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第四七一話 「おみやげ」


 「にゃぁ~~~?!これベーコンさんにゃぁ?!」


 チャチャがハイテンションで抱え上げているのは、1頭の豚の約半身を使った巨大スモークベーコンだ。


 重さは5キロ前後だろうか?抱えているチャチャ自身の胴体ほどある大きさだ。

 本来業務用なので50人前くらいはあるらしい。


 これは公認奴隷商の支配人からの『サナの帰郷にあたっての支援物資』の一つだ。


 あれから支配人との交渉は思いの外スムーズにいった。

 と、いうのもサナを除いて全員スキル【交渉】持ちだったため、お互いの駆け引きが上手く噛み合ったのだ。


 支配人からすれば今回の対応は自分のところで取り扱ったサナ以外の奴隷に対しても要望があれば同じように応じざるを得ないので、あまり過度の対応をしてしまうと件数が多くなった場合、店が傾いてしまう。


 重ねて本件が『金剛鬼』サビラキ・サオトメの逆鱗に触れることだけは避けたい。


 この2点が支配人にとって譲れない部分だ。


 それに対してこちら側は、不法な奴隷落ちを水際で抑えられなかったという公認奴隷商の落ち度はあれど、サナやミツキの奴隷商の元での生活というか指導・研修期間は、ミツキの感覚では扱いは悪くなかったとの印象から、あまり過度な罰は求めていないし、今となっては金にも困ってはいない。


 ある程度、周りが、極端に言えばサナのお婆ちゃんが納得するような形で手打ちにできればそれでいいのだ。


 結局のところ、まずは被害者が奴隷商の元で過ごした期間の拘束代から生活費、指導費などを差っ引いた分という名目で、それぞれの奴隷の仕入れ値分を奴隷本人に返金することでまずは合意した。


 この金額分は、市当局、あるいは国からその分の補填もあてにしたもので、公認奴隷商で取り扱った全ての被害者が該当しうる。

 これは不当な奴隷落ちでは儲けていませんよ。というアピールでもある。


 今回はそれに加え、あくまで奴隷譲渡証明書を発行しない元被害者の所有者に対して、その被害者を帰郷される事に対しての支援として、そのパーティーへ旅費等に掛かる金額を応援するという追加合意を得た。


 これに該当するのはサナとミツキ、それからアリシアの所有者のみなので実際の公認奴隷商自体の負担は少ない。


 これに対し支援を受けた者は、その支援の代わりに被害者の保護者に対して公認奴隷商より帰郷にあたっての応援を得たという事を報告する義務がある。


 要は、公認奴隷商は事件発生の一要因ではあったが、アフターケアがばっちりだったと被害者の保護者にフォローしておいてくれ。といった内容だ。


 この2点で合意し、支配人からサナとミツキにその仕入れ値相当の10金貨、二人の元所有者である私とその二人を含むパーティーの旅費分として一人頭2金貨、つまり5人なので10金貨。


 そのほか、サナとサオリさんの連名で『金剛鬼』サビラキ・サオトメに対して、今回は公認奴隷商から誠意ある対応をいただいたという手紙を書くための手数料として、帰郷に対する食料等の物理的支援をして貰うことを更に追加して手打ちとした。


 サナが私を運搬者ポーターだと紹介したこともあって、この物理的支援も結構な量になっている。


 帰郷の旅に掛かる食料品等という名目にはなっているが、実質、サナ達の里への貢物という側面もあり、里から見ると比較的価値があり、保存が効くものを中心にサナが選んでいって、その一つが先程の1頭の豚の約半身を使った巨大スモークベーコンというわけだ。


 サナの里は肉といえば鶏肉が中心で、豚肉や牛肉は貴重まではいかないものの、わざわざ行商人から取り寄せないとならない程度には価値があるとのことだ。


 同じ理由で足の形が残る生ハムや、大きな塊の牛肉の胡椒干し(ブレザオラというらしい)、一抱えあるほどの袋に入った業務用ビーフジャーキーなども提供して貰う予定だ。


 あとは質の良い小麦粉や香辛料のたぐい、里の周辺では手に入りづらいお酒などなども選んでいたので、里へのおみやげには困らなさそうだ。


 最終的には結構な量と金額になりそうだが、孫と娘から金剛鬼に一筆書いてもらえるというのは魅力的だったらしく、支配人は喜んで了承してくれた。


 と、いうか、物が今日中には揃わなくて、明日以降に改めて残りを取りに行くことになるくらいの量を提供して貰うことになったくらいだ。


 「そういえば、二人とも隷属の首輪はもういらないんじゃないかしら?」


 口元に人差し指をあて、ちょっと首を傾げながらサオリさんがそう疑問を口にした途端、サナとミツキの顔が破顔する。


 「えへへー。」

 「これ、もう隷属の首輪じゃないんスよ。」

 「あら、よく見たら違うものなのね。」

 「ベーコンさん、いにゃ、ベーコン様にゃー。」


 サナとミツキがサオリさんを囲むようにして貰ったばかりのチョーカーを見せながら奴隷商の元であった事を話している。


 「あらいいわねぇ。」


 話しを聞いたサオリさんが、頬に手をあてながらそう呟く。

 タイミングとしては今かな?


 「実はサオリさんにもあるんですよ。手を出してください。」

 「えっ?わたしにも?」


 ベーコンさんにゃ!

 !?違うにゃ、チャチャにゃ!


 チャチャ、こんなおっきいベーコンさん初めて見たにゃー。

 美味しそうだにゃー。

 でも絶対食べきれないにゃー。


 次回、第四七二話 「お揃い再び」


 にゃ?ととさん、それなんにゃ?

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