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第三五二話 「デートの約束」


 「ミツキが悪いというより、サナ達の思い切りが良すぎるんだと思うんだ。」

 「そうッスよね?アタシだって頑張ってるッスよね?」


 一戦、いや数戦終えて、少し落ち着いたミツキを慰める。

 確かに根は恥ずかしがり屋のミツキにしては、裸エプロンは相当頑張った方だろう。


 「ミツキは知識もあるし、頭の回転も早いし、アイディアマン…いや、アイディアガールだけど、最近は公平性に厳しいというか、正々堂々正しく物事やろうとして失敗するというか出遅れる。みたいなイメージあるな。」


 「うー、褒めるかけなすか、どっちかにして欲しいッス。」

 浴槽の中で私の胸に背を預け、抱いている私の両腕を手で抱えるようにしてお湯に沈んでいくミツキ。


 なんか、昨晩同じような光景みたな。


 「いや、褒めてるんだよ?賢くて要領いいはずなのに、上手く行かないのは、たぶん周りに気を使ってるからだろ?

 ミツキのそういう所、偉いなって。」


 「むー、嬉しいッスけど、複雑ッス。」

 ミツキと私はお互いサナを第一に考えている所があるので、その気持はなんとなく分かる。

 第一としているものが自分の外側にあると、頑張れば頑張るほど報われないことは確かにあるのだ。


 「そんな賢くて要領いいミツキちゃんにお願いがあるんだが。」

 「嫌味に聞こえるッスよ?で、なんスか?」


 憂さ晴らしなのか、抱えた腕を齧っていたミツキが振り返る。


 「今日一日、付き合ってくれない?」



▽▽▽▽▽



 「それじゃミツキちゃん、でーと頑張って!」

 「そ、そんなんじゃないッスよ?!」

 「うふふ、お気をつけて。」


 朝食後、サナとサオリさんの見送りでミツキと一緒に外出する。

 一応、ミツキの言う通り外出の理由はデートではないのだが、海でしたデートの約束もあるので、今日は一日、それなりにミツキにも楽しんで貰いたいとは思っている。


 と、いうか、気分転換含めながらじゃないとミツキもメンタル的に辛いかもしれないしな。


 二人での外出の理由は誘拐団の動向調査と必要ならばその誘導だ。


 私一人だと、この世界の世俗というか常識にうといし、その辺りのフォローや、誘拐団自体の情報などもミツキには期待している。


 顔と名前は一応分かってはいるのだが、実際に会ったことがある者がいた方が確認のためには確実だ。


 逆にミツキの面が割れている可能性は当然あるので、今日のミツキは淫魔法【トリコフェリア】で髪型を、【コスチュームプレイ】で、服装をいつもとガラッと変えた感じにしている。


 髪型はセンターパートのロングストレート。

 ミツキの金の髪が蜂蜜の川のようにしなやかに背中に流れている。


 普段の快活なイメージから一転してお嬢様感があり、大人しくしていれば小麦色の肌と合わせて地中海あたりのお姫様みたいな印象を受ける。


 服装もそれにあわせてノースリーブの白のサマーニット。

 下はミツキ的にはパンツにしたかったようだが、印象を変えるための服装なので、上とは色味の違う白のロングスカートにした。


 色合いは茶兎族の種族衣装にあわせたのだが、やはり白と小麦色の肌とのコントラストが素晴らしい。


 ちなみに、うさ耳は、つばひろの帽子で隠してある。


 「ちょっと、可愛く、いや、綺麗にしすぎたかな?」

 「へ?!なんスか、いきなり。」

 

 率直な感想を漏らしたら横を歩くミツキが何か動揺している。


 「いや、美人過ぎて逆に目立っちゃうかな?と思ってさ。」

 「あ、う。そ、そんな事ないッスよ?あの、ほら、親の欲目ってやつッスよ?」

 「そうかな?普通に大人っぽくて綺麗だよ?」


 ミツキがあたふたして、なんかグルグル目みたいになっている。

 あ、ちなみに眼鏡も細いビックフレームのものして、印象を変えている。


 ミツキの挙動が怪しいので手を掴んで移動することにしよう。

 とりあえず目指すのは、御姫様を見送った東門だ。


 「ミツキ、あまり挙動不審だと目立つよ?もっと堂々として。」

 「は、はいッス。堂々と…堂々と…えいっ!」

 「ぐふっ。」


 ミツキが取った私の手を払い、その代わりに腕に抱きついてきた。

 というか、勢いが良すぎて、ちょっとしたタックルみたいになっている。


 「え、えーと、人族同士のカップルに見えた方が、目立たないッスよね?」

 眼鏡越しの上目遣いはやめなさい、可愛いから。


 あと、ニット越しのおっぱいの感覚や形が、こう。な?


 サナです!

 今日はやっと、お父さんとミツキちゃんのでーとです。


 お仕事で忙しかったとはいえ、お父さん、忘れてるのかと思ってました。


 次回、第三五二話 「ミツキとのデート」


 ミツキちゃん、楽しんでくれるといいな。

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