第四十四話 「夢中」
>童貞卒業により種族特性【淫魔法】が開放されました
というシステムメッセージも出ていた。
やっぱりこの世界に来た時か何かの時に作り変えられているんだなこの身体。
これによりプレイエリア外でも制限はあるものの男の身体のままで淫魔法が使うことができるようになったのは大きい。
使用コストも淫魔の身体の時に比べ2倍から1.5倍まで少なくなった。
絶対的な魔力量と回復量が違うので淫魔の身体の時のように乱用は出来なさそうだ。
とはいえどういう加減なのかは良くわからないので、そのうち使いながら覚えよう。
寝ているサナの横に仰向けに寝転びながらそんなふうに新しい特性等をチェックしていると、ふと王子(の死体)が持っていたマジックアイテムの腕輪の事も思い出したのでメニューのアイテム欄から出してみる。
腕輪というより薄く細いリストバンドというかウエアラブルデバイスみたいな雰囲気のものだった。
見た目はシルバーっぽいが柔らかい素材で出来ており、手に吸い付くように巻き付けることができる。
淫スキル【淫具鑑定】で鑑定してみると、『変成の腕輪』というアイテムらしい。
その効果は、この腕輪を使用した後に使うスキルや魔法の効果や射程、範囲、属性を調整できるというもの。
使用には大量の魔力が必要で、次に使うスキルや魔法のどれかの出力を下げ、その代わりにどれかの出力を上げてバランス調整するのが本来の使い方だが、更に魔力を多く払って単純に威力を拡大することも可能らしい
この場合、腕輪に払う魔力もその後に使う能力のコストも両方上がる。
冷静に考えるとかなりのブッ壊れ性能のアイテムだと思う。
なぜかというと、たとえば自分でいえば対象に触れずにドレインを指定範囲内の全員から一気に吸えることが理論的に可能だからだ。
実際には単純に射程を伸ばすだけならともかく、射程:接触を射程:○○mとか使用方法が変わるような調整は膨大な追加魔法や精力を使うので現実的ではないのだが、魔法使い系が使うと威力や射程の拡大というのは相当の切り札になるだろう。
流石に強すぎると思い装備した上で更に淫スキル【淫具鑑定】で鑑定しなおすと『勇者装備』という特別なアイテムらしい。
『「勇者」と呼ばれる召喚された人族はこの世界の人族より強い力を持っていたり、特殊で強力なスキルを持っていたり、特別なアイテムを持っていたりするそうです。』
前にサナに教えて貰った事を思い出す。
勇者が召喚時に持つ特別なアイテムというやつがこれか?
なんで王子様が勇者装備を…元の世界に戻る時に記念に?いや無いだろう。
これだけ強力なアイテムを仲間ならともかく王子へ譲るのはちょっと考えづらい。
譲り受けてないとしたら?
アイテム持ちの勇者を召喚し、弱いうちにそれを倒して奪っているとしたら?
怖い考えになってしまった。
「ん…、んー」
サナが目を覚ましそうなので、とりあえず変成の腕輪をメニューのアイテム欄に戻す。
マッパに腕輪の男ってなんか嫌だからだ。
布団の中に添い寝をするような形で戻り、うつ伏せで枕に突っ伏しているサナの頭を撫でる。
「ん、あ、お父さん…」
「おはよう、サナ。」
目が合った瞬間、首からてっぺんまで真っ赤になり、顔を隠すように布団に潜ってしまうサナ。
色々思い出してしまったらしい。
淫スキル【性病検査】で状況をチェックすると発情期は継続中だが、発情自体は今は収まっているようだ。
「あ、あの、あたし、その、み、乱れちゃって、そのごめんなさい…。」
「発情期なんだからしょうがないよ。私こそついつい夢中になってごめんね。」
布団に潜っているサナをその上からポンポンと叩く。
「む、夢中に?」
布団から目元まで覗かせて上目遣いでこちらを伺うサナ。
なにこの可愛い生き物。
「ああ、あれだけ求められると嬉しくてつい…。」
「恥ずかしい…」
また布団の中に沈んでいくサナ。
「………」
何言ってるんだか聞こえないので自分も布団に潜る。
「あ、あの、お、お父さんも、その、き、気持ちよくなってくれましたか?」
破壊力あるなあ。
サナをそのまま抱き寄せ、その可愛いらしい角に口づけをする。
角に触れるのは鬼族の中では愛情表現らしい。
「ああ、ちょっとやりすぎるくらいに夢中になった。」
「……嬉しい…。」




