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第五一四話 「手段」


 「今でもそうかは分からないッスけど、チーちゃんは親元に戻りたいんスよね?

 でも、戻ったらたぶん今までのように…」


 ミツキが思っているとおり、現状では疑惑でしかないが、親からネグレクトいや、暴力を含む虐待をまた受ける可能性は低くない。


 あるいは再度非合法に奴隷として売られる可能性、いや、あと1年もして猫人族としての成人を迎えれば、堂々と経済奴隷として売られるのも十分ありえる話だ。


 それを知ってまで親にチャチャを返すべきか?という点を悩んでいるのは私もミツキと同じだし、サオリさんもおそらくそう思っているだろう。


 ただ、最終的にはチャチャの意思が優先されるべきだ。というサナの意見も正しく、そのため、今はまずは故郷まで送り届ける。というスタンスでここまでやってきたのだが、ミツキはそこからもう一手なにか対策を打ちたい様子だ。


 「……身を守る手段をチーちゃんに教えておくべきだと思うんスよ。

 少し話は違うんスけど、アタシも母が死んで孤児院に入った時、自分を守れるのは母から教えて貰った技術だけだったッスから…。」


 親の暴力から身を守るためのすべを学ばせる。

 それを学ぶ必要があるということだけで残酷で倫理的に問題のあることだが、ミツキの言う通り、それはいざという時のための手段にはなるだろう。


 「つらいことを思い出させたね。」


 うつむくミツキの頭を撫でながら抱き寄せる。


 「暴力を振るう親に立ち向かうための手段。か…」


 「いや、それはちょっと違うッスね。

 そっちは技術よりもメンタル的な話ッスから。

 身の安全のためと、チーちゃんが独立するための自信や実力をつけるためッス。


 ちょうどパパに見受けされた後のアタシみたいな感じッスね。」


 ああそうか、そういう意味でもミツキはチャチャに自分を重ねて見ているのか。


 「ミツキに独立されると寂しいなぁ。」

 「?!い、いや、アタシは独立なんてしないッスよ?いつまでもパパと一緒ッス。」


 いや、それはそれでどうかと思うが、照れながらもそうはっきり意思を表明するミツキを無下にはできない。


 「でも、お金も後ろ盾も何もない亜人族の娘が独立するなら、普通、娼館か探索者の二択ッス。

 アサーキ共和国領ならほかに手段もあるかもしれないッスけど、チーちゃん自体は実際のレベルは高いわけッスから…」


 「探索者として身を立てるのが一番手っ取り早いか。」


 「そうッス。レベルは足りてるから、あとは技術と経験だけあれば、探索者という選択肢に家から逃げれると思うんスよ。

 逆にいうと今のうちに探索者としての資格を取っておかないと…」


 「家に入った段階でその選択肢を取れなくなる可能性もあるということだな。

 うん、わかった。私たちと一緒の今のうちに一度迷宮に入ってみよう。」



▽▽▽▽▽



 「ねぇねと、おそろいにゃ!」

 「細かいところは調整した方がいいッスね。」


 買い物に出かけていたサナ達と念話で事情を相談した後、合流していつものように淫魔法【ラブホテル】でいつもの部屋に入り、さっそくチャチャの装備を整えることにした。


 といっても、チャチャのいうとおりミツキの装備の流用で、リザードレザーを使った忍者風の皮装備にブーツだ。

 ただしレイピア類や投げナイフ関係の装備は危ないので外してある。


 ミツキの装備は耳と尻尾が出るスタイルなので丁度良いというのもあるが、そもそもミツキのステータスが


筋 力:D

耐久力:E

精神力:C

感 覚:C

敏 捷:B

器 用:A


なのに対し、チャチャのステータスは


筋 力:E

耐久力:E

精神力:C

感 覚:B

敏 捷:A

器 用:B


と、構成も似ているので、新しく買わないのであればこの装備がベストだろうという判断からだ。


 「武器はどうしましょう?」


 先ほどまでチャチャの髪の毛をお団子型に結ってあげていたサナがそういいながら、今度はチャチャの鉢金の位置を調整している。


 「とりあえず覚えて欲しいのは、私と同じ【格闘】と【回避】だから無くてもいいかな?」


 「いえ、攻撃を受ける際の役にも立ちますから何かは持たせた方がいいと思いますよ?」


 チャチャのグローブを調整しながらサオリさんがそう提案してくれた。


 「チーちゃんは何か武器を使ったことはあるッスか?」

 「ないにゃ。」

 「そうだよねぇ。」


 母親が探索者で技術を教えられていたミツキや、狩りの経験があったサナの方が特別なのだ。


 「えーと、チャチャちゃん、武器になりそうな物を扱ったことはあるかしら?」


 サオリさんが妥協案を探していく。


 「えーと、爪と、包丁と、トンカチくらいかにゃぁ?」


 「そういや爪が出るんだったか。」


 思い出してチャチャのグローブを第一関節以降が出るような指抜きグローブに切り替える。


 「包丁…は実用的過ぎてちょっと問題がありそうだな。」

 「そうッスねぇ。武器として使い慣れると悲劇を呼びそうッス。」


 家庭内暴力の解決方法として包丁はマズイだろう。


 ミツキッス。

 なんだかんだいっても最初に抗わなきゃならないのは暴力ッス。

 身を守る手段や方法を知らないと、いくら頭が良くても駄目だとママに言われていたッスよ。


 次回、第五一四話 「チャチャの武器」


 もちろん自分の力が及ばないときは人に頼るというのも立派な身を守る方法だと思うッスよ?

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