第四七七話 「チャチャとの朝」
「あれ?どこいった?」
チャチャがいるはずの寝室に入ったが、寝ている顔が見えないので一瞬戸惑う。
が、よく見れば布団の隅でタオルケットがこんもりと膨らんでいる。
そっと捲ってみると、それこそ猫のように丸まって寝ているチャチャがいた。
そういやサオリさんの膝枕でも丸まって寝ていたので癖なんだろうと思ったが、自分の身を守るように小さく蹲っているようにも見える。
布団の隅に身を隠すように丸まっているのでなおさらだ。
ネグレクトの結果なのだろうか?と思いながらも、空けられている布団に横になり、自分もタオルケットに中に滑り込む。
「ぬにゃぁ?」
「あ、ごめん、起こしちゃったかい?」
「んんにゃぁ?とととさん?」
とが多いな。
「うん、そうだよ。」
「一緒に寝てくれるにゃぁ?」
半分寝ぼけている様子だが、そういって丸まった体勢から顔を起こすチャチャ。
「うん、一緒に寝ようね。」
そういって横に腕を伸ばし、二の腕をポンポンと叩き、腕枕に誘う。
「んにゃ?」
そうか、腕枕もわからないのか。
「ここに頭乗せて枕にしていいよ。」
「にゃぁ…」
のそのそと近寄って来たかと思うと、ぽてっと額から頭を乗せるチャチャ。
どうもいまいちこなれてないな。
こちらに背を向けるように横向きにしてやり、反対の腕をチャチャのお腹に回し引き寄せ密着する。
わりとサナが好きな体勢なのだが、今の気温じゃ、ちょっと暑いかもしれないな。
「ギュッとされるの嬉しいにゃぁ…」
「そうかい?…あれ?」
人肌で安心したのか、すやすやと寝息を立てるチャチャ。
さっきとは打って変わって手足もだらんと伸ばしている。
「ふぁわ…」
酔って運動して風呂に入った後なので、そんなチャチャにつられて眠くなってきた。
「おやすみチャチャ。」
もう眠りについて聞こえていないだろうが、そう声をかけ、自分も意識を手放した。
▽▽▽▽▽
「ととさんはなしてー。」
んー、なにかが腕の中で暴れている。
微妙にしっとりとしているものの、温かくて細くて抱き心地が良いので、そのまま寝返りをうって寝なおそうとする。
が、思ったより重さがあったようで、仰向けになった状態で寝返りが止まってしまう。
「うにゃぁわ、チャチャは朝ごはんのお手伝いにいかなきゃ駄目なのにゃぁ。」
なんか言ってるが、確か朝ごはんはサナとミツキで作るっていってたような気がするので大丈夫だろう。
そのまま、ふかふかする柔らかい毛並みに顔を埋める。
うん、なんか不思議な匂いがする。
「みにゃぁ。くすぐったいにゃぁ。」
あれ?この匂いはサナじゃないな……
あー
「……おはよう、チャチャ。」
「はやくないにゃぁ、おくれるにゃぁ。」
不服そうに耳をペタンとしているチャチャ。
結局、一晩抱きついたままで寝てしまったのか、お互い汗でしっとりとしている。
というか、飲んだ後なので、たぶんほぼほぼ私の汗だなこれ。
「今日の朝ごはんは、ねねさんとねぇねで作るっていってたから、焦らなくても大丈夫だよ。」
「そうなのにゃ?じゃぁ、チャチャは何をすればご飯を貰えるのにゃ?」
いや、何もしなくてもご飯はあたるのだけども、チャチャの感覚ではそうではないのだろう。
「とりあえず、お風呂入ったらかな?」
「お風呂にゃぁ?」
嫌そうな顔をしているチャチャを見て、ちょっと笑ってしまった。
サナです。
んー、昨日の晩は結構こってりとしたものが多かったから、朝はさっぱりとしたものの方がいいかな?
お昼用におにぎりもつくるから、ご飯は多めに炊いて、あ、でもミツキちゃんと一緒に作るから、朝も昼もパンの方がいいのかも?
次回、第四七八話 「朝湯」
あ、ミツキちゃん、おはよう。




