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第三三一話 「ネローネ」


 「どうしてネローネ帝国の騎士が自分達の御姫様を…。」

 相当ショックだったのか、ジェリーナが言ってはいけないことまで口に出している。


 御姫様も騎士もネローネ帝国の者だったのか。

 王子様をはじめとして、人の領地でやりたい放題だなネローネ帝国。


 騎士団がサルトの町の方向へ向かうのを視界から消えるまで確認した後、今は全速力でトルイリの街へと向かうべく林道を爆走している。


 街の手前の湖で休憩することも視野に入れて、今はとりあえず、すれ違うことの出来た騎士団との距離を離しておきたい。


 ジェリーナの話によると、先程の騎士団はおそらく、トルイリから御姫様のように大聖神国街へ向かう団体とイノラからナイラ王朝本国へ向かう団体の両方をエグザルから護衛するためめホウマの街から派遣されてきた護衛団の一部だろうとのことだ。


 御姫様がトルイリに置き去りになっているのに待ってなかったり迎えに来なかったりしていたのは、他にも護らなきゃならない対象がいたからなのか。

 おそらく御姫様より上位の地位の者がその旅団にいるのだろうな。


 逆にいうと御姫様を迎えにくるのならば、正々堂々と迎えに来れる立場なのだから、探索者を装ったりする今回の動きは、どう考えても裏がある。


 控えめに言えば旅団に合流させたくないか、最悪、御姫様という存在がいてはいけないという可能性すらある。


 今のところはどちらにも対応できるように動いているつもりだが、日も傾いてきていることだし、なにも起きないうちにトルイリに着くのが一番だな。



▽▽▽▽▽



 お互い反対方向に向かって走っている騎士団との距離を確認した後、休憩地だった湖を出発した。

 現地点ではトルイリへの道は誰もいない事も確認している。


 ただ、最後に『緊急事態・計画中止』の赤の狼煙を上げた場所で騎士団が留まった後、大半がこちら側に引き返して来ているので言うほど余裕はない。


 こちらは4頭引きの馬車とはいえ、馬車を引かずに馬だけでこちらに向かってこられれば、あちらの方がスピードが早い。

 軍事訓練をされている騎士団の騎馬ならなおさらだろう。


 後ろを気にしつつ、1時間ほど走っただろうか?

 日はどんどん傾き、夕焼け空になりつつあるが、このペースなら日が落ちる前に街にはつくだろう。


 「パパ、前から馬車が一台来てるッスよ。こっちと同じく4頭引きの箱馬車ッス。」

 そんな事を考えていると、御者台で望遠鏡使って前方を確認していたミツキから声がかかった。


 後ろから追ってくる騎士団の動向ばかり気にしていたので前方を見落としていたようだ。

 淫魔法【夜遊び情報誌】の表示範囲を変更して確認すると、馬車には3人乗っているようで、林道をお互い向き合った状態で走っているせいか凄い勢いで距離が縮まってきている。


 淫スキル【窃視症】で視覚を強化するまでもなく、あれよあれよという間に目視できるほどの距離まで近づいてきた。


 御者台に2人、後ろの荷物置き場に1人乗っており、淫スキル【性病検査】で御者台に乗っている探索者風の男を調べると…レベル41の騎士?!


 同じ様相の馬の手綱を握っている男もレベル28の騎士、荷物置き場にいるのはレベル33の魔術師だ。


 ヤバい!

 8人づつの2個分隊じゃなく、6人☓3個分隊だったのか?!

 と、いうことはレベル41の騎士は…小隊長か!


 後ろの荷台から馬車の屋根にかぶさるように前の様子を見ていたが、それどころじゃない、御者台の小隊長が長剣を抜いた。



>ダラム・ライデンの【双突】



 御者台から一足飛びでこちらへ飛び、小隊長 (ダラムというらしい)が空中で放った2連撃の突きが馬車の先頭を走る2頭の馬の頭を一瞬で貫いた。


 そのまま4頭の馬の中央に着地した小隊長が、そのまま下からその長剣を跳ね上げようとしている。


 まずい!後ろの馬までやられたら詰む!


 咄嗟に小隊長に槍を投擲して牽制すると、器用に馬の背に手を置き、そこを台にしてすれ違う相手側の箱馬車の天井に飛び乗られた。


 急停止する相手の箱馬車と、先頭の馬を失って動きが止まるこちらの馬車に数mの距離が出来る。


 淫スキル【マゾヒスト】の危険感知、正面、爆炎!

 『魔法が来る!結界!両方だ!』


 一瞬早くサナの【瞑想結界】が相手魔術師の爆炎魔術を防ぎ、一瞬遅れた、いや、遅らせたサオリさんの【金剛結界】が爆炎の後ろから再度飛び込んできた小隊長を弾き返す。

 サオリさんも私と一緒に荷台組にしておいて良かった。

 【金剛結界】があるうちにこちらも箱馬車の天井に乗り、小隊長と対峙する。


 『ミツキ、サオリさん、相手魔術師を最優先で!サナ、馬車から出て御者台の騎士を頼む!』


 夕焼けの中、逆光気味に長剣を構える小隊長。

 どうみても小隊長なんて雰囲気じゃないな、この人。


 サオリです。

 あの男、相当強いです。


 【金剛結界】に備えていなければ、突破されてまた馬を失うところでした。


 次回、第三三二話 「夕日」


 早く魔術師を倒して手伝いをしないとレン君が危ない…。

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