第四八六話 「仕掛け」
「お父さん、本当に一人で大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫、そんなに酔ってないから一眠りすれば回復するさ。」
心配するサナの頭を撫でながら借りたコテージの扉に淫魔法【ラブホテル】をかける。
「その間、みんなで楽しんでおいで。今日はチーの勉強も兼ねてるんだから。」
「そうッスね。午後からは体験もの中心いいってみようと思うッス。」
「いいね、じゃぁミツキ、みんなを任したよ?」
「了解ッス。」
まだ後ろ髪引かれているサナや、新しいものを見つけて走っていきそうになっているチャチャとそれを後ろ抱きにするように捕まえているサオリさんを連れてミツキがコテージを離れていく。
ふぁ…独りになると気が抜けるのか一気に眠気がくるな。
淫魔法【コスチュームプレイ】を解いて裸になりそのままラブホテルの部屋の中のベッドに潜り込む。
せっかくだからこれもかけておくか。
淫魔法【睡眠姦】を自分にかけ、眠りに落ちていく。
たしかこの魔法、基本効果時間が1時間で、1レベル差ごとに5分の追加………
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んんーーーーーーっ!
ぐっすり寝たーって感じがするが、ちょうど1時間と【睡眠姦】の効果時間ぴったりか。
酔い疲れも抜けてるし、これはわりといい使い方かもしれんな。
具体的には『レベル上げ』に盛り上がりすぎて日をまたいでしまった時とか。
この世界、基本的に朝日とともに起きるくらい朝が早いので、寝るのが遅いと地味に朝が辛かったりするしな。
それはそうと、思ったより短時間で回復してしまったから、今からみんなに合流するより、せっかくだから時間のある内に独りじゃないと出来ないことをしておくか。
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とりあえずは、【ラブホテル】のショートカット先の整理だ。
特性【ビジュアライズ】で全部の行き先を部屋の壁三面に表示させてみたが、ドアを開けるたびにショートカットが増えるので、今となっては凄い数になってしまってる。
ソートや順番の入れ替え、フォルダの作成とかも出来るみたいなので、使いやすいように整理しておこう。
えーと、よく使う別荘とか部屋はこっちで、エグザルの街の中のショートカットはこっちにまとめて…各町や街、迷宮ごとにまとめておいた方が探しやすいか。
馬車はまとめて一つのフォルダにして、都市間別の下層フォルダを作っておこう。
と、いっても、ほとんどがこの間作った大聖神国街から各都市行きの箱馬車だが。
えーとこっちは…船?
あー、そういやルーオイの港町から十二振興街の6時の位置あるホウマの街方面の、たしかカリーの港町に向かう船の船室にもショートカットの仕掛けを作ったっけ。
あれ?ってことは、こっちの馬車は…カリーとホウマ間の馬車か。
すっかり忘れてたな。
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淫スキル【夜這い】で忍びながら、今まで忘れていたショートカットをいくつか試してみる。
船室へのショートカットから船の甲板に出てマップを見てみたが、現時点ではカリーに向かう航路の上らしい。
既にカリーにはショートカットを作ってあるので今の所意味がないな。
次に選んだのはカリーとホウマ間の馬車だが、人が乗っててドアを開けれないとか、現在地がカリーとかなので、ホウマ行きとしては全部ハズレ。
ただエグザルの街とヒツシプの街の間の野営が必要な区間を回避した上で、ホウマまで馬車で3時間という好立地であるカリーまでショートカットで移動するのはアリだな。
前に来たときは別件の用事があって馬車乗り場に寄った以外は、ほとんどとんぼ返りだったけども、今回は軽く町を散策して買い物も済ませ、ラブホテルの部屋に戻って来た。
その後、改めて牧場の食堂の方に寄り、近くの売店で肉を追加で注文し、これも持って今度はいつもの別荘へとショートカットをつなげる。
さて、みんなが戻ってくるまで、こっちの準備も済ませてしまうか。
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「これ、パパが作ったんスか?」
「切って刺しただけだから、作ったってほどじゃないな。」
「そんなことないですよ。こんなにたくさん、種類もいっぱいで。」
「え…び?」
「うふふ、海老であってるわよ?」
夕飯用にと用意しておいたBBQの串焼きは思ったより好評のようだ。
サナです。
うーんと、お父さんと一緒に牧場回りたいけど、歩くのは大変そうだし…。
あたしもお部屋に残ろうかと思ったんですけど、結局お父さん抜きで回ることになりました。
次回、第四八七話 「BBQ」
え?うん、そうだねミツキちゃん。
ちゃんと楽しまないと、またお父さんに気を使わせちゃうね。




