第三十七話 「大丈夫」
今回はサナ視点です。
どうしてこの人はあたしにここまでしてくれるのだろう。
お父さん、ああ、お父さん。
ありがとうお父さん。
ごめんなさいお父さん。
迷惑ばかりかけてごめんなさい。
心配してくれてありがとうお父さん。
心配ばかりかけてごめんなさいお父さん。
困った顔で笑わないでくださいお父さん。
無理をしないでくださいお父さん。
なにも出来なくてごめんなさいお父さん。
優しくしてくれてありがとうお父さん。
一緒にいたいですお父さん。
一緒にいてくださいお父さん。
あたしにはお父さんが必要です。
あたしもお父さんに必要とされたいです。
お父さん好きです。
お父さん大好きです。
ぐるぐるぐると感情が空回りして言葉にならない。
涙が次から次へと溢れてたぶんあたしの顔ぐちゃぐちゃだと思う。
なんとか言葉にしようと口を開こうとするけど、あうあうと声にならない。
感謝を伝えなきゃ、願いを伝えなきゃ、好意を伝えなきゃ、他にも言わなきゃならないことがあるのに泣いてばかりだとまた心配かけちゃう。
泣き顔を両手で顔を覆ってないで、ちゃんと笑顔で『ありがとうございます。』って言わなきゃ。
駄目、絶対いま酷い顔してる。
お父さんにそんな顔見せられない。
でもでも、でも…
「大丈夫だよサナ。」
お父さんの優しい手が頭に触れる。
そのままゆっくりと撫でてくれた。
心臓の鼓動にあわせるようにゆっくりと。
ゆっくりと。
心が溶けていくように落ち着いていく。
ああ、お父さん。
そのまま柔らかく抱きしめられた。
角から頭、うなじまでとゆっくりと撫でてくれるお父さんの温かい手。
ここにいてもいいの?という猜疑心を、ここにいていいんだ。という安心感が塗り替えていく。
涙はもう止まっていた。
お父さんのいい匂い。
落ち着くようで、でもちょっとドキドキする匂い。
ああ、お父さん。
少し落ち着いたあたしを今度は強く抱きしめてくれた。
お父さんに守られていると感じる。
嬉しい。
「お、お父さん…」
やっと声が出せた。
「大丈夫だよ。大丈夫。」
お父さんの優しい声と体温に溶けてしまいそう。




