第四十五話 「淫魔の契り」
恥ずかしがるサナをお姫様抱っこして風呂場に来ている。
なんか恥ずかしがる側が前と逆だな。
サナを風呂椅子に座らせ、全身にシャワーをしている間に湯船に温度を調整してお湯を入れ始める。
お湯が貯まるまでの間にサナの髪を洗い、トリートメントをし、身体を洗う。
跡が残るような強い刺激にはしなかったつもりだったが、サナの肌が白すぎるせいか身体のあちこちにちょこちょことキスマークが残っている。
「はい、おしまい。」
シャワーで全身の泡を流すと、まだ足腰立ってないサナをまたお姫様抱っこで湯船に運ぶ。
「ブクブクはこのボタン、アワアワはこっちの袋、香りがあるお湯にするのはこっちの袋ね。」
洗われて全てを諦めた猫みたいになっているサナを湯船につけると、そういってアメニティの袋を2つ渡す。
「うー、ありがとうございます。せ、背中は流しに行きます。」
そういってお湯に沈んでいくサナ。
軽くシャワーを浴びるだけで洗うつもりはなかったのだが、そういわれると洗わざるを得ない。
そういや昨日、どこかでお父さんと同じ匂いなのが何か嬉しいみたいな事をいってたっけな。
入浴剤の匂いの方だったかもしれんが。
そう思いながら頭を洗い、首から始め身体の前面と尻から足を洗う。
スポンジを洗い直しボディーソープを足した辺りで、ノロノロとサナが湯船から上がって来た。
「無理しなくても、ゆっくり入っていていいんだよ?」
「背中くらい流させてください。あたしお父さんに色々としてもらってばっかりなのに、これくらいしかしてあげられないから…。」
力なくスポンジを受け取るとそういってサナは私の背中を流す。
たしかに一方的に保護されて何かをされるだけの状態というのは落ち着かないものかもしれない。
「さっきだって、その、私だけ、あの、き、気持、いや、か、可愛がってばっかり貰ってて…。」
めちゃくちゃ照れてる顔が鏡越しに写っているのに気づかないサナ。
嗜虐心を刺激されてしまう。
「それじゃあさ、次の時は自分で動くのを覚えてみるかい?」
驚いたようにビクンっと跳ねるサナ。
「う、うん、頑張るから教えてください…。」
そこまで言って力尽きたのか後ろから首にスポンジごと手を回し抱きつくというか身体を預ける。
オーバーヒートしたらしい。
いじめすぎたかな?
シャワーでサナごと泡を流し、湯船のお湯も水を入れ、ぬる目にしたあとサナを抱きかかえるような格好で入る。
バスバブルを入れジャグジーを動かしてしばらくするとサナが復活した。
「むー、お父さん意地悪だ。あたしだって恥ずかしいんだからね。」
そういってピシピシと両手で私の両膝を叩く。
「サナが可愛いことばかりいうのが悪い。」
ピシピシしている両手を掴み腰を抱えるように抱っこしなおす。
「亜人の発情期の感覚は人族の私にはよくわからないけど、発情自体は自然の摂理なんだろ?
それだって元々赤ちゃんをつくるための大事なことなんだし、恥ずかしいのはしかたがないけど、これからは無理に我慢しなくてもいいよ。
身体と心は車輪の両輪みたいなもので、どちらかが無理したり我慢したりして歪んでしまうと人は真っ直ぐ走ることはできなんだから。」
そういってまたサナの桜色の小さな角にキスをする。
身長差的というか座高差的にしやすいのだ。
「お父さん…」
サナが振り返りこちらを見つめると、照れたような顔をしながらも頬にキスをしてくれた。
「そういえばサナ、指輪には気づいてる?」
「さっきお父さんの背中流している時に気づきました。かわいいデザインですけど、どうしたんですかこれ?」
サナの左手の小指についているのは種族特性【眷属化】による『淫魔の契り』の指輪だ。
色はシルバー、小さなオープンハートが繋がっているようなデザインで中央に小さいアメジストのような紫の石がはまっている。
「お父さんの勇者としての能力の一つでね。サナ、私の口を手で塞いでみて。」
「こうですか?」
サナは振り返ってこちらを見ると、両方の手のひらをクロスするような形で私の口を塞ぐ。
『まず、こうやって、話ができない状態でも念話でサナと会話ができる。』
「なんか、直接頭の中にお父さんの声が来ました!」
目をパチクリさせているサナ。
「その指輪を通じでサナと繋がっているんだ。サナもやってごらん。」
「えーと…」
サナは左手の小指ごと指輪を右手で握りながら、んーんーと唸ってる。」
感覚的なものだからなぁ。こういうの。
『どうですお父さん。聞こえます?』
『大丈夫、聞こえてるよ。』
『なにか変な感じですすね。』
『これがまず一つ目の能力』
いや、わざわざ念話で話さなくてもいいな。
今日は17時にもう一度更新します。