第三六九話 「遅刻」
「遅刻はともかく、貴方達の事だからぁ、この時間に素面で来るとは思ってなかったけどぉ、お客人と一緒に飲んでるとは思わなかったわぁ。」
「堅いこというなよ。」
「私もこんな形で再会するとは思いませんでしたよ。カレルラさん。」
娼館の応接室でロマ達と私達を待っていたのは、彫りが深めの顔つきに栗色の髪、紫のドレスを纏った美熟女、娼館「リューリュ」の店主カレルラだった。
「そろそろ次の検診に来てくれても良かったのよぉ?センセ?」
そういって口元に手を当て、コロコロと笑うカレルラ。
夜市の屋台で料理を食べ終わり、人心地ついたところでロマが案内した場所が、まさかのこの娼館だった。
もちろん正面からではなく、裏口から入って来たのだが、サオリさんの「娼館に入ったの初めてです。」というセリフに「そりゃ、そうでしょうね。」と、答えたのがマミ先生やヤコさんのツボに入ったらしく大盛りあがりだった。
というか、別の話題でだが今も後ろで女性陣は盛り上がっている。
単に酔っ払ってるだけかもしれない。
一応、名誉のために言っておくと、うちのメンバーでアルコールが入っているのは私だけだ。
まぁ、そのアルコールも今は種族特性【性病破棄】の付随能力で分解済みな訳だが。
酒毒、つまりアルコールも病気や毒と同じ扱いで自動的に破棄されるのが良し悪しの能力だが、オンオフが効くのはありがたい。
「ここには次の仲間を紹介すると言われてロマさんに着いてきたのですが、カレルラさんがそうなんですか?」
「元仲間ってところねぇ。最近私はほとんど迷宮には入らないからぁ。」
逆に言うとたまには入るのか。
カレルラの見た目は40歳を超えたくらいだが、と、なるとロマさん達もそれ前後の年齢なのかな?
3人とも、外見はざっくり30代前半に見えるが亜人族の見た目は未だによくわからない。
淫スキル【性病検査】で調べてもいいのだが、ただこの人達、それを使うと感知しそうな雰囲気があるんだよな。
「ちなみにカレルラさんの職業は?」
「娼館の主よぉ?」
いや、そうじゃなくて。
と、口が開く前に
「うふふ、冗談よぉ。でも探索者としての職業はナイショよぉ。」
相変わらず手のひらの上で遊ばされているな。これ。
話しぶりからすると、真正面から堂々と戦う系の職業ではないのだろう。
それにしても
「ロマさんのパーティーって、女ばっかりッスね。ハーレムッスか?」
おい、ミツキ!そんなストレートに…
っていうか、その質問は私に効いてしまうのだが?
「ハーレム?…」
一瞬の間の後に、大爆笑するマミ先生とヤコさん、そしてカレルラまで口を隠して肩を震わせている。
逆にロマはバツが悪そうな顔をしていた。
「いや、ごめんごめん、あまりにも、はんかくさいこと言うから…あははははははは!」
ヤコさん笑いすぎでは?
「俺のパーティーとはいうがな、このパーティーでは俺が一番下っ端なんだよ。」
「私の方が年下なのにねぇ。」
「そう思うなら、フォローなりなんなりしろよ。」
「嫌よぉ。一応、メンバーとしては私の方が先なんだしぃ。」
「1日しか違わないじゃねーか。」
一番下っ端とロマは言うが、口ぶりからするとカレルラとはほぼ同格っぽいな。
え?ということは、
「ごーるどの探索者なロマさんじゃないなら、誰が仕切ってるんですか?」
「っはははー、仕切っているというかー、仕切っていた。ですねー。サナちゃんの良く知ってる人ですよー。」
サナの問いにマミ先生が答える。
サナの知ってる人?
「ああ、わかりました。」
そう言ってサオリさんが拝むように手をパンと叩く。
「ロマおじさまだけじゃなく、皆さんもお母様のパーティーだったんですね。」
▽▽▽▽▽
ロマの話によると、サナの祖母でありサオリさんの母親である、別名『金剛鬼』こと『サビラキ・サオトメ』が仕えたと言われる三国三人の勇者のうち、一人目の勇者に仕えた期間と二人目の勇者のパーティーに入った期間との間、年数にして20年ちょっと前に、その金剛鬼が作ったパーティーのメンバーがロマ達だったそうな。
「作ったというかー、巻き込まれたというかー。」
「姐さんに助けられたのに出戻ってくるとは我ながら皮肉ねぇ。」
「当時、姫様はもうアサーキ共和国系のプラチナの探索者で、当時は憧れだったから即答したっけ。」
「それがエグザルの街で暴れたから問題だったんだよ。」
マミ先生、カレルラ、ヤコさん、ロマが四者四様の表情で当時の感想を漏らす。
って、サナのお婆ちゃん、エグザルで暴れた確かな実績があるの!?
サオリです。
ロマおじさまが、お母様のパーティーメンバーだったという事は知っていましたけど、マミさんやヤコさんもそうだったんですね。
次回、第三七○話 「鬼に歴史あり」
確かカレルラさん?には、サナがお世話になったと聞いてますので、改めてご挨拶したいのですけど…ちょっと昔話で盛り上がってしまってますね。




