第五八二話 「ノーダメージ」
おかしい…身体が重い…いや、キレが悪い…。
出血のせいか?
筋肉で止血したので今突かれているのも傷の表面だけだ、それは無い。
そう、また突かれた。
避けきれない。
立て続けに3打、いや、また2打。
俺の攻撃にカウンターで合わせてきたと思えば、ガードの上からも打ってくる。
執拗に傷口を狙ってくるもののダメージは無い。
ダメージは無いものの、やはりなにか変だ。
毒?毒かなにかなのか?
パンチが余裕をもって躱されるどころか、返す刀で何打も打たれる。
腕が鈍っている?
ああ、そうだ、そんな感じだ。
探索者を首になって呑んだくれていた頃。
そんな時の身体が自由に動かない感覚。
身体が勝手に反応してくれない感覚。
それに…それに良く似ている…。
どうした?何が俺の身体に起こっっている?
と、いうか、この女は、こいつらは何者だ?
俺になんの恨みがある?
ベルタの手の者か?
いや、それはない。あいつにそんな金は無いし、俺が猫に恨まれているというなら、あいつだって同じはずだ。
もしかしてシェーラの?
いや、それはもっとない。ないはずだ。
ぐ、また3打。
駄目だ、今は集中しなくては。
認めたくはないが、この女は強い。
拳だけで俺と対等以上に渡り合えるなんて…。
いや、違う。何かが違う。
強い、確かに強いが……もしかして、俺が弱くなっている?
そんなことがありえるのか?
▽▽▽▽▽▽
手も指も開いたままの目を狙った裏拳でエディをスウェーさせ、開いた胴体に片手で2連撃。
そこから掌底でのアッパーに繋げて、更にサオリさんの付けた傷口に沿って3連撃。
からの両親指を傷口に合わせ、腰を掴むような両手掌底。
踏ん張る力ももうないのか、単純に力の差なのか、後ろに吹き飛ぶエディ。
尻もちをつかなかっただけ、たいしたものだ。
間合いを詰め、両手を合わせ拝むような体勢からの両手掌底でピーカーブーをスタイルをこじ開けながら、飛び上がるようにして顎を撃ち抜き、そのまま両手を外側に大きく回すようにして、再度腹から胸にかけての両手での4連撃。
流石に両手掌底だとダメージが入るらしく、エディがフラつき始めている。
淫スキル【性病検査】でチェックして…うん、こんなもんか。
「そろそろトドメよ?」
「抜かせ!」
当初のスピードが見る影もないエディの右ストレートをクロスカウンター風に左手をミツキの開けた穴に引っ掛けるように掴み、右手を巻き込むように内側から肩に回して、勢いを殺さないようにそのまま一本背負い。
昔デミオークにやった頭から落とすようなタイプではなく、背中から落とす。
そのまま左足を喉笛に乗せて押さえ、抜き手でまた傷口を狙っての4連撃を打つと、自然に押さえた左足に体重がかかってしまったのかエディが苦しそうな声を漏らす。
身体を翻し、エディの両腕を太ももの内側に揃えた状態での馬乗りから、相手の下唇を掴んで頭を起こさせる。
「弱い者の…チャチャの苦しみを今度はアンタが味わいな。」
一瞬、エディの目が何かを悟ったかのように大きく開いたが、もう何も語ることはない。
そもそも私にこの男を罰する権限などない。
これは単に娘を泣かせた男が気に食わないので殴りに来た。
それだけの話だ。
下唇の粘膜から、今まで傷口からそうしてたように種族特性【ドレイン】で経験値を吸い取り、そのまま床に後頭部が当たるようにエディの頭を叩きつけたところで、エディが気絶した。
これくらいで気絶判定が出るなんて、レベル3とは弱いものだな。
サナです。
もう夏なのに、これは変かなぁ?
でも、いい練り物が手に入ったし、たぶんお父さんがたはお酒飲むだろうしいいよね?
ちーちゃんも味見して貰える?
次回、第五八三話 「罰」
え?熱い?
大丈夫?




