第四三五話 「性教育」
「ほ、本当にかけても大丈夫ですにゃ?」
「はい、この温度なら大丈夫よ。」
サナとミツキが私の足先まで洗い終わるのに合わせるようにシャワーの温度を調整していたサオリさんがそういってチャチャにシャワーヘッドを渡している。
チャチャは不安そうな声ではあるが、目はわりと興味津々というか、新しい事へのワクワク感の方が強そうな光で満ちている。
私にお湯をかけるのに先駆けて、泡だらけになっているサナやミツキが実験台に手をあげ、今はキャーキャーいいながら楽しそうにその泡をシャワーで落としている。
サオリさんも私から離れている状態なので、今はクールダウンの時間だ。
何がとはいわないが。
若い身体なので反応も速いのだが、中身はおっさんなので、今のサナ達のような微笑ましい行動を見ると、エロい感情より親目線というか、愛おしい感情の方が優先してしまい、落ち着くのも速いのだ。
とはいえ、ちらちら視界に入るサオリさんの裸体が気にならないかといえば嘘になるのだが。
そんな事を考えながらサオリさんの方に目線を送ろうとした瞬間、頭からシャワーのお湯をかけられた。
そしてそれを追いかけるようにして、たぶんサナとミツキの手が頭から始まって体まで、もみくちゃにするように泡を落としはじめる。
おそらくチャチャはそのままシャワーヘッド係なのだろう。
泡とともに煩悩というかそういう感じのものを流しつつ、お父さん洗いはこうして終了した。
▽▽▽▽▽
「ちーちゃんは、手が小さいから両手で持った方が安全かも?」
「ホントは片手は腰に置くッスよ?」
自分の手の小ささを棚に上げてサナがそうお姉さんぶりながらチャチャにコップを手渡している。
ミツキにいたっては既に飲む干す準備万端なので、ついでに私も横に並んで付き合っている。
サオリさんはサナと一緒に両手スタイル組に入るらしい。
今はみんな浴衣姿で風呂上がりの一杯に洒落込もうとしているところだ。
浴衣は部屋に備え付きのものだとチャチャには大きいので、その分は淫魔法【コスチュームプレイ】で出そうと思っていたが、サオリさんが紐一本でチャチャの分の浴衣をジャストサイズにしてしまった。
おはしょりだっけな?
さすがに袖は長いのだが、丈はぴったりだ。
サナの用意したコップには既に淫魔法【ウエット&メッシー】で冷えた牛乳を注いである。
ちなみにこの魔法、出す液体等の温度も調整出来るので便利だ。
とはいえ、一応上限と下限があり、上限は体温程度、下限は液体状態を保てる程度までなので、ホットミルクは無理だし、牛乳のシャーベットも無理なのだが、風呂上りにキンキンに冷えた牛乳くらいなら十分用意できる。
「それじゃ「「「「いただきます」」」」」
掛け声とともに全員でコップに入った牛乳の一気飲みをする。
火照った身体にはビールといきたいところだが、牛乳も悪くない。
口々に、んー、とか、あー、とか、にゃー、とか、ふぅ、とか声が上がる。
「チャチャ美味しかったかい?」
「はいにゃ!こんなに美味しい牛乳飲んだの初めてにゃ!」
そういいながら大きな身振りで感動を伝えようとしているチャチャが微笑ましい。
▽▽▽▽▽
「それじゃ、お休みなさい。」
「にゃさい。」
サオリさんとチャチャに寝室を譲り、サナとミツキを連れて淫魔法【ラブホテル】で作った別室へと移動する。
移動する寸前に、チャチャの「こんな大きなベッドに、チャチャ一人で寝ていいのにゃ?!」という驚きの声が聞こえて、ちょっと笑ってしまう。
この特別室にある二つのローベッドは両方ともダブルサイズだからなぁ。
特別室からの扉を閉め、先に新しい部屋に入ったサナとミツキを追いかけるように続く。
「パパ、着替え選んでもいいッスか?」
先にベッドにダイブしているミツキからそんな声がかかる。
鬼族組と違って慣れていないのか浴衣は動きづらいのだろう。
「いいよ。はい。」
そう言いながら特性【ビジュアライズ】でA4サイズくらいのタブレット状にした淫魔法【コスチュームプレイ】の選択画面を突っ伏しているミツキの代わりにベッドに腰かけているサナに渡す。
「で、お風呂の話の続きだけど。」
「お風呂の話?」
サナがキョトンとした顔でこちらを見ている。
そういやミツキとは念話での会話だったな。
「チャチャの性教育の話だよ。」
チャチャですにゃ。
夏なのに冷たいもの飲めるなんて凄いにゃ!
それにこんな大きくてフカフカのベッドまで…。
これはチャチャ、明日お仕事頑張らないと駄目にゃね?
次回、第四三六話 「発情」
こんなにお仕事楽しいのは生まれてはじめてにゃー。




