第四二五話 「化け猫化」
「茶兎族のアタシが目立つというより、【鬼族語】を話す兎人族を連れた黄人族のパパが目立つって感じッスね。
【共通大陸語】を話す兎人族を連れた白人族なら、それなりに見かけるッスから。」
そういいながらミツキがロマの隣に座った。
「そうだ。鬼人族は別の亜人族と話すときは、ほぼ【共通大陸語】使うからな、お前らのメンツなら、普通【共通大陸語】で会話するはずが、【鬼族語】で会話しているのを見ると、周りは何だ?となるんだよ。」
いや、気をつけよう。
本当に気をつけよう。
「ともあれ、レンがこの街に戻ってこれる手があるというのであれば、カレルラとの契約もそう悪い話じゃぁない。
てっきりまたこいつに騙されているのかと思って心配したぞ。」
そういって笑顔で自分の顎髭を撫でるロマ。
え?今回集まったのはそういう理由なの?
お前裏で何やってるか全部吐け的な集まりじゃなくて?
「人聞きが悪いわねぇ。騙したりなんかしてないわぁ。」
「お前、ミツキの前でよく言えるな。身請けの時だって騙したようなもんだろうが。」
「あれはビジネスと渡世の義理の問題よぉ。納得して貰った上だから騙したうちに入らないわぁ。」
いや、それはどうだろう?
確かに騙されたという意識はないが、確実に足元は見られていたような気がする。
それにしても、淫魔の身体の私、つまりレインの事は中々聞いてこないな。
諸々説明できないことが多いことも含めて私にとって一番の秘密だが、ロマにとっては気になる人物のはずだ。
「よし、俺がレンの事で聞きたいことは大体分かった。マミやヤコは何かあるか?」
そういって話をふるロマ。
え?ホントに聞いてこないの?
「うちらは絶対話を聞かないと納得しない。ってほど付き合いが長くないべ?気にしなくてもいいべよ。」
「はーいー、治癒魔法についてはー、気になることはありますがー、それはもっと仲が良くなってからでもーいいかとー。」
宗教関係者二人の距離感は上手いな。
とはいえカレルラとは別のベクトルで丸め込まれそうな気がするので、一応気をつけておこう。
「そうか。レンはこんな感じで常識知らずのちぐはぐな男だし、サオリやサナは田舎育ちで街の生活には慣れていない。
ミツキだけじゃ支えきれないこともあるだろうから、何かあったら面倒みてやってくれ。」
「いいべよー。」
「はーいー、何かあったら気軽に社を訪ねてきてくださいねー。」
そういってヤコさんとマミ先生が笑う。
二人もそうだが、ホントにロマ、面倒見がいい人だな。
▽▽▽▽▽
「そういや、結局その猫の子は何だったんだ?」
あら、やっぱりそこに話は戻るか。
「実はですね…」
高等な治癒魔法が使えることを隠していたので伝えなかったのですが、と前置きをした上で、地下室でのチャチャの話をする。
流石に頭蓋骨から全身を再生しました。とまでは言えないので、化け猫のコアみたいになっていたのを引き抜いて欠損した部分を癒やしましたと説明したが、それでもマミ先生の目が怖かった。
『階位の奇跡』だったか?ランクアップ相当の治癒力はこの世界では相当のものらしい。
その力があれば治療師として食べていけるどころか、国のお抱えにもなれますよ。とはそのマミ先生の談だ。
食いっぱぐれのない夢のある話だが、人族の国相手だと勇者関係のあれこれがバレそうなので遠慮したい。
というか、そこまでの治癒力があると世間にバレると国から声がかかるという話でもあるので、カレルラのところでは凄腕の泌尿器科医、いや、聞こえが微妙に悪いな。凄腕の産婦人科医くらいので立場と能力で留めておいた方が良さそうだ。
「ちょっと、診てみてもー?」
そういって先程もサオリさんにかけた診察魔法っぽい魔法を眠っているチャチャにかけるマミ先生。
「え?なにこのレベル…」
「化け物化したとは聞いていたが、それに合わせてレベルも上がったりしているのか?」
ロマは察しがいいな。と一瞬思ったが、そういや化け猫化した猫人族の娘は相当強かったとは伝えてあったな。
「上がったなんてもんじゃないです。44ですよ?あたし達までいかないまでも、ルー並です?」
「あら、凄いわねぇ。」
ルーって誰だ?……って今の感じだとカレルラの事なの?
っていうか、貴女そんなにレベル高いの?
サオリです。
そうですよね?普通、レベル44なんて聞かせれたら動揺しますよね?
地下室でレン君から「いつもよりちょっと強いから」みたいにいわれましたけど、ランク3に比べてランク4は、文字通り別格の強さなんですよ?
次回、第四二六話 「チャチャの価値」
レベル39から40に上がった時は、1レベルじゃなくて10レベル上がったくらい強くなる。っていう人もいるくらいです。




