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第四九二話 「アルサリッサ家」


 「パパ、おかえりッス。

 見てたッスよ、予定変更ッスね。」


 淫魔法【ラブホテル】で繋いだいつもの別荘に戻るなり、テレビの前に陣取っていたミツキがそう迎えてくれた。


 実は先程のカレルラとのやり取りは、淫魔ランクが4に上がった事により出力も可能になった淫魔法【盗撮】や【盗撮】で、この部屋のテレビに中継してあったのだ。


 「お父さん、おかえりなさーい。それなら少しゆっくり出来る感じですかー?」


 台所からはエプロン姿のサナも顔を出してくる。

 ちなみにサオリさんとチャチャを本を見ながら書き取りの練習をしているらしい。


 「いや、予定通り東廻りで行くよ。お昼食べ次第、カリーの港町へ行って、今日中にホウマの街を目指そう。」



▽▽▽▽▽



 「すぱい…間者、ですか?」

 「ええ、カレルラさんのところの黒服の少なくても一人がネローネ帝国と繋がっている様子なんです。

 わざと探らせているのか、それともWスパイにしているのかまでは分かりませんけどね。」


 「だぶるすぱい、って何ですか?」

 「えーと、味方のふりをして敵に情報を流して信頼を得ながらも、実は味方に敵の情報を流す人。みたいな感じッスかね。」


 「それは敵なのかしら?味方なのかしら?」

 「状況によると思いますけど、カレルラさんのところにいるのは、私達にとっては敵に当たるでしょうね。」


 サオリさんやサナの疑問にミツキと一緒に答えていく。


 「それにしてもパパ、よく気づいたッスね?」

 「カレルラさんの様子がおかしかったからね。」


 カレルラが弄んでいた小瓶は、かつて私を試す時につかったものだ。

 それを意味もなくあのカレルラが使うはずはない。


 仮に考え事の癖だとしたら、今までにもその様子を見せているはずなのだ。


 おそらくあの瓶自体の意味が、試す、あるいは警戒を促す合図だったのだろう。


 そして瓶の蓋の上下によって、これから言うことが嘘か、あるいは本当のことかを表すと私は受け取った。


 と、いうのも、あのカレルラが私達が襲われる理由が分からないはずがないのだ。


 王子様の事件の生き証人であるサナ。

 そしてその奴隷としての販売ルートを洗っていけば、サナが私の奴隷になり、そして開放された経緯に、いつ奴隷になったのかという不明点が浮かび上がる。


 そうなれば、当然私、状況によっては淫魔の身体の私ことレインすら調査の対象となるはずだ。


 特に私やレインは、サラ家の騎士団と直接やりあい、その邪魔をしたという面でも名前が上がってもおかしくないしな。


 そこまで分かれば、あとはカレルラの言葉を、瓶の蓋の上下を気にしながら話をさかさまに受け取ればいい。


 つまり要約すると、準備をしている時間を惜しむほど、すぐに東廻りで街を出た方が安全。と、いうことだ。


 おそらくこのエグザルの街からトルイリの街にかけて、西側に手厚く捜査の手が回っているので、今なら逆にネローネ帝国側に飛び込んだ方が、すれ違いを狙えると、いったところなのだろう。


 ネローネ帝国、いや、アルサリッサ家もサラ家の騎士団の話からレインは私の関係者だと思っているだろうから、それがエグザルより西側にいるような餌も撒かせて貰った。


 上手く食いついてくれるのいいのだが…。



▽▽▽▽▽



 「結局、カリーの港町には縁が無いのねぇ。」


 向かいに座っているサオリさんが頬に手を当て小首を傾げながら残念そうに呟く。


 今は昼食も説明も終わり、ラブホテルのショートカットを使いカリーの港町から箱馬車でホウマの街へと向かっているところだ。


 滞在時間は20分もいなかっただろう。

 ちなみに馬車は買ったのではなく、1台を貸し切らせてもらった。


 「前回もエグザルへとんぼ返りでしたしね。」

 「これなら昨日のうちに海の幸味わえて良かったかも?」

 「あー、そうッスねー。あれは美味しかったッス。」

 「美味しかったにゃー。」

 

 隣の席のサナとミツキ、そして向かいの席のチャチャがそういって笑う。


 「あと、残念なお知らせッスけど、次のホウマの街も早めに抜けた方がいいッス。

 ホウマはアルサリッサ家の治める主都ホロウが馬車で1日とほどと近いッスから、早めにミスネルの街に抜けたほうが安全ッス。」


 ちょっと派手に飛び込み過ぎたかな、これ。


 ミツキッス。

 パパとカレルラさんの話、なんか変だなーと思いながら聞いていたッスけど、そういうことだったんスね。


 これでパパの勘違いだったら笑っちゃうッスけど、たぶん間違いないッス。


 次回、第四九三話 「ホウマの街」


 ホウマの街はトルイリの街以上の交通の要所と聞いてるッスから、ちょっと楽しみッス。


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