第五一七話 「オオプラチナコガネ」
いつものように勇者装備の『変成の腕輪』を使って効果をブーストした淫魔法【夜遊び情報誌】で迷宮のマップを取得する。
いつものパターンだと、これで2階層目までのマップが手に入るはずだ。
エグザルの迷宮と同じく最大8階層まであると想定すると、これで全体の4分の1。
なんとなく全体の面積が分かるかと思ったが、たぶんこれ、面積は階層ごとに均等じゃないな。
1階層目は今いる街への出入り口と平原、それからその奥の林部分まで、2階層目から森といえるほどの樹木の量になっていくらしい。
この調子だと迷うほどの森になるのは3階層目以降ってとこかな?
一応調べたとはいえ、実際そんなに奥に入るつもりはない。
今回はチャチャに技量と自信を付けさせるためにこの迷宮に来たのだ。
▽▽▽▽▽
「チャチャ、あそこ分かる?」
「なんかキラキラした大っきな虫さんがいるにゃ。」
「オオプラチナコガネッスね。」
「おおぷらちなこがね?」
「外殻が金属みたいに輝く上に軽いので装飾品に使われる虫スよ。
迷宮に湧くデミオオプラチナコガネでもカプセルで外殻を落とすって聞いたことあるッス。」
「大白金黄金虫は強くはないけど見つけるのが大変じゃなかったかしら?」
ミツキとサオリさんは知識として存在を知っていたようで、そうサナに説明してくれている。
そうか、そういう用途で使うから探索者ギルドの掲示板に依頼として出てたのか。
それはそうと、
「あの虫さんをチャチャがやっつけます。」
「あい。」
「そのトンカチで頑張って叩いてごらん。」
「結構高いにゃぁ。」
木に止まっているオオプラチナコガネがいる位置は地上からおよそ4m。
背の小さいチャチャでは、その身の丈ほどもあるロングハンマーを伸ばしても、そのままでは届かないが、そう悲観したものではない。
この世界、ジャンプ力は敏捷の能力値が元値になるのだが、そのため敏捷の高いミツキなんかは戦闘時、目の高さくらいなら軽く跳んで回る。
それでいくとチャチャはそのミツキの1.5倍以上の敏捷値があるのだから、その力さえ使いこなせれば十分以上に届くはずなのだ。
それに加えてオオプラチナコガネは『オオ』とつくだけあって体長30センチと図体もデカイ。
器用なチャチャなら一発命中も期待できる。
「うにゃ!」
「あっ…。」
「惜しいッスね。」
「ちょっと飛びすぎだったかしらね?」
目測もジャンプ力も誤ったチャチャの一撃はオオプラチナコガネが止まっている場所の更に30センチくらい上を叩いてしまった。
その一撃と振動に驚いたのか飛び立つオオプラチナコガネは、そのまま逃げてしまうと思いきや、大きく旋回してチャチャ目掛けて襲いかかってきた。
「うにゃぁー!」
30センチ大のピカピカに光る甲虫が迫ってくるのが怖かったのか、それとも反撃にビックリしたのか、そう叫びながらチャチャはロングハンマーを手放して逃げ出してしまった。
「チャチャ、落ち着いて振り向いて!そのままだと後頭部狙われるから!」
「は、はいにゃ!」
指示に従って振り向いたチャチャだったが、そのため逃げ足が遅くなったところにオオプラチナコガネの体当たりがチャチャのおでこに炸裂する。
「にゃっ!…痛…く…ないにゃ?」
チャチャに体当たりが当たる前にサナとミツキが唱えた中級物理防御アップ魔法と装甲魔法がそのダメージをほぼ0に軽減したらしい。
もっともレベルやランク、能力値の差でオオプラチナコガネがチャチャにダメージを与えられるかは微妙なところなのだが。
痛くないの事にチャチャが混乱しているうちにもオオプラチナコガネは再度旋回して更に狙ってくる。
「次来たら爪で引っ掻いてごらん。」
「はいにゃ!」
指先から爪を伸ばし、両手を広げて構えるチャチャ。
だが、思ったより相手の速度が早かったのか、それとも攻撃を迷ったのか、なぜかオオプラチナコガネの胴体を両手で捕まえてしまうチャチャ。
「うにゃぁ!わきわきして気持ち悪いにゃぁ!」
攻撃のチャンスだったのだが、見上げる形で虫の腹と蠢く脚を見てしまったようで、そのままポイっと投げてしまっている。
こりゃ前途多難だな。
チャチャにゃ!
虫さんがおっきくてブンって飛んできてカツンってぶつかってくるにゃぁ。
わきわきしてるから手ではさわりたくないにゃぁ…。
どうすればいいにゃ?
次回、第五一八話 「頭と手」
うにゃ?かかさん手伝ってくれるのにゃ?




