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第五四九話 「迎撃戦」

 

 「上がってきちゃ駄目にゃ!」


 馬車へと飛びかかって来た狼の頭をチャチャのロングハンマーがモグラ叩きよろしく捕らえ、ギャン!という鳴き声とともに狼はもんどり打って地面へと落ちていく。


 「うにゃー、それにしてもいい匂いがするにゃー。」


 どうやら背後から香る干し肉の匂いに注意を引かれているのは狼だけじゃなさそうだ。


 「一つ!…二つ!」


 さっきと同じように飛びかかってきた狼の両前足を、今度はサオリさんの薙刀が刈り取り、流れるように薙刀の石突で叩き落とす。

 そして転がっていくその狼を避けようとした後ろの狼に向かってサオリさんの中級単発光魔法が炸裂した。


 たしかこれはタツルギの御宮で覚えた魔法だな。

 さすがにチャチャに比べるとサオリさんの戦闘スキルは高い。


 と、まだ1頭も倒してないのは私だけか。

 などと思っているところで、淫スキル【マゾヒスト】の危険感知に反応が入る。


 馬車の横を大きく膨らんで走っていた狼3頭による同時攻撃。

 一斉に飛びかかってくる3つの狼の頭はケルベロスを連想させる。


 が、スキル【双突】による槍での2連撃が左右の、スキル【格闘】による前蹴りが中央の狼の頭を捕らえる。


 左右の狼は頭を貫通された姿のまま地面へと落ちていき、中央の狼はアッパー気味に入った蹴りの威力で大きく弧を描きながら飛んでいった。


 「ミツキちゃん、こっちはいけるよ!」

 「オッケー!行くっすよー!ダブル【相対回避】!」

 

 ミツキのスキル発動後、サナとミツキが放った2本の矢が、それぞれ正確に狼の胸を貫いていく。


 おそらくミツキのスキル【相対回避】の第1効果である『自身のステータス【器用】を倍加もしくは半減させる』と、第2効果の『その効果をバフとして他者に与えられる』の両方を使って二人の弓矢の命中率を上げたのだろう。


 魔法でも倒せただろうが、さっき敵が近すぎて魔法でちょっと馬車が焦げたのを気にしたのかもしれない。


 「右側クリアッス!」

 「後ろももう着いてこないにゃー。」

 「援軍もないみたいですね。」

 「お父さん、左側任せちゃってごめんなさい。」

 「いや、大丈夫、みんなお疲れ様。」



▽▽▽▽▽



 「いや、助かった。これは少ないけど、受け取ってくれや。」


 ラルの町に到着し、商人用の宿に荷馬車を停め終わると、馬人族の運ちゃんがニコニコ顔で手にコインを握らせてきた。


 「いえ、何かあったときには護衛もする約束ですから、お礼なんていいですよ。」


 そういって、コインを返そうとするが、干し肉の樽を投げる思いをしたら、これくらいは十分安い、気持ちだからうけとってくれや、と強引に受け取らされてしまった。


 感触的には大銀貨かな?


 ついでといってはなんだが、明日の護衛も頼まれてくれないか?とお願いされたのだが、ちょっと仲間と相談させて欲しいと保留にさせて貰っている。


 その気になったら、この商人宿に泊っているので、いつでも声をかけて欲しいとのことだ。


 とりあえず了承して、メニューのアイテム欄にしまってある樽を降りた荷馬車に積み直しておく。


 ちなみに先に積んであった荷物は、馬人族の運ちゃんと話をしているうちに、既に別の商人に引き渡し済みだった。


 手際が良いというか、時間通りに動く定期便の強みだな。


 「お腹すいたにゃぁー。」

 「うふふ、チャチャちゃん、ずっとお肉の匂いに鼻ならしてたものね。」


 チャチャとサオリさんがそんな話をしながら、周りを見渡している。


 「チーちゃん、ちゃんとお腹すいたっていえるようになったッスね。」

 「うん、最初はずっと遠慮してたのに、最近は少しづつだけど自分の気持ちを話せるようになったみたい。」


 そんなチャチャ達をみながらミツキとサナがそう話をしている。

 うん、ただの空腹とはいえ、チャチャが心を開いてくれているようで、私も嬉しい。


 「それじゃ、お駄賃も貰ったし、とりあえずどこかでご飯でも食べようか?」


 「にゃ!」

 「はい。」

 「了解ッス!」

 「はーい。」


 迷宮ほどではないものの護衛で身体を動かしたせいでお腹が空いていたのか、みんなの返事は早かった。


 サオリです。

 ラルの町は、この辺りでは農業の町として有名なところです。


 ここの野菜は里の近くまで来る行商人の方たちも沢山持って来てくれるのですが、美味しいんですよね。


 次回、第五五○話 「ラルの町」


 あとは、鮭も特産品だったかしら?

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