第四○六話 「ランクアップ」
何故かというと、いざという時の保険としてランクアップに伴う肉体の再構築効果を残しておきたかったのだ。
サンダーボルト・ハーピーと戦った時のように、片手を炭化させても再生出来るという回復力は魅力的で、今回を逃すと次のランクアップはレベル50までお預けにもなってしまう。
…いや、待てよ?
今回のチャチャや前のサオリさんみたいに淫魔法【おっぱいの神様】で自分自身を再構成することは出来ないのか?
▽▽▽▽▽
試しに手足の爪やらを切ってみて実験してみたところ、問題なく自分自身も再構成することが出来た。
ただし片手で再構成しようとすると魔力が倍かかってしまうが、逆にいうと両手を一気に失わない限り【おっぱいの神様】で自分自身を再生させることが可能だということだ。
あと思いつきでやってみたのだが、舌でも【おっぱいの神様】を使うことが可能だった。
ただし術の開始地点が胸からなので、ちょっと不格好になってしまうのが難点だ。
胸を寄せて上げて舌で…となると、ちょっとしたエログラビアみたいだ。
いや、ちょっとじゃないな。
普通にエロ仕草だ。
ともあれ、この淫魔の身体がその方法で舌が届くサイズの胸だったのはラッキーだったともいえる。
重かったり、腕を動かしづらかったり、下方向の視界が悪かったりと、最初は贅沢な悩みばかりだったものの、小隊長戦の時の白刃取りや、この【おっぱいの神様】を考えると命を守るため大事だな、このおっぱい。
これからも大事にしよう。
そんなことを考えながら、自分の胸をポヨポヨさせているうちにミツキが同じマップに入ってきた。
たぶんロマや衛兵とかが一緒だろうから、元の姿に戻っておかねば。
▽▽▽▽▽
「これは?」
「サナが腐らないように凍らせてくれたんですよ。」
「氷魔法でか?器用なものだ。」
ロマは興味深そうに凍った化け猫の死体をつついている。
初夏の、もちろん冷房もなにもない地下室では死体の腐敗が速いだろうということでサナにやってもらったのだが、前に河原で教えて貰ったとおり、こういう魔法の応用は本当に珍しいらしい。
凍らせたお陰で匂いも押さえられているのでスキル【魔力操作】様様だ。
そういや、このスキルを持っていたということは【魔術学士】の兄ちゃんは結構な腕だったんだな。
とりあえずロマにはスキルや魔法を使わなくても知り得た情報は全て伝えておく。
具体的にいうと
・この地下室はおそらく街の外に繋がっているであろうこと
・この地下室へは猫人族の少女も一緒だったこと
・その少女の「年齢を合わせる」といって3人でなにか魔法を唱えていたこと
・逃げ切れないと思ったのか、少女に「何か」を無理やり食べさせ化け物化させたこと
・その化け猫となった少女は相当強かったが、なんとか倒したこと
と、いったところだ。
それらを話すとロマは
「そうか。」
と、一言いってうなずき、私の肩に手を置いて
「子持ちには辛いことをさせてしまったな。スマン。」
そういって頭を下げた。
猫人族の少女を殺させてしまったことを謝っているのだろう。
いや、この時点でそう誤解してくれるなら、チャチャの事を改めて誤魔化さなくて済むのでありがたい。
「いえ、大丈夫です。カレルラさんの方は、これからですか?」
「いや、あっちはもう終わった。奴にとっちゃ鼻の下伸ばした男をどうにかするなんて朝飯どころか欠伸前だったろう。」
どうやらあの後、誘拐団のリーダーはカレルラの所にまっしぐらで、そのまま赤子の手をひねるように捕まったっぽい。
あの人、戦力とか別の次元で怖いからなぁ。
「それにしても、思った以上にマズイ事だらけだ。」
そういいながらロマが顔を手で拭うようにして自分の顎髭を撫でる。
「そうなんですか?」
「いや、詳しい事は改めて話すとして、この後サナ達に追加でちょっと協力して貰いたい事があるのだが、繋いで貰えるか?」
と、いうことは、この後尋問になるか拷問になるかは別として誘拐団の取り調べに入るんだな。
サオリです。
移動途中、何度か男の人に声をかけられましたが、ミツキちゃんが追い払ってくれました。
レン君が一緒じゃないと、まだ男の人は怖いです。
次回、第四○七話 「野良猫」
え?「いざとなったら切ってもいいと思うと楽ッスよ?」ですって?
それはどうかと思うのですけど……いえ、そうね。あの時とは違うのですものね…。




