第四二六話 「チャチャの価値」
レベル40以上、つまりランク4って一万人に一人とかいうレベルじゃなかったっけ?
こんなにゴロゴロいていいものなの?
いや、それはともかく今のマミ先生の口ぶりからいうと、ロマ達はもっとレベル高いのか。
マミ先生達はフレンドリーに接してくれてはいるが、社の主だから、相当高レベルだとは覚悟していたが、失礼な言い方かもしれないが、ギルドマスターにいいように使われているゴールドの探索者というイメージが強いロマまでそこまで強いとは思わなかった。
まぁ、ネローネ帝国騎士団の小隊長がレベル41くらいだったから、職業として戦う人としてはそんなもんなのかもしれんが。
「そりゃ軍人なら大隊長クラスのレベルだ。凄かろうよ。」
「あら、自慢かしらぁ?」
「混ぜっ返すな。」
またロマとカレルラがじゃれ合っている。
あれ?あの小隊長、実は小隊長じゃないの?
もしかして特務大隊長だったりする?
「ロマは探索者として現役の分、うちらの中では一番レベル高いしな。」
そんな事を考えていると、ロマとカレルラを眺めていたヤコさんがそう呟く。
「ロマさんってレベルいくつなんですか?」
サナが素直に疑問に思ったことを口に出してきた。
うん、確かに気になる。
「内緒ですよー。地位やレベルが高くなるとー敵も多くなりますからねー、切り札はもちろんー隠せるものは隠しておくのがー、常道ですー。」
マミ先生が言葉は柔らかいが教えない、聞くな。ときっぱり釘を刺した。
「ま、そういう事だ。だから俺もこれ以上はお前にも何も聞かない。
それでなくても探索者なんてやっている奴なんぞ脛に傷を持っていて当然だ。話したくないことも話せないこともあるだろうよ。」
話したいのなら別だがな。と、付け加え、ロマは改めてチャチャの顔を覗き込みに移動してきた。
この世界に来てからというもの、ロマの倫理観に助けられているというか救われている感があるな。
「誘拐団が買った白猫族の娘だというなら、たしか歳は12だったはず。
それなら普通、レベルは6前後のはずだ。
それが一気に40レベル近く跳ね上がったということか?」
もう既に誘拐団への尋問は始まっているのか、どうやらロマのところへはそんな情報も入っているようだ。
「もっと低いレベルが10倍になったとー、考えるよりー、そっちのほうがー、まだ、ましですねー。」
「全然マシじゃないべ。軍事、いやテロ用に使われたら大騒ぎだべよ。」
「ふぅん。」
マミ先生、ヤコさん、カレルラがそれぞれ感想を漏らす。
なにげに一言だけの感想が怖いんですけど。
「センセがその娘を密かに隠した理由がわかったわぁ。
それは確かに危険ですものねぇ。」
そういってカレルラが紫煙を吐く。
ほらやっぱりまた見破られた。
「どういう事だ?」
「ヤコのいうとおりよぉ。化け物化するだけならテロくらいにしか使えないけどぉ、それを上がったレベルそのままに治せるなら、何処の国だって欲しがるわぁ。
だってレベルが大隊長クラスの奴隷を量産出来るのだからぁ。」
カレルラが吐いた紫煙をキセルでたゆたわせている。
「それだとこの娘は、それが可能であるというサンプルになってしまうべ。」
「はい、そうなるとチャチャ、この娘はもう故郷に帰ることが出来ません。」
ここまで来たら説明して力になって貰った方が良さそうだ。
「存在がバレればー、一生実験台でしょうねー。」
「それはレンも同じことだな。治った者と治した者。
カレルラの話を実現させるために是が非でも奴隷化させて言うことを聞かせたい奴、いや国だって出るだろう。
うむ、それは隠して当たり前だし正解だ。」
ロマがそういって顎髭を撫でる。
「この娘の故郷はトラージの街だったか。」
「そうッス。両親は漁港関係の仕事をしていたけど裕福な家じゃなかった様子ッスよ。」
直接本人から話を聞いたミツキがロマ達にチャチャの故郷での話を説明しはじめた。
「これはー…」
「そうだべ、さっきロマもいってたべや。」
眉を潜めるマミ先生にそう声をかけるヤコさん。
そう、確かにロマは『誘拐団が買った白猫族の娘といった。
察してはいたものの、やっぱりチャチャは誘拐団に攫われたのでは無く、親から誘拐団に売られたのだ。
「それじゃぁ、その娘の分は奴等の罪にならないわねぇ。」
感情の無い、そんなカレルラの言葉が部屋に響く。
そんなことはよくあることだ。といわんばかりの地獄の番人の言葉が。
サナです。
ロマさんって、やっぱり強いんですね。
レベル50近くあるのかな?
お婆ちゃんが前にレベル50もあれば勇者にだって勝てるっていってたから、そこまではないのかな?
次回、第四二七話 「偽装」
あ、さっきのカレルラさんのお話、勇者召喚となんとなく似ているような…。
うまく説明できないけど、いきなり強い人を用意出来るみたいなところが…。




