第四八一話 「騎乗位」
淫スキル【騎乗位】は一定の距離内で恥骨の位置が対象より高い位置にある場合、特定のスキルの成功率に淫魔ランク分のボーナスを得るスキル。の、ついでに動物を含む乗り物を操る能力がおまけについてくる。
相変わらずおまけの方が範囲広いような気がするが今更もう気にしない。
と、いうか、上に乗った動物をコントロールするのに有利なスキルくらいが手に入ればいいなーと今回わざわざ乗馬体験までしみたが結果的には期待以上だ。
ちなみに手持ちで【騎乗位】のボーナスがつくスキルは対人の淫スキル全般と、【性技】、【格闘】、【回避】、あとは言語系スキルと【交渉】。
【回避】が何を想定してるのか?とか、【騎乗位】+【交渉】は、おねだり的な状況なのか?とか考えるとちょっと面白いが、単純に道具を使わない対人スキル全般というアバウトな区切りなのかもしれない。
「なにか満足げですね?」
馬から降りてサオリさんの元に戻ると、優し気な笑顔でそう話しかけられた。
おもわず顔に出てしまったようだが、一応これで密かに考えていた『移動用に自分たち用の馬車を買う。』という真っ当な選択肢が生まれたのは素直に嬉しい。
とはいえ、この場合、どちらかというと問題は馬の方なのだが。
馬車はその気になればメニューのアイテム欄に仕舞うことが可能だが、馬自体はそうはいかない。
生き物なので世話もしなくてはならないし、預ける場所がある宿を選ばなくてはならないなど、今までに比べると行動が制限されることもあるだろう。
ただ逆に箱馬車を買えばいつでもどこでも淫魔法【ラブホテル】で、その部屋とアクセスできるというのは野営を考えるとかなりのメリットだ。
【ラブホテル】で不可視のテントを張れるとはいえ、『その場にいなくてもいい』という安全性には敵わないしな。
「レン君?なにか考え事ですか?」
「あ、すみません……サオリさん、ちょっと次の場所に行くまでの間、相談に乗っていただけませんか?」
「あら?わたしに?喜んで。」
頼られて嬉しいのか、そういって笑顔で再び腕を組んでくるサオリさん。
その柔らかな胸の感触も再び腕に伝わってくる。
「あっ…」
「え?どうかしました?」
「いえ、なにか、さっきより抱き心地がいいなと思いまして。」
そういわれても別段変わったことは……待てよ?一定の距離内で恥骨の位置が対象より高い位置……これ、もしかして無意識に【騎乗位】が悪さしてるっぽい?
たぶん、相談が【交渉】に該当した上で【騎乗位】ボーナスが乗ったのだろう。
「抱かれ心地もいいですよ。」
「そうですか?」
とりあえずそう誤魔化すと、軽く頬を赤らめ、はにかむサオリさん。
実際、腕が超幸せなのだが、あまり意識しすぎると今度は【性技】に【騎乗位】ボーナスが乗りそうなので気を付けよう。
▽▽▽▽▽
案1.通常の都市間連絡馬車で移動
本来の移動方法であり、シルバーの探索者になった関係で護衛割引とかも視野に入る。
ただしエグザルの隣、ヒツシプの街以降は今いるナイラ王朝からネローネ帝国に探索者ギルドの所属が替わるので護衛割引を考えるなら次の探索者ギルドで手続きが必要。
町での宿泊は問題ないが、野営の際は団体行動なので、その野営レベルを周りに合わせなくてはならないのが最大のネック。
案2.【ラブホテル】のショートカットに頼る。
既に各都市行きの箱馬車は仕込み済みだが、いつ、どこに到着するかは不明。
その上、馬車自体が安全に出入りができる場所に泊まるかどうかも運次第。
ただし、ネネの街かウルキの街に着くのは一瞬、というハイリスク、ハイリターンなプラン
一応、大聖神国街に行く時に成功はしている。
案3.馬と馬車を買って移動する。
運任せの【ラブホテル】でのショートカットよりは色々な意味で確実性があり、馬の扱いと世話はチャチャをはじめ、前の護衛任務の時にほかのメンバーも経験済み。
【騎乗位】を得たことで馬車の運転も問題ないはず。
途中の町で宿の選択肢は狭まるが軍資金はたんまりあるし、淫魔法【夜遊び情報誌】を使えば宿を探すのも簡単。
最終的に馬は里のお土産にしてしまうのも手。
▽▽▽▽▽
「一番お財布に優しいのは都市間連絡馬車ですけど…」
「正直にいえば、サナを探しにこの街に来たときのような生活には、わたし戻れないと思います。」
私の問に羊をモフモフしながらサオリさんがそう答える。
里には乳を取るための山羊はいるが羊は珍しいそうな。
それはさておき、野営の際は団体行動になるので、【ラブホテル】でのテントも張れないどころか、レンタルするか買わなきゃならないとなると、衛生的な面で耐えきれる自信は当然私にもない。
あとほぼ女所帯なので色々面倒ごとに巻き込まれそうな気もするな。
サオリです。
今のように、ふんだんに水も使えて、毎日お風呂にも入れて、虫もダニも出ない布団で寝られるような生活が続くと、野営はもちろん、あまり格が高くない宿屋で泊まるのでさえ抵抗があるのは、今となっては、わたしだけじゃないとおもいます。
だって里での生活と同じか、それ以上の生活ですもの。
次回、第四八二話 「案」
人族でいう貴族みたいな生活ですしね。




