第五三三話 「二番目」
>レンは淫魔の契りにより眷属を倒した
>50ポイントの経験値を得た
>ミツキは淫魔の契りにより主を倒した
>350ポイントの経験値を得た
>ランク差ボーナスとして1,000ポイントの経験値を得た
>ミツキは淫魔の契りにより主を倒した
>350ポイントの経験値を得た
>ランク差ボーナスとして1,000ポイントの経験値を得た
>レベル36になった
▽▽▽▽▽
「アタシ面倒くさい女ッスね。ごめんなさいッス…。」
「んー、ミツキは考えすぎなところはあるけど、面倒だと思ったことはないよ。」
腕枕の状態のまま反対側を向いてしまったミツキを、腕を畳むようにしてこちら側を向かせ、そのまま抱き寄せる。
「そうだなぁ。例えば凄く美味しいジュースが今、目の前にあるとする。」
「ジュース?」
「そう、ジュース。ミツキはこれが美味しいというのを聞いたことがあるけど、飲んだことはない。想像出来る?」
「大丈夫ッス。」
「でもサナは同じようなジュースを飲んだことがあって、今回もこのジュースを楽しみにして飲むことが出来るし、飲んでも美味しいと思える。」
「あー、なんとなくわかってきたッス。」
ミツキはもうピンと来たのか。早いな。
「チャチャの場合は、飲んだことも無ければ、それが自分にあたるものだとも思っていない。」
「でも最近は、コップにアタシ達がコップに注いで上げれば飲めるし、美味しかったって素直に言えるッスね。」
「そうだね。その上、自分が美味しかったから他人にも分けようともする。」
「チーちゃんのそういうところ凄いッスね。ママさんは?」
「サオリさんは、飲むこと自体には抵抗はないけど、前に一番美味しく感じた飲み物がある。
今回のジュースも美味しいけど、これを美味しいといったら、前に一番美味しく感じた飲み物のことが嘘になってしまうんじゃないかと気になってしまうタイプ。」
「あ、そっちも含むんスね。了解ッス。」
「で、ミツキの場合は…」
「アタシの場合は、聞いたことある美味しさが気になりすぎて、こぼさないようにジュースを持つだけで、いっぱいいっぱいになっちゃうッス。
……でも無理やりにでもパパが飲ませてくれるッスね。」
「美味しいとは思えるかい?」
「それは大丈夫ッス。ちゃんと幸せッス。あと、ちゃんとパパに恋もしてるッスよ?」
ミツキのストレートな物言いにこっちがちょっと赤面してしまう。
「そうッスね、アタシが一番女の子としてパパに恋してる自信はあるッス。
サナちーは娘としての愛情の方が強いッスし、ママさんの場合は恋というより愛って感じッスよね?
チーちゃんは、愛とか恋というより、ようやく懐いて来たって感じッス。
でも…」
「でも?」
「アタシの好きは100%パパに恋してるんじゃなくて、恋として割合はたぶん7割くらいで、残りは娘としての好きッスだと思うッス。
…違うッスね、100%恋するのが怖いから3割腰が引けてるんスよ。」
バツが悪そうにおどけてみせるミツキ。
「そうか、それでもちゃんと娘としても好きでいてくれて嬉しいよ。」
腰が引けている。いや、自分の『好き』に自信が無いのは私も同じだ。
それでも好きだといってくれるミツキが愛おしくて、ついつい頭を撫でてしまう。
「サナちーはきっと逆で、娘としての好きが7割で残りが女の子としての好きッスね。
ママさんは大人の女性として7割愛してて、サナちーの手前、母親としての立場が3割残ってる感じッスか。」
なかなか面白い分析だな。
「アタシはサナちーみたいに、ちゃんと素直に愛情表現できないッスし、ママさんのようにそういう事に慣れてもいないッス。
その上、7割しか勇気も出ないッスけど、それでも…。
…それでもちゃんと、女の子としてパパが好きッス。大好きッス。」
真剣な目で、晴れやかな表情でそう言い切るミツキ。
その笑顔が眩しく、そして愛しく、胸が熱くなる。
「ありがとうミツキ。私も大好きだよ。」
こうして二番目の心の鍵が、再び私の心の鍵を開けてくれた。
失っていた『好き』という心を、サナが、そして今ミツキが取り戻してくれている。
チャチャにゃぁ…。
そんなに食べられないにゃぁ…。
え?これもにゃ?にゃ?お風呂にゃ?いっぺんには無理にゃぁ…。
次回、第五三四話 「涙」
枕が、枕が飛んでくるにゃぁ…。




