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第四○七話 「野良猫」


 「ミツキー、ちょっとこっち来てー。」

 「なんスか?」


 衛兵と一緒に誘拐団の方にいたミツキを呼び寄せる。


 「ロマさんが頼みたいことあるんだそうな。」



▽▽▽▽▽



 「つまり被害者の1人として証言すればいいんスね。」


 ミツキは話の飲み込みが速くて助かる。


 ロマの頼みというのは、誘拐団の取り調べにあたり、被害者側からの視点で事実確認をして欲しいという内容だった。


 なので当然サナも呼びたいし、サナの誘拐時の当事者としてサオリさんも呼びたいとのことだった。


 ちなみに私自体はサナやミツキ達が誘拐された時点では、まだ二人の保護者じゃなかったので部外者扱いで取り調べに同行するのは駄目らしい。


 と、いうのも、今回の取り調べは、かなり制度的にも政治的にも宗教的にも難しい位置づけになるらしいのだ。


 取り調べの後、最終的には公聴会としてこの街の各分野からトップクラスが集められるとロマは予想しているらしく、おそらく私もそうなると思う。


 宗教的というのが何を指すのかはわからないが、奴隷制度への影響や、各国を跨いでの誘拐と奴隷販売、チャチャを暴走させた謎の薬、それに対するギルドの対応、公社の対応、国の対応と問題は山盛りだ。


 私は呼び出されないのはチャチャの世話をする人の確保という面で逆にラッキーなので、快くうちのメンバーの参加を引き受けた。


 なんでも本来は容疑者として逮捕しても容疑の否認などなど本格的な取り調べへのハードルはそれなりにあるのだが、その辺りは誘拐団のリーダーであるカルツが結構カレルラの前で失言を重ねたらしく、その内容だけで容疑者ではなく犯人として逮捕でき、即【隷属魔法】で虚偽の回答を封じた上での取り調べになるらしい。


 現行犯でもないのに容疑者通り越してもう犯人って、どんだけヤバいことを漏らしたんだ?

 と、いうかカレルラさんが言葉巧みに言質を取ったんだろうな。

 怖い怖い。


 ともあれ、ギルド内部での作戦会議や、今後お偉いさんを集める関係で、呼び出されるのは、いくら早くても明日の午後以降になるとのことだ。


 場合によっては取り調べと公聴会と両方呼ばれるらしいが、どちらも協力を約束した。


▽▽▽▽▽



 「ただいまッスー、子猫ちゃんの様子はどうッスか?」

 「あ、ミツキちゃん、お父さん、おかえりなさい。」

 「はい、ただいま。」


 なぜかニャッフーと謎の掛け声とともに抱き合っているミツキとサナ。

 サオリさんはどこに?とラブホテルの部屋を見渡すとベッドの上に座り、膝枕でチャチャを寝かしつけている。


 こちらに気づき、チャチャを起こさないようにか声は出さず口の動きだけで「おかえりなさい」というサオリさん。


 チャチャ自体は最初に着せた服ではなく、バスローブ姿で頭をサオリさんの膝というか太ももに乗せ、丸くなるようにして寝ている。


 野良猫のように警戒したり暴れたりしてるかと思ったが意外と大人しいな。


 「最初、目を覚ました時、大変だったんですよ?」


 もうすっかり慣れた様子で備え付けの電気ポットとティーセットでお茶を出してくれるサナ。


 チャチャも最初は警戒したり、部屋の様子に驚いたり、風呂を嫌がったりとバタバタだったらしいが、サナの実経験とサオリさんの母性で乗り越えたようだ。


 「記憶の話はしたのかい?」

 「特に直接詳しくは聞いていませんけど、あたしやお母さんを見ても初対面の人みたいな反応でしたよ?」


 「ってことは、でっかい化け猫みたいになっていた時の記憶は無いんスね。」


 ミツキもそういいながら両手でカップを持ってお茶を飲んでいる。


 「覚えていたら怖がられたり警戒されたりするだろうからなぁ。

 それがなかったのは朗報だ。」


 「落ち着いたら故郷に送ってあげる。って話したら安心したみたいです。」


 そういいながら身体を寄せてくるサナ。

 そして


 「勝手に約束しちゃってごめんなさい。」


 そういってペコリと頭を下げる。


 「いやー、謝らなくてもいいと思うッスよ?どうせパパだって同じこと考えてたッスよね?」


 ミツキがカップをテーブルに置き、サナとは反対側に座り身を寄せてくる。


 「なんか頭の中を読まれてるみたいで居心地悪いな。」

 「絶対そうしてくれるって信用してるんスよ。アタシもサナちーも。」

 「もちろん頼りにもしてます。」


 キラキラとした目でそういわれると断れないし、もとから断るつもりも無い。

 そもそも最初からその予定だったし。


 「サナの故郷へ行くのに西回りで行くか東回りで行くかはチャチャの故郷の場所で決めないとな。」


 「はい。」

 「そうッスね。」


 左右から抱き着いて来るサナとミツキ。

 サオリさんがクスクスと笑っているような仕草も視界の端に写った。



 ミツキッスー。

 パパから聞いた話が本当なら教会も出てくるッスねこれ。


 【隷属魔法】は元々、天父神様の御創りになった契約の魔法ッス。


 なので、この内容を誤魔化すということは、神様に嘘をつくのと同じ事なので、重大なタブーなんスよ。


 次回、第四○八話 「初めての晩御飯」


 天父神様だけではなく姉神である地母神様とも海母神様とも共通する契約魔法なので、三柱の神様全員に嘘をついた形にもなるッスね。

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