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第五三五話 「温泉街」


 「こっちですよー。」


 バイキング会場である大広間では浴衣姿のサオリさんが既に席をとってくれており、こちらを見つけ手を振っているので、こちらも小さく手を振り返す。


 どうやらサオリさん自身は席だけじゃなく既に自分の分の料理も確保しているようだ。


 「さぁ、チーちゃん、ここでは好きな食べ物を好きなだけ食べていいッスよ?」

 「え?!こんなにたくさんあるの好きなだけ食べていいのにゃ?!」

 「目移りしちゃうね。」


 三人娘は早速バイキングの方に興味津々らしい。

 意外とミツキが平然としているのは、以前やっていたという仲居の仕事の経験からだろうか?


 逆にチャチャはあっちへキョロキョロこっちへキョロキョロと落ち着かない様子だ。


 それもそのはず、元の世界の朝食バイキングと比較しても見劣りしないくらい、ここの料理は豪華で品数が多い。


 いや、むしろ多種族に対応できるよう元の世界以上に種類は多いのかもしれない。


 逆に言うとマイナーな料理は種類はあっても数が少ない様子なので、それだと朝起こしてくれる時にミツキがいっていた早くいかないと良いもの無くなっちゃうというのわかる。


 現に主食コーナーのナンっぽいパンはもう数えるほどしか残っていない。

 とはいえ、食パンからバケット、クロワッサンにいたるまで、まだまだパン類は十分に残っているし、ご飯系も白米から麦飯、お粥まで用意されており、味噌汁もここの名物らしいきのこ汁となっている。


 ちなみにお粥は温泉の源泉で炊き上げた温泉粥というものらしい。


 焼き物コーナーでは、卵焼きのほかにハムエッグなども焼きたてを提供しているようだ。


 ハムエッグはチャチャの好きなベーコンエッグの親戚みたいなものだというサナの説明を受けて、チャチャが早速そこに並んでいる。


 背筋が伸び、耳もピンと立てて、尻尾が左右にゆっくりピシタンピシタンと揺れていて真剣そのものだ。


 そんな風に三人娘はもうしばらく食べるものを選ぶのに時間がかかりそうなので、私は空いているところの料理を適当に選び、麦飯にサービスのとろろ、それからきのこ汁と一緒にお盆に乗せてサオリさんの前へと座る。


 「おはようございます。だいぶ早くから来てたんですか?」

 「おはようございます。いえ、席についたのは、ついさっきですよ。」


 いわれてみるとサオリさんはまだしっとりと髪が濡れている感じがする。

 ドライヤーがない世界では、サオリさんみたいに長い髪は大変だな。


 ちなみにサオリさんは、温泉粥に肉味噌と温泉卵をトッピングして卵粥状態にしたものをメインにしたらしい。


 ちなみに、ここのバイキングは普通の皿の他に縦に3つ、横に3つ小さな窪みになっている仕切り皿も用意されているのだが、サオリさんさんはそのうち5つくらいしか埋まっていない。


 貧乏性でついつい全部埋めてしまう私とは大違いだな。


 「ととさん、ハムエッグさん焼いてもらったにゃ!」

 「あら、良かったわね。」


 両手で大事そうにハムエッグの乗った皿を持って見せに来たチャチャをサオリさんが隣の席に招く。


 「でもチャチャ、早くほかのお料理とかも選んでこないと、せっかくのハムエッグさんが冷めてしまって可愛そうだよ?」


 「うにゃ?!そうにゃ!急ぐにゃ!」


 慌ててバイキングの方に戻っていくチャチャ。

 そちら側の方では、そんなチャチャをサナが手招きしている。


 「チャチャちゃんも、ここを満喫しているみたいで良かってですわね。」

 「あはは、すっかり明るくなって何よりです。」



▽▽▽▽▽



 「馬車は明日の朝出発予定だったッスよね?」

 「そうだね。」

 「ってことは、今日中に馬車、っていうか馬車団はここタツルギの街に来るはずなんスよ。」

 「ふむ。」


 ソーセージの刺さったフォークを持ちながら力説するミツキの話を要約すると、今日の夕方に馬車団がタツルギに着くという日程になっているのなら、そこから明日の発車時刻まではウルキ方面への街道が空いているのでは?という内容だった。


 「そうか、それなら自動車が使えるのか。」

 「そうッス。前の感じだと日が暮れてからここを出ても、その日のうちにはウルキに着くッスよね?」

 「速いもんね、自動車。」


 サナも、やかんのほうじ茶を入れながら話に乗ってくる。


 「ウルキ行きの街道は山の中で危ないですから、野営もしないでしょうし、日が暮れてしまえば人と会う機会は確かに少ないと思います。」


 サナから湯呑を受け取りながらサオリさんもミツキの考えに同意した。


 「なるほど。じゃあ、夕方になったら様子を見ながら出発してみるか。」


 私の発言に話についていけてないチャチャ以外がうなずく。


 「でね、お父さん、それまでの時間、お願いがあるの。」

 「温泉街!みんなで温泉街見て歩きたいッス!」


 サオリです。

 そうですね、確かにどらいやぁに慣れてしまうと、こうして普通に髪を乾かすのが億劫になってしまいますね。


 え?後で用意してくれるんですか?ありがとうございます。


 次回、第五三六話 「ウルキの街へ」


 自動車…わたしもちょっと楽しみになってきました。

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