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第三八三話 「水着」


 誘拐団は各街に着いた後、ツーマンセルで分散するのが習慣づいているせいか、意外と馬車の中でのミーティングが細かく、キャンプ場をはじめ、各人の泊まる場所なども、大まかに分かってしまった。


 他人事ながら、淫魔法【盗撮】や【盗聴】おっかねぇ。

 私怨を晴らすだけなら、サルトの町で各個撃破できるレベルだ。


 逆にいうと問題はその私怨の部分。

 つまり、誘拐をした、またはそれを繰り返しているということに怒りを、誘拐をされたということに恨みを持っているかという部分だ。


 その事について、サオリさんは確かに怒りを持っている。

 白鬼族の元族長という立場以上に母親として許さない。


 もちろんその気持ちに嘘はないが、今までの経緯を考えると地の果てまで追いかけて止めを刺す。という感じではない。


 あくまでもサナを取り返すという事が目的であり、サナを誘拐した者がひどい目にあうのはその結果に起こりうる。というだけだ。


 母親に啖呵を切って里を出てきた手前というのはあるだろうが、それだって帰りづらいだけの話で帰れないわけではない。


 里にサナを助けたという手紙を送っている以上、サナのお婆ちゃんだって、早く連れて帰って来い。という気持ちの方が大きいだろう。


 一方、そのサナといえば、実際のところ、もう誘拐団を恨んではいない。


 攫われたことを許しているわけではないが、結果的に私と出会えたので帳消し、いや少しだけ感謝もしていると言っていた。


 まだサナと二人きりのパーティーの時は「複雑な気持ち」という段階だったが、今となっては明確にそう思っているらしい。


 そしてそれはミツキも同じだそうな。


 感謝する筋合いではないが、おかげで幸せな毎日を送っている。というのがミツキの立ち位置なので、二人の事を考えれば、嫌な事を思い出さないためにも会わない方が良いという選択肢すらある。


 強いて言えば、誘拐されて奴隷になるという意味での第2、第3のサナやミツキを生み出さないため、という義憤はあるだろうが、そこの結果が好転してしまっているので、やはり積極性に欠けるのだ。


 まぁ、ミツキの場合は現状が幸せすぎるので変化を求めたくないと思っている節もあるな。

 おそらくそれゆえに奴隷から解放される件についても、エグザルの街から出てサナの故郷に行くことも消極的なのだろう。


 この辺りはサナも同じような印象を受けるな。


 じゃあ、自分は?というと、サナと同じ理由で恨みはない。

 確かに第2、第3のサナやミツキを生み出さないため、という義憤はある。

 だが、それは、地の底まで追いかけてまでというものではない。


 トルイリの街の探索者ギルドの係員曰く、『人さらいは、この世界ではよくある話』で、今回の誘拐団の話は、『たまたま淫魔の力で見つけることが出来た。』という話でしかない。


 家族という最小単位の社会ですら、その手から取りこぼした自分が、『人さらいの撲滅』とか、『奴隷制の是正』などという、おおきな社会の仕組みをどうこう出来る訳がないし、してはいけない。と思っているというのが本音だ。


 手が届く範囲を勘違いしていると、一番近いところから取りこぼしてしまう。

 この世界に来る前は、その近いところには何も、誰もいなかったが、今となっては、何事にも代えがたい人達がいる。


 サナが、ミツキが、サオリさんが、そこにいる。


 いびつな、本当に歪な家族ごっこかもしれないが、今はこれだけを護れれば、それで私は十分なのだ。


 「とはいっても、ロマさんにはお世話になったしなぁ。」


 詰まるところ、誘拐団退治、いや、誘拐団の捕獲に関しては結果的にギルド案件になってしまい、更に結果的にロマの立場的な問題になってしまった。


 この世界に呼ばれ、エグザルの街に着いて、右も左もわからない時にロマに色々助けられたおかげで今が、そう、今の家族ごっこがあるのだから、その借りは返したい。


 そうなると、ロマの顔を立てる意味で、エグザルの街でかたを付ける以外の選択肢はないか。


 うん、サルトの町で動くのは、やっぱり止めておこう。


 「パパ、新しい水着は決まったッスか?」


 そんな風に、ちょうど考えがまとまったころで、水しぶきと一緒にミツキから声をかけられた。


 ヤバい、そっちは全然考えてなかった。



 サナです!


 滝!滝です!

 こんな大きな滝は初めて見ました!


 滝つぼ?は水がグルグルでおっかないですけど、凄く水が綺麗!


 次回、第三八四話 「家族が水着に着替えたら」


 結構深いので、おぼれないように注意しなきゃ…。


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