表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

541/979

第五四〇話 「ウルキの街」

令和2年12月1日 作者より

 11月16日に第五三二話 「月と影」の投稿を失敗していた事に今気づきました。

 よりにもよってミツキの重要回を…。

 現在は割り込み投稿していますので、よろしければそちらもご覧ください。



 「お天気が良くてよかったですね。」

 「そうですね。」


 後部座席でナビをしてくれているサオリさんの呟きにそう返事をする。


 サオリさんは、おそらく夜空に綺麗に輝く月を見てそういっているのだろうけども、実際問題として山道の下り坂で雨なんて降られると、車の自重もあって、さすがに危険性が増してしまう。


 この辺りはしばらく天気だったのか、天気も道も良くてなによりだ。


 安全第一で上りよりも少し多くの時間をかけて『竜の顎』を下りきり、ようやく少しずつ平野らしいところに出てきた。


 ここまで来れば大丈夫だと思うが、助手席のサナも、そしてその隣に座っているチャチャも一応引き続き路面状況には目を光らせてくれている。


 まぁ、猫のように夜目が効くチャチャは光の反射で本当に目が光ってるように見えるのだが。


 見通しの良い一本道ということで、車も少しずつスピードを出せるようになって来ているので、このペースならそう大した時間もかからずにウルキの街に着けるだろう。


 「あっちで草が枯れてるにゃぁ。」

 「枯れてる?」


 最初にチャチャが気づき、少し遅れてサナがチャチャの指を指す方向を見る。


 「枯れてるっていっても間違いじゃないけど、あれは収穫前の麦だよ。」


 しばらく走るとチャチャが指を刺した方角だけじゃなく、道を挟むように大きな麦畑が広がり始め、月明かりと自動車のライトに照らされてキラキラと光っている。


 この様子だと刈り入れ時期まで、もうそんなにはかからないだろう。


 この世界、というか現在いるマップの元になっている北海道としては、麦は真夏に収穫というイメージだが、それに比べると少し時期が早いかな?


 おそらく元の世界より少し緯度が低く、温かいためだろう。


 しばらく麦畑の風景を楽しみつつ走っていくと、こんどは川が近くに見え始め、麦畑から水田へと風景が代わっていく。


 「これでもウルキの街の西部ほどじゃないらしいッスから、食べ物の豊かな国ッスよね。」

 「うふふ、もう少し街に近くなると、今度は野菜農家が多くなるはずですよ。」


 後部座席でミツキとサオリさんがそんな話をしている。


 麦畑地帯の方はそうでもなかったが水田地帯の方はちらほらと農家の家と納屋が並びはじめ、ウルキの街に近づくにしたがって少しずつその数を増やしていき、都会へと向かっているのが実感できてきた。



▽▽▽▽▽



 ウルキは街の中を大きな川が1本、中規模の川と小さな川が2本ずつ流れており、街の区画もそれに合わせて作られている。


 川を中心としているので、コンセプト的にはホウマの街に近いのだが、ホウマみたいに区画が東西南北に碁盤の目状に整備されていないのは、自然に寄り添うような古い街のスタイルなのかもしれない。


 この街に城壁はなく、その代わり街の中央に大きな城が立っており、その形はどちらかというと西洋風なのだが、城の周りの造りは和風で城自体も石造りではないようだ。


 一言でいうと西洋風に立てられた日本の城。といったところか?


 迷宮は街の東側の大きな川の近くにあるようで、類に漏れずその周辺が探索者街になっているようだ。


 まだ十分、夜市が賑わっている時間なので、あちらこちらから探索者達の楽しそうな声が聞こえてくる。


 タツルギの街よりは人族も多いようだが、それでも4割まではいかないだろう。


 「海母神様系の亜人族も多いッスね。」

 「たしか、大川おおかわを通じて海から街に出入りできるのではなかったかしら?」

 「美味しそうな匂いがするにゃぁ。」

 「お魚のお店が多いみたいね。」


 四人とも通りの様子を眺めながら思い思いに語り合っている。


 「夜市を一通り見ながら先に探索者ギルドで宿を取ってしまおう。

 夜食はその後にでも食べにくるか、買いにくればいいさ。」


 サナとチャチャに両手を繋がれつつも、そんな話をしながら探索者ギルドへと向かった。



▽▽▽▽▽



 「お父さん、お疲れさまです。」

 「ありがとう、サナ。」


 『蒼翠』という焼酎をサナに注いでもらいながら一息つく。

 色を表す文字面から海の色でも表しているのかと思ったが、今回通ってきた山の側にある麦畑で取れる麦を使った焼酎なのだそうな。


 青は青でも海の青じゃなくて樹木の青の方なんだな。


 この街の地酒ということで頼んでみたが、コクと香りがふくよかでなかなか美味しく、運転の疲れが溶けていくようだ。


 同じく地物だという魚の干物も味わい深いので、これは飲みすぎないようにしないとな。



 チャチャにゃ!

 自動車って速いのにゃー!

 こう、にゅーんって景色がかわっていって面白いのにゃ!


 だから見るお仕事も楽しかったのにゃ。


 次回、第五四一話 「タイミング」


 うにゃぁ、ちゃんとご飯食べさせてもらったのに、いい匂いするとまたお腹鳴っちゃうのにゃぁ。

 贅沢者だって怒られちゃうかにゃぁ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ