」


 居間のソファーにどっか、と腰を下ろし、腕も足も伸ばして食休みをする。


 今日の晩ごはんはサナ特製のおでんだった。


 夏におでんというのもなかなかミスマッチのように思えるが、そこはサナの腕が光り、冷やしおでんという変わり種だ。


 トラージの街は海産物が豊富なので、当然のように竹輪やかまぼこのような練り物の種類も多いらしく、それをメインにあとは定番の煮玉子、こんにゃく、大根の代わりにに冬瓜、あとは茄子やオクラなどの夏野菜、個人的に意外だったのはトマトも入っており、彩りも綺麗で、それに加えてキリリと冷えた焼酎まで用意されていたのでたまらない。


 あれよあれよといううちに、たっぷり食べ、そして飲まされてしまったのだ。


 どうでもいいけど、こんにゃくって、あんなややこしい作り方する食べ物なのに、こっちの世界でもちゃんとあるんだな。


 私が知らないだけで実は元の世界でも歴史が古い食べ物だったりするのだろうか?


 ぼんやりそんなことを考えていると、チャチャとミツキがテレビの前で食後の勉強をし始めた。


 ミツキ曰く、「語学はあんまり完璧を目指すと沼にハマるッスから、最初は意味が通じればいいくらいのつもりでやった方が伸びがいいッスよ?」との事なので、手抜き版【鬼族語】講座をするらしい。


 鬼族語の読みの方は留守番をしている間、サナが教えていたので、今度は話し言葉を中心にやるらしい。


 一応、ちゃんと通じてるかのリスナーとしてサオリさんが一緒だが、結構ご機嫌に酔っ払っているので大丈夫だろうか?という心配はあるが、ミツキとチャチャはシラフなのでたぶん大丈夫だろう。


 「お父さん、ここ座ってもいいですか?」


 その声に振り向くと台所の片付けが終わったサナがエプロンを畳んで立っていた。


 「サナ、お疲れ様。全然いいよ、気にしないで座って。」

 「じゃあ…」


 エプロンをソファーの隅に置き、サナが私の足の間に座る。

 そこかい。


 てっきり横に座るものだと思って答えたのだが、まあいいや。


 そのまま私の胸元に頭を預けるようにして体重をかけてくるサナは、そのまま首を伸ばして耳元に囁きかけてくる。


 「お父さんもお疲れ様。そっちは上手くいったんですか?」


 食事中はチャチャもいたのでエディ達の話はしなかったのだが、留守番をしていたサナも気になっていたのだろう。

 こちらも、お酒が入ってほんのりと赤いサナの耳元に唇を寄せ、チャチャに聞こえないようにどんなことがあったかを報告した。


 話すときに息がかかって、くすぐったいのかサナがぷるっと小さく震えるのがちょっと面白いが、逆に質問をされるときも、こちらの耳元で囁かれるので、ちょっとこう、くるものがある。


 なんだっけ?ASMRだっけ?こういうの。


>淫魔法【ASMR】を得た


 久しぶりに来たな。


 えーと、なになに?


 発した言葉に【鎮静】あるいは【興奮】の効果を与え、【交渉】または【性技】に対して淫魔ランクに応じたボーナスを得る。あるいは対象に指定した幻聴を聞かせる魔法。


 前者は耳元で囁かないと効果が発動しないが、後者は他の淫魔法と同じ射程なので、いつものおまけの効果なのだろうが、地味に汎用性が高そうだ。


 「無音を聞かせる」という方法で実質聴覚を奪うことも出来るらしい。


 淫魔ランクが4になって魔法の説明書きも丁寧になっているような気がする。

 そのうち時間があるときにでも、他の魔法やスキルの使い勝手も再チェックしておいたほうが良さそうだ。


 「んー?お父さん考え事?」

 「んーん、なんでもない。」


 これくらいの内容なら耳元で囁きあわなくても良さそうなものだが、ついついサナから香る良い匂いにつられ、耳元で唇を寄せてしまう。


 「はい、ああいうのをいちゃいちゃしている。っていうッスよ。」

 「いちゃいちゃしてるにゃ。」

 「あらあら。」


 いや、そういうのは教えなくてもいいから。



▽▽▽▽▽



 お酒を飲んで眠くなったサオリさんと、ヤクザの事務所への出入りも含めて一日動きっぱなしで疲れ気味のミツキと、頭の使いすぎで疲れた様子のチャチャの3人は早めに床につくことにしたようだ。


 私とサナを居間に残して、奥の方の寝室へと向かっていく。

 チャチャとサオリさんが線対称で目をこすりながら歩いていくのを後ろからミツキが誘導していっているのがちょっと面白い。


 「じゃ、お休みッスー!あとは、二人でゆっくりどうぞッス。」


 そう声をかけてきたかと思うと、サムズアップしたミツキの手が寝室の扉へと消えていった。


 うーん、どうやら気を使われてしまったようだ。



 サナです。

 最初は普通のおでんにしようと思ってたけど、お父さん達が、この熱い中戦ってたなら、冷たいものの方が食べやすいかな?って思って変えてみたけど、好評だったので良かったです。


 猫舌のちーちゃんもこれなら普通に食べれますしね。


 次回、第五八七話 「マーキング」


 それにしても、この冷蔵庫って凄い便利です。

 保管するだけじゃなく、こんなにも簡単に食材を冷やす事が出来るなんて…。

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