第三四二話 「索敵」
流石に馬車のスピードにいつまでも合わせて走るわけにもいかず、少し並走したところでサナとミツキが戻って来た。
「御姫様には会えなくて残念だったね。」
「いや、ちょこっと窓開けて、手振ってくれたッスよ。」
「お餅、食べ方わかるかなぁ?」
あ、一応、ちゃんとお別れは出来たのか。
それは良かった。
同じ気持ちらしく、隣でサオリさんも微笑んでいる。
さて、お別れも食事も済んだところで本題に入ろう。
周りに誰もいないことを確認して、淫魔法【夜遊び情報誌】と特性【ビジュアライズ】を使い、みんなの前にマップを表示させる。
えーと、誘拐団たちの名前はナイラ王朝のマップ上に出るかな?
「あ、これですね。」
「ひぃ、ふぅ、み…全員いるッスね。あとの4人は…」
「多分、攫ってきた女の子たちね。」
ミツキが唇を噛み締め、サオリさんから殺気が漏れる。
冷静そうなサナでさえ、私の作務衣の袖を握っていた。
以前、ルーオイの町に行くときの馬車の様子でもそうだったが、なんだかんだで娘2人はこの誘拐団に関することがトラウマになっているようだし、サオリさんにいたっては、私に初めて会ったときのように問答無用で切りかかってきそうな勢いだ。
レベルもランクも上がって、物理的な強さでは騎士団とでもやりあえるようになったものの、メンタル部分を考えると私達だけで誘拐団を全員対処するというのは思いがけないミスを起こしそうで怖い。
出来れば無事全員捕まえて、元締めまでなんとか辿り着きたいしな。
「とりあえず、この町で奴らに仕掛けるのは禁止ね。」
「えっ?」
サオリさんが驚いたように声を上げる。
見敵必殺する気、満々だったらしい。
「今まで攫って売っていた女の子達も助けるために、出来れば全員生かして捕まえたいけど、それには私達だけじゃ手が足りないから、なんとかギルドの手を使って一網打尽にしようと思うんだ。
出来ればエグザルの街でそれが出来ればロマさんの手も借りられるからベストだね。」
「なるほどです!」
「了解ッス!でもこのトルイリの街からエグザルに向かえばラッキーッスけど、ドイルに向かわれたら面倒ッスね。」
何故か嬉しそうにしている娘2人。
「トルイリの探索者ギルドの手を借りられれば、この街で決着つけることも可能じゃないでしょうか?」
相変わらずサオリさんは短期決戦派だ。
出会った時からそうだけど、敵に関しては直情的だよな。
子熊といっしょの母熊みたいだ。
…立場的には似たようなものか。
「そうですね、とりあえずここのギルドに相談してみましょう。」
▽▽▽▽▽
結論から言うと、ギルドから直接の支援は貰えなかった。
「信用を得ようとして詳しく話すぎたかな?」
「しょうがないッスよ。パパの能力のことを話せないんじゃ、近日に誘拐団がこの街に来るなんて眉唾ッスもの。」
「でも、あの言い方はないと思います!」
ギルドへの説明の中で、おそらくトルイリでは奴隷を売ることはあっても攫うことはないだろうと説明したことに大して、「じゃ、うちにとってはメリットしかないですね。」的な事をいったギルドの職員の言葉にサナが腹を立てている。
もう、その時、サオリさんを止めるの大変だったんだから。
そのサオリさんもサナと一緒になってプリプリ怒っている。
「距離的に誘拐団がこの街にたどり着くのは早くて今晩、おそらく明日の午後くらいだろうから、それまで対応を考えておこう。」
「トルイリがこの状態じゃ、なんとかエグザルに向かわせたいところッスねー。」
他人が怒っていると冷静になるタイプなのか、ミツキが落ち着いているのが救いだな。
「あては無いことも無いんだけども…、ま、とりあえず昨日は一日護衛のお仕事で大変だったから、今日一日は休息日としよう。
どこか行ってみたいところある?」
「そもそもこの街になにがあるかを知らないッス。」
「うん。」
「そりゃそうだな。」
あれ?なんか前にも同じやり取りをしたような気が…。
淫魔法【夜遊び情報誌】で当たりをつけてから動くのが効率的ではあるのだが、せっかくの遠出なので、気分転換がてらみんなでフラフラと歩いてみようということで話がまとまった。
ミツキッス。
アタシ達がパパに助けられたように、『パパと出会えなかったアタシ達』も、パパは助けようとしてるんスね。
もう!
もう!
もう!
パパ大好きッス!
おもわずサナちーとアイコンタクト取っちゃったッス。
次回、第三四三話 「トルイリの街」
今晩は絶対サービスするッスよ!




