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第五十六話 「着替え」

 装備を整えるのになんだかんだで結構な時間がかかってしまったので、今は街の中央にある噴水広場のベンチで休憩をしている。

 噴水の水が太陽の光に反射してキラキラと綺麗に輝いているのを見ながら、二人でブダとヴァレのジュースをそれぞれ飲んでいる。


 ヴァレのジュースはオレンジとグレープフルーツの間くらいのような味がして、サナの話によると実際、実もそのような感じらしい。


 街の東側は探索者ばかりが歩いていたが噴水広場までくると街の中央ということもあり色々な人が行き交っている。

 ここから西の通りにいくと生活用品関係の店が多くなり、北の通りは食品関係、南の通りは職人関係と、地区によって住み分けがされているようだ。

 ちなみに行政関係はこの噴水広場から伸びるそれぞれの通りの角に集約されている。


 サナが落ち着いて日に当たるのは久しぶりだといっていたので、今はまったりと日光浴をしている。

 とはいっても道行くサナくらいの年齢に見える女の子や自分くらいの男がどんな服を着てるかくらいはチェックしているのだが。


 なんだかんだで自分で選ばずお店にお任せした方が良いような感じがしてきた。

 と、いうのも多種多様すぎて判断がつかないのだ。

 たぶん鬼族の種族装備を普段着ていても、ロマみたいに同族じゃないと違和感に気づかないだろうし、特に悪目立ちもしなさそうだ。


 そんなわけで当初の予定を若干変更して西側の通りにある大き目の子供服専門店に向かうことにした。

 13歳とはいえ一応成人のサナにとっては不本意かもしれないが、サイズ的に考えると一番これが手堅い。


 同じ通りにティーンズ用の専門店も一応あったので一応覗いては見たが、そこの最小サイズがサナにとってはギリギリで、そうなると品数が極端に少なくなるので選択肢も当然少なくなってしまうのだ。


 そもそも新品の既製品を売ってる店自体が少ないというのもある。


 古着屋やオーダー店の方が圧倒的に多いし、そちらが主流なんだろうが、前者はサナはそれでいいというが私に抵抗があり、後者は私はそれでいいと思うがサナが「そんな高価なものを」と抵抗があるので折衷案となったのだ。

 それでも相場からすると気持ち高めではある。

 あと貸衣装屋もそれなりにあった。

 どんな層が使うのだろう?


 店に入ると早速店員が横スクロールのような動きで近寄って来た。

 社交ダンスとか踊りそうな雰囲気の短い金髪のお兄さんだ。

 なにかお探しですか?と店内を見渡す前に聞いて来る。

 なんかカモられそうな気もしないでもない。

 

 「この娘に似合う服を上下セットで2着見繕ってください。そのうち1着は動きやすいものでお願いします。あと下着を上下3着、靴下も同じ数お願いします。」

 

 「あらお兄ちゃんから妹ちゃんへのプレゼント?」

 「いいえお父さんです。」

 サナが間髪入れずに訂正する。

 「あら、ずいぶん若いお父さんなのね。ごめんねワタシ黒髪ちゃんの歳ってよくわからなくて。んー、黒髪ちゃんならワタシよりも、あの子に選ばせた方が趣味合うかもー。ちょっと待ってね。」

 オネエ言葉の店員がまた横スライドで移動していく。

 

 代わりにやってきたのは黒髪バリキャリという感じの女性だ。

 上下黒のスーツで眼鏡までかけてる。

 眼鏡もあるんだこの世界。

 高級品っぽいが。

 

 「では、ワタクシがお嬢様のお召し物を選ばせていただきますね。」

 見た目の堅い雰囲気とは違い、話し方は丁寧なものの柔らかい。

 「お嬢様は何かお好みがありますか?」

 「え、えーと。」

 サナはアワアワしてる。

 こういう店に入るのは初めてだといっていたので緊張しているのだろう。


 「この街の雰囲気にあった普段着をお願いします。自分たちで選ぶと、どうしても同じようなものになってしまうので…。」

 「なるほど、ありますよね、そういうこと。わかりました。お任せください。」


 サナが強制連行されていくので後を着いていく。

 念のためにサナには何かあった時には指輪を通して念話で連絡するように事前に話はしてある。


 しばらくは店員にされるがまま、姿見の前で服を身体に当てられていたが、そのうち慣れて来たのか自分でも服を選ぶようになってきた。

 「お父さん、似合う?」と聞いて来る仕草が可愛らしい。

 何着ても似合うよ。と素直に答えるとサナにも店員にも怒られた。


 事実だからしょうがねーじゃねーかよー。とちょっと拗ねる。


 結局、1着目はシンプルな七分丈の淡いグリーンのシャツに膝上丈のカーキのキュロットスカート。

 2着目はベルトでウエストを絞るタイプの膝下ロングのデニムシャツワンピースだ。

 悪くない。いや、むしろいい。

 サナの細身の身体によく似合ってる。

 べた褒めされて照れているサナを店員がまた強制スクロールしていく。

 向かう先は下着売り場なので今度は着いていかない。

 他の客の目もあるしな。


 一通り揃ったところで会計を済ませ、サナが着て帰りたいというので試着室を借りて着替えさせる。

 サナが何々をしたい。って自分からいうのは珍しい気がするので、だいぶテンション高くなっているのだろう。

 試着室に入ったのを見計らって声をかけ、淫魔法【コスチュームプレイ】で出したニットとサロペットだけを消す。

 しばらくすると、はにかみながらデニムシャツワンピースを着たサナが出て来た。

 

 他の服は自分のバックパックに入れてしまったようだ。

 うん、やっぱりよく似合ってる。

 うちの娘は最高に可愛いな。

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