第五〇〇話 「海岸線」
「こっからあっちに向けてがタツルギの街方面への道ッスね。」
ミツキの案内で、途中、海女さんの休憩部屋やら干物製造関係の道具倉庫やら何か所か淫魔法【ラブホテル】用のショートカットをつくりつつ、海岸沿いの広場へとやってきた。
ムーアの港町はルーオイの港町やカリーの港町のように客船が出るような大きな港ではなく、泊まっている船も小型からせいぜい中型のものがほとんどのようだ。
「で、こっからなんスけど、どうするッス?一応途中途中に休憩用というか避難用のスペースや小屋があるって話ッスけど、とりあえずそこまで歩くッスか?」
ミツキの話によると、この海岸線の道路には風や波が強くなった時用の避難所が何か所か用意されているとのことだ。
道路自体は岩肌を切り開いたものらしいが、荷馬車用に道路幅も広めで予想よりガッシリしているものの、その分、落石には注意が必要らしい。
「そうだなぁ…こんな時間で人気も無い事だし、ちょっと前から考えていたことを試してみるかな。」
答えを待つようにして視線を向けるミツキやサナからちょっと離れ、淫スキル【淫魔】で淫魔の身体へとチェンジする。
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カーセックスという言葉がある。
いや、言葉というかプレイか。
今までの経験からすると、こういうセクシャルな概念がある自体で、何らかの淫スキルや淫魔法の対象になるはず。
つまり自動車が用意出来るはずなのだ。
ところがこれが思ったように上手くいかない。
なぜかというと、この場合、自動車は道具じゃなくて場所だからだ。
現に自動車が魔法で用意出来ると考えてから【ラブホテル】で繋げる部屋の選択肢として自動車の車内が選択肢に入って来てた。
たぶん消費量から考えるに、レンタカーとして借りた場合の値段に相当する魔力が消費されているっぽい。
使ってはいないものの、なにげにマ○ックミラー号も借りられたのが驚きだ。
使うのに当たって消費魔力が異常に少ないので、レンタルしているというより、エイプリルフールかなにかのイベントの時に貸し出したという概念が生き残ってるのだろう。
それはさておき、今回、ランクが4に上がっても淫魔法【淫具召喚】の対象として自動車は出てこない。
感覚的な話だが、これはおそらく【ラブホテル】はレンタル相当の魔力が、【淫具召喚】は買取相当の魔力が必要なためなのだろうと思う。
で、おそらくその価格は中古ではなく新品、あるいは定価相当なのだろう。
とはいえ、【淫具召喚】で、かなり高額のラブドールを召喚できたことを考えると、自動車を召喚する必要金額=必要魔力まではあと一声といったところだろう。
要はその分を何かで補填できれば良いのだ。
と、いうわけで、勇者装備の『変成の腕輪』の出番である。
最近は淫魔法【夜遊び情報誌】の効果範囲拡大専門アイテム化していたが、こういう時にこそ使うべきだろう。
『変成の腕輪』を効果範囲拡大に使いつつ【淫具召喚】を行う。
こうすれば金額的か、概念的か、どちらかで召喚しやすい自動車がメニューに浮かぶ。はず。
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「変わった箱馬車ですね。」
「パパ、馬車があっても肝心の馬がいなきゃ走んないッスよ。」
「いや上手く説明でいないけど、これは馬がいなくても走る馬車だから、これでいいんだよ。」
予想以上に上手く召喚できたのは良いのだが……いの一番に選択肢に出たのがハイ○ースというのは、異世界とはいえト○タに怒られるんじゃないかなぁ。
ちなみにこれの召喚にあたり、魔力ゲージを追加で1本半持ってかれたので、通常の2.5倍の魔力がかかった計算だ。
ハイ○ースが新車でいくらくらいするのか、とか、いつ時点での価格なのか、とか、細かい事は分からないが、ざっくり100万円くらいが今の上限っぽいな。
今回の召喚で今後車種が選べるようになったので、次回からはもっと消費魔力が低くて走破性の高い車を選ぶことにしよう。
そうはいっても、多少全長が長いものの車種としては業務用にも使える車なので文句はない。
遠慮なく異世界深夜の海岸線ドライブに使わせて貰おう。
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「ちょっとドキドキしますね。」
「アタシはこれ見ながらナビゲートすればいいんスね。」
助手席にミツキを座らせ、特性【ビジュアライズ】で表示した周辺マップを持たせる。
この世界にはGPSが無いのでカーナビが使えない。というか、そもそもガイドするマップが無いので、道案内はある程度土地感もあって知識もあるミツキが頼りだ。
運転席と助手席の間に座って貰っているサナには、落石の危険があるエリアでスキル【感覚強化】を使って、落石のチェックをして貰う予定だ。
「じゃぁ、そろそろ出発するか。」
サオリです。
あら?いつの間にいつもの部屋に移ったのかしら…。
ん?チャチャちゃんも一緒なのね。
レン君に話を聞きたいけど、チャチャちゃんを起こしたら可哀想だから、明日にしましょう。
次回、第五〇一話 「ドライブ」
それでは、もうひと眠り。
おやすみなさい。




