第三九八話 「地下室」
集まってきている噴水公園の野次馬をかき分け、淫魔法【ラブホテル】のショートカットを使って歓楽街へ移動、そこからそのままメニューのマップと淫魔法【夜遊び情報誌】を頼りにダルラ達のいる場所へ向かう。
別の奴隷商の所に向かっていると思っていたが、今いる場所は歓楽街の果てというか抜けたところというか、個人的な感覚でいうともうスラム街だ。
まだ日が落ちていない時間だというのに、酔いつぶれたような人が男女問わず建物の前や地べたに座り込み、あるいは横たわっている。
いや、ちゃんと生きているよね?これ。
遠くからは男の怒鳴り声や女性の悲鳴や金切り声が上がり、建物の古さや道の狭さなどなどからも陰鬱な雰囲気が漂っている。
レベルが高くても危機感を感じる場所なので、サナやサオリさんは淫魔法【コスチュームプレイ】で完全装備をさせて、その上に一枚暗めの色のローブを着せている。
私自体も歓楽街自体が『プレイゾーン』なことを良いことに、淫魔化した上で同様に完全装備だ。
曲がりくねった路地を進んだ先にたどり着いた2つのレンガ造りの建物の陰に1m四方くらいの鉄板が引いてある。
錆で分かりづらいが引手もついており、板のずれ方からみるについさっき出入りした様子。
位置的にはダルラ達はこの先にいるはずだ。
なるべく音を立てないようにその鉄板をめくる。
「地下への階段…ですね。」
後ろからそう言ってサナが覗き込んでいる。
別階層扱いなのか、地下のマップは表示されない。
勇者装備の「変成の腕輪」で効果を拡大して、【夜遊び情報誌】でマップを取得するという手段が無いわけでは無いが、迷宮ほど広いということは無いだろうし、いざというときのために魔力も温存しておきたいのでやめておこう。
「ちょっと偵察してくるから、2人はここで待っていてね。」
「大丈夫ですか?レン君。」
サオリさんがちょっと心配そうだ。
「大丈夫、なにかあったり、安全そうなら念話で伝えるから、その時はすぐ来てくれると助かるわ。」
「わかりました。」
力強く頷くサナを頼もしく感じながらも隠形スキルでもある淫スキル【夜這い】ほかを使いながら、慎重に地下に降りていった。
▽▽▽▽▽
「猫人は売らなかったのか。」
「これは保険だ。最悪、こいつを使えば何とかなるし、学士の兄ちゃんさえいえば、やり直しはどうとでもなる。」
「そんな、今回が最後だって言ってたじゃないですか!」
「しかたねーよ。最後まで捌くことが出来なさそうだしな。
ってことは、これが最後じゃないってことだ。
兄ちゃんには、まだまだ稼がせてもらうぜ?」
「念の為、猫人の年齢を合わせておいた方がいいな。」
「おう、そうだな、おい、兄ちゃんやるぞ。」
「嫌です!僕はもう…」
「何を被害者ヅラしてやがる、お前だってなんだかんだで楽しんでいたじゃねーか。」
「そ、それは、貴方達が無理やり…」
「無理やりねぇ?ま、そういう事にしておいてやる。が、勘違いするなよ?今となってはお前も一蓮托生だ。捕まりたくなければ俺の言う通りにしろ。」
白猫族の娘を中央に、ダルラと学士の兄ちゃんと呼ばれた【魔術学士】という職業の男、そしてダルラと同じく【隷属魔術師】であるアルダが魔法を唱え始めた。
そうか、同期魔法と同調魔法の複合術式。
これで本来、儀式魔法にも類する大量の魔力を使う隷属の魔法を誘拐先で使い得たのか。
と、いう事は、おそらく残りの誘拐団の中にもう一人【隷属魔術師】がいるな。
地下室に降り、物陰からアルダの顔を見かけてすぐ、ミツキの状態を確認してあるが、眠っているものの命に別状はないようだ。
ステータスを見る限り薬か何かで眠らされたらしい。
ミツキとの会話から察するに犯人はアルダだろう。
偶然かどうかはわからないが、今は初めてミツキと会った部屋に寝かされているらしい。
おそらくアルダも誘拐団の一味、もしくは協力者なのだろう。
ロマの現在地から考えると、ロマやカレルラに伝令も伝わっていない様子だ。
外の2人をミツキの元へ向かわせるか?
いや、【夜遊び情報誌】で取得したマップからだと、この地下室、街の外と迷宮の両方に繋がっている。
逃げ切らせるつもりはないが、そっちに逃げられると厄介だ。
サオリです。
こんな治安の悪そうな場所は初めて見ました。
サナにも見せたくはないのですが、本人はあまり気にしていないみたいです。
次回、第三九九話 「スチール」
不安も無いようですので、これもレン君への信頼がなせる技なのでしょうか?




