第四七四話 「ととさん」
「にゅー。」
眠そうにチャチャが目を擦っている。
無理もない、サオリさんやチャチャ本人の話によると、今日は一日【共通大陸語】の勉強で疲れているところに、お腹いっぱいになった上、軽くアルコールまで入っているのだ。
というか、酔ったサオリさんがわりと面白がって飲ませていたのも大きい。
ちょっと危なさそうなので、今は座っている位置をあまり飲んでいないサナとミツキ側のお誕生日席からサオリさんとチャチャ側のお誕生日席に移動してサオリさんのお酒に付き合っている。
まぁ、サオリさんが結構酔っ払っているのは、気を使ってこまめにミツキがお酒を注いでいるせいもあるのだろうが。
あとサナは家というか宿だとあまり多く飲まないような印象があるので聞いてみると、大家族の炊事担当としての癖で、どうしても後片付けの事を考えてセーブしてしまうそうな。
「レンくーん、のんでますかー?」
そういって徳利を傾けてくるサオリさん。
もう結構ベロベロだな。
「いただいてますよーっととと。」
ぐい呑でお酒を受け、一口飲んでテーブルに置く。
「チー、そろそろ寝るかい?」
「うにゃー、でもー。」
眠そうな顔をしながらも周りをキョロキョロしているチャチャ。
「独りで寝るの、寂しい?」
そういってサナが頭を撫でるとコクリと頷くチャチャ。
皆と一緒にいたいという気持ちになっているチャチャに思わず笑みが溢れてしまう。
「お父さん、あたし…」
「いや、いいよ、私が寝かしつけてくる。」
「寝かしつけってなんにゃ?」
「チャチャが寝るまで一緒にいてあげる。ってことだよ。」
「うにゃぁ、ととさんと一緒なら寝るにゃぁ。」
サナはテーブルの上の空いた食器を集め始め、半分片付けモードになっているので、チャチャまで任せるのは忍びない。
チャチャの頭を一撫でして立ち上がり、その手を取る。
「レンくーん、いっちゃだめー。」
「ちゃんと戻って来ますよ。」
しなだれかかってくるサオリさんの頭も一撫でして離し、手を繋いだままのチャチャと寝室の方へと向かう。
「あ、パパ、片付け終わったらアタシ達も着替えて寝る準備するッスから、アレ、置いていって貰えないッスか?」
アレというのは淫魔法【コスチューム・プレイ】を特性【ビジュアライズ】で、タブレット化した物のことだろう。
今回は奴隷解放のお祝いの席ということもあってサナの種族衣装を始め、わりとみんな真面目な格好をしているので、ミツキ的にはそろそろ窮屈になってきたのかもしれない。
「はい、どうぞ。それじゃ、ちょっといってくるよ。」
「ありがとッス。あ、パパまで寝ちゃったら起こしに行くっすよ?」
「はいはい、気をつけるよ。」
▽▽▽▽▽
布団を敷き、スリップとドロワーズだけの姿にしたチャチャを寝かせ、タオルケットを掛ける。
気温が下がりきってないので、まだ毛布まではいいだろう。
眠そうなチャチャの横に並び、ポンポンとチャチャの呼吸に合わせるようにしてお腹の辺りを叩いてやる。
「ずいぶん食べたね。」
「うにゃー、今日も美味しかったにゃー。」
手に当たるチャチャのお腹の感触は張り裂けそうなくらいパンパンだ。
ちょっと感触が楽しくて、くるりと一撫でするとくすぐったそうにチャチャが笑う。
「あ、ととさん、ポシェット取って欲しいにゃ。」
「ん?これかい?」
「ありがとにゃー。」
私の手からポシェットを受け取ると、その口を開け、ゴソゴソと何かを探している。
中からメモみたいな紙を何枚か出し、ソロソロと覗くように開けたていたかと思うと、そのうちの1枚を私に渡してきた。
「ととさん、あい。」
「ん?開けていいの?」
「あい。」
そういって頷くチャチャ。
紙を開いてみるとそこには拙いながらも
『ととさん いつも ありがとう』
の文字が書いてあった。
ミツキッス。
飲みすくて危ないッスねこのお酒。
パパもママさんもパカパカ飲むもんッスから、注ぎ過ぎたかもしれないッス。
特にパパはアタシとサナちーと二人がかりッスからねー、もう結構酔っ払ってるみたいッスよ?
次回、第四七五話 「三色の華」
さて、そろそろお片付けして準備するッスか。




