第三六一話 「方法論」
「私が隷属の魔法を上書き出来るのを知ってるよね?
上書きが出来るのだから、当然、一部条件があるけど隷属の魔法に似た魔法も使えるんだよ。」
今まで2回しか使ってはいないが、『ベッドの上等での奴隷宣言を受理し自分の奴隷にする』淫魔法【愛の奴隷】がそれに当たる
ベッドの上等というのは、今思えば淫魔としての力が使えるプレイエリアより狭義の真・プレイエリアみたいなものなんだろうな。
プレイエリアはエロい事が出来る場所、真・プレイエリアはエロい事をするための場所、くらいのイメージだろうか?
「たしか、サナを助けるために使ってくれた魔法があるのでしたね。」
「そうです。ほかにも、みんなが付けている指輪を通して対象に考え方の誘導が出来るんですよ。
奴隷への命令ほど強い強制力はないみたいですけど。」
厳密にいうと指輪をしている者じゃなくて眷属に対して催眠術レベルの思考誘導ができるのだけども。
なので、指輪を回収しているアリシアに対しても有効のはずだ。
実は指輪をしている間だけ思考誘導が有効で、実際にはこの表現で合ってたというオチがある可能性は否定できないが。
「とはいえ、こっちは1回しか使ったことがないので、ちゃんとした効果は未知数なんだけどね。」
「アタシがまだ娼館の奴隷だった時にパパ達の事情を説明するためにアタシに使ったヤツっすね?」
「そう、あの時は、こちらの内情を奴隷への命令でも漏らせないように、『私達と一緒の時以外は聞いた事を忘れる。』という強制力をかけて成功していたと思う。」
実際には内情を探られていないようなので、奴隷への命令に対して本当にそれが有効だったかは、それこそ未知数だ。
「その時1回しか使ったことがないということは、今、わたし達にはその強制力はかかっていないという事ですか?」
不安そうにそんな事を聞いて来るサオリさん。
そういやサナにも前に同じような事を聞かれたが、その時とはおそらく意図が違う。
「一切かけてないですよ。」
「そういえば、お父さん、いえご主人さまは『命令』もしたことないですよね。」
「そりゃあ、強制や誘導した心は、もう本当の心じゃなくなってしまうからね。
だから…」
サナへの視線をサオリさんに戻し、
「今、みんなが思っている気持ちは、ちゃんと自分自信の気持ちだから心配しないで。」
と、伝え、改めて三人を見渡す。
愛しい気持ちも大切に思う気持ちも親愛も何もかも全て、誰が決めたものでもなく、それぞれの心が出した答え。
そんな心をぶつけられているからこそ、私自信も愛し愛される喜びというものが、本当に、あるいはもう一度あるのなら、それを信じてみたいと思えるようになって来ているのだ。
いまいちピンと来ていないサナやミツキに比べ、サオリさんは安堵の表情を浮かべている。
この辺りは、前回誓った『愛』が『嘘』だったのか、あるいは、この『愛』が『嘘』なのかを自分自身に問うてしまった未亡人ならではの心情なのかもしれない。
「話がそれたけど、どちらの能力を使うにしろ、必要だったら誘拐団のうち一人でも密かに捕まえて命令か思考誘導をかけて、誘拐団自体をエグザルの街に誘導するつもりだったんだよ。」
「なるほどー。」
「え?ちょっと待って欲しいッス。」
う、サナは素直に納得してくれたのに、こういう時はミツキの感の良さが憎い。
「隷属魔法を上書きしてもらう時、『ベッドの上で本人が私の奴隷になりたいと意思表示をすることが発動の条件』ってパパに説明受けたッスよ?
そっちは、どうするつもりだったんスか?」
ほらやっぱり気づかれた。
「それは、その、アリシアさんの時と同じように…」
「男同士でッスか?それ、アタシ的にはナシよりのアリッスよ?」
アリなんかい。
「わたしとしては、ちょっと想像外ですね。」
サオリさんは元族長という立場上、やっぱり保守的な様子でBLの素養もないらしい。
「いや、さすがにこちらも男だと相手も警戒するだろうから、女になって誘って…」
「それは、なんか嫌です。」
こっちはサナが嫌なのか。
「つまりパパは、女のご主人様の格好で逆ナンしたあと、アリシアさんの時みたいに相手を快楽の虜にして思考誘導するか、奴隷に立候補させて命令するつもりだった。って事ッスね。」
「いや、実際には私だって男相手にそんな事するのは嫌だから、ベッドまで誘ったら魔法で縛り上げて、痛みが気持ち良さに変わる魔法を強めにかけて、ぶっ叩きまくって同じ効果を得ようかと思ってたよ。」
「それはそれでどうかと。」
サオリさんがそういってため息を漏らす。
駄目かな?
男同士ならミツキが言った内容よりは、なんぼか精神的にマシだとは思うけど。
サオリです。
ああ良かった。
少なくても今のレン君への気持ちは『嘘』じゃないのですね。
次回、第三六二話 「サナのターン」
それにしても、あの痛いはずの事が気持ちよくなるのは、やっぱりレン君の魔法のせいだったのですね。




