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第五二〇話 「チャチャのおごり」


 そんなこんなの結果として、チャチャが主体となってデミボアーを7体倒し、最終的にはランク1の魔素核が3つ、猪の牙のカプセルが3つで1セット、猪肉のカプセルも3つで1セット、合計15銀貨とセットにするには1つ余った猪肉をチャチャは手にすることが出来たのだ。


 時間的にはもう少し狩ることが出来たのだが、7体目を倒したところでベテラン探索者っぽい蜥蜴族の男性から待ったがかかった。


 いわく、こんな浅い階層で乱獲されると若い層が育たない。との事だ。


 とはいえ、実際その私達もその若い層であるところのチャチャを技術的に育てるためにやっていることなのは理解してくれているようで、私達の実力ならもっと深い階層でも危なくはないだろう。と、アドバイスをしてくれたのだ。


 ここでは平原周辺は年齢的にもレベル的にも低い探索者に譲るのが慣例となっているらしい。


 素直に頭を下げ、お詫びと情報料代わりにエグザルの街で買ってあった赤ワインの小瓶を渡すと蜥蜴族の男性の連れだった蛇人族の女性が上機嫌になって、追加で情報を教えてくれた。


 ここタツルギの迷宮は原則として各階層が面で繋がっているため、稀に深い階層のモンスターが浅い階層まで現れることがあるらしい。


 多くはそれを狩りそこねた探索者が逃げて来たのを追いかけてくるというパターンなのだが、それに気をつけるのは勿論、その時はこの平原でベテラン勢が力を合わせて撃退する慣例もあるとのことだ。


 死ぬまで戦えとはいわないが、シルバー以上の探索者でこれを無視すると立場が悪くなるし、人族なら最悪森の中で()()()()()にすらなりうるから気をつけろとの事だった。


 これ知らなかったら結構立場的にヤバかった話だと思い、改めて頭を下げ、追加でエグザルの牧場で買ってあったビーフジャーキーを贈ると、同じく蜥蜴族の男性の連れだった犬人族の女の子が大喜びで食いつき、猪肉が取れてるなら獣鍋のセットが探索者ギルドの食堂で売っているから使うと便利だと追加で教えてくれた。


 タツルギでは迷宮からも周辺の森からも様々な獣肉が取れることから、肉の臭みを取る香草や味噌なども入っているそういうセットの需要が高いらしいのだ。


 食堂で個別の料理を頼むより安いしね。とその犬人族の女の子はウインクして、この迷宮の初心者の主食であることなんかも面白可笑しく教えてくれたので、改めてお礼をいい、せっかくだから今晩はぼたん鍋にしようという話になったのだ。


 その後、オオプラチナコガネの時と同じく換金所で収穫物を現金化して貰ったのだが、山羊族のお姉さんが管理をしやすいように、と、気を使って大銀貨1枚と銀貨5枚という形でチャチャに報酬を渡したものだから、チャチャが動揺。


 元の世界でいうなら、初めての一万円札を与えられた小学生、みたいな感じで、謙虚なチャチャは、こんな大金受け取れない、と、皆で分けようという微笑ましい状態になったのだが、サナやミツキの説得のかいがあって、チャチャが自分で働いたお金だから、これはチャチャのものだけど、自分たちも手伝ったのは確かだから、チャチャが獣鍋セットを買って私達に晩ごはんをおごって欲しい。というラインで手打ちになったのだ。


 ちなみに5人用の獣鍋セットは1銀貨だった。


 ちなみにどう考えてもお酒が飲みたくなる流れだったので、清酒を少し買ってある。

 隣の街、ウルキ周辺は米も麦も十分取れるらしく、そこからの輸入品が結構豊富な種類あったのだ。


 チャチャはそれも自分が出すといってたのだが、流石に酒代までたかるわけにはいかないので、これは自分で出し、ついでに皆が飲むものも購入した。


 探索者ギルドの食堂に併設してある売店は商売上手だな。



▽▽▽▽▽



 そんな訳でチャチャのおごりのぼたん鍋をみんなで楽しみ、少しお酒も入って賑やかになってきたころ、少し悩んだ様子だったチャチャが思い立ったように口を開いた。


 「ととさん。」

 「ん?チー、どうした?」


 お酌をしてくれているサナから目を話してチャチャに向き直る。


 「明日も迷宮に入っちゃ駄目かにゃぁ?チャチャ今日みたいにみんなと働きたいにゃぁ。」


 「あら。」

 「いいッスね!」

 「いいと思うよ?ね、お父さん。」


 サオリさんもミツキもサナも乗り気だし、チャチャに自主性が出てきたのは喜ばしいことだ。

 勿論、異論はない。


 「そうだね、じゃぁ明日は少し深い階層に行って、今度はチャチャにお手伝いして貰おうかな?」


 「にゃ!頑張るにゃ!」


 ぱあっと花が咲いたように笑顔になるチャチャ。

 自分のために迷宮に入って貰うのは心苦しいが、自分が手伝える側なら嬉しいといったおもむきだ。


 やる気満々のチャチャの頭を撫で、ついでに鍋から肉を取ってやりチャチャの器に乗せる。


 「いっぱい食べて明日も頑張らなくちゃね。」


 そういいながらサナがさりげなく野菜を追加で乗せる。


 「あい!チャチャ頑張るにゃー!」


 サオリです。

 ウルキの街の西部は大きな平野になっていて、稲作も畑作も盛んなんですよ?

 ウルーシの街の北部にある平野と合わせてアサーキ共和国の穀倉地帯になっています。

 次回、第五二一話 「タツルギの迷宮再び」


 麦なんかは、たしか大聖神国街や反対側のトルイリの街まで輸出してるというのを聞いたことがあります。

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