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第四十八話 「入口」

 受付は駅の改札みたいな雰囲気で、向かって左側が迷宮へ入る用の通路、右側が迷宮から戻ってくる用の通路らしい。

 どちらも出入りするときに探索者ギルドのタグを確認されている。

 タグがない者は何枚かの銀貨を払って割符のようなものを受け取っている様子だ。

 

 「下見だけですが入れますか?」

 そういって受付員にタグを見せるとサナも慌ててそれに倣った。


 「大丈夫ですよ。規則なので一応控えますね。」

 金髪碧眼の女優さんみたいな受付員がそういって、タグを見ながら記号と番号を控えている。

 どうしても前かがみになるので放漫な胸元が目に飛び込んでくる。

 サービスってことは無いよな?


 「下見なら滞在予定日数の登録はしなくてもいいですか?」

 「滞在予定日数?」

 「登録しておくと、予定日数から指定した日数を超えた段階で救出隊が向かいます。

 有料で探索予定箇所も予めお伺いすることになりますが、安全のためにはお勧めですよ。」

 そういってウインクする受付員。

 「なるほど。いや、今回は下見だけなので大丈夫です。」

 「はい、わかりました。それじゃいってらっしゃい。」


 サナの手を引いて迷宮への入口を進んでいく。

 途中から天窓が少なくなり、その代わり照明がポツポツと光ってる。

 魔法の道具かなにかなのだろうか?

 何重もの壁で区切られている門をくぐって進んでいくと、やがて大きなホールに出た。

 天井を更に高くした大きな体育館のような雰囲気だ。

  

 そこには城壁のような壁が更にあり、その上ではこの街に入った時にいたような警備員が監視をしているのかウロウロとしている。

 ここまでくるともう窓はなく、かがり火のような魔法道具があたりを照らしている。

 城門から先は四車線道路くらいの大きな石畳の通路が奥に延びており、そこから先はデミオークと戦った通路のように床も壁もうっすらと緑色に発光している。


ピコン!

>陽光の封印が解けました

>プレイエリアに入りました


 システムメッセージが出た。

 どうやら太陽の光が当たっている場所だとなにか制限があるようだ。

 逆に言うと迷宮内ならOKらしい。

 プレイエリアに入ったというメッセージが一緒に出たということは、淫魔法の使用制限解除とかその辺りだろう


 城壁の前では屋台やバザーのようなものも開かれている。

 煙とか空調とか大丈夫なんだろうか?と思っていると肉の焼けるいい匂いがする。

 バザーの品は装備品よりも消耗品の類がメインの様子だ。

 鑑定はしてないがいかにもポーションといった感じの瓶を売っている店もちらほらある。


 「思ったより賑やかなんですね。」

 「もっと緊張感あると思ったけどそうでもないね。」

 風呂に入ったばかりなのでサナは匂わないとは思うがロマのアドバイスどおり角ありの亜人のいるところは避けて通る。


 城壁沿いに歩いていると、少し大きめの公衆トイレがあった。

 最初地図で見た時にはなんでこんなところにトイレがあるのかと思ったら、この屋台やバザー用のものなんだな。

 用を足してから迷宮に入るように促す張り紙なんかも貼ってある。


 迷宮内でのトイレなんて考えるだけで大変そうというか危なそうだ。


 ちょっと思いついたことがあるので、公衆トイレの陰まで移動して淫スキル【淫魔】で淫魔モードになる。

 「なにかあったんですか?」

 サナが不思議そうな顔をしている。


 「ちょっとおトイレに用事があってね。出口を作ってくるよ。」

 「出口?ああ!」

 サナも気が付いたのかついて来たので女子トイレに入り、奥の方の扉を何個か開け閉めして戻ってきて、また種族特性【トランスセクシュアル】で男の身体に戻る。

 一応、男子トイレの個室の扉も開けておこう。

 これで淫魔法【ラブホテル】の部屋から迷宮入口前までのショートカットができたはずだ。


 その後、公衆トイレのほぼ反対側にある迷宮側のアイテム換金所を覗いた。

 中は例えるなら馬の厩舎みたいな感じで、いくつもの仕切りがあり、その仕切りの中それぞれでアイテムの取引をしている。

 商人風の人もチラホラといるので、ギルドの依頼書の確認はここでしているのかもしれない。

 あとでちゃんと調べておこう。


 「取引されるのは魔素核やカプセルだけじゃないんだな。」

 「迷宮内には変わった植物が生えたり、野生の動物が住みついたりしますから。」


 その他にも特殊な鉱石が取れることもあるし、宝箱が出ることもあるとサナが説明してくれた。

 そういや地元に迷宮あるんだっけ。

 装備品の売り買いもしている様子だが、これはその宝箱から出たやつなのか?

 使い古しに見えるから死体から剥いだものかもしれんが。


 怖い考えになってしまった。


 「そういえば迷宮内で死んだら死体はどうするんだろう?誰かが回収にくるの?」

 「見つかるのが早ければ回収はできますけど、3日もたてば迷宮に食べられます。」

 「食べられる?」


 サナの話だと鬼族の中でのいい伝えでは迷宮は土地の魔力と龍脈からの霊力を吸い上げて成長し、【魔素核】を起点として迷宮獣を生み出すが、その魔素核を生み出すために人や動物の魂が、迷宮の力を維持するためには死体が必要で、迷宮はそれらをその体内で食べるのだそうだ。


 死体は迷宮に取り込まれ、その死体が身に付けていた物はやがて宝箱を通じて排出される。

 その際に魔力や霊力を帯びた装備になることもあるらしい。


 そのような理由で白鬼族では迷宮を維持するためにお墓を迷宮内に作り、また歳をとって先が長くなくなったものは迷宮内にある特別な部屋で暮らし、その後迷宮の一部となって次の世代を潤す一助になるという風習があるそうな。


 実際には迷宮は死体に限らず植物でもなんでも食べるので、土に返すくらいなら迷宮に食べさせるという感覚もあるらしい。

 なんとなくガンジス川っぽい感覚なのかな?

 聖なる特別な場所であるという認識はあるらしい。

 迷宮持ちの亜人集落は同じようにしているところがほとんどだそうな。


 「人族はどうしてるかあたしには分からないですけど、お墓は迷宮の外に作るって聞いたことがあります。」

 「なるほどねー。」

 迷宮は生き物で、かつ聖なる場所か。

 人族側からだと魔王を生み出した邪悪な場所みたいな認識してそうだ。


 そんな事をサナと話しながら最初の受付に戻って来た。

 と、いっても出口なので反対側だが。

 入るときと同じようにタグを見ながら記号と番号を控えられ、受付を後にする。

 ちなみにこっちの受付の女性も爆乳だった。

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