第三二九話 「作戦」
箱馬車の横を通り過ぎて、こちら側に向かってくる3人を淫スキル【性病検査】で調べると、2人はレベル28と20の騎士、お、ラッキー、もう1人はレベル20の魔術師だ。
馬は2頭でレベルの低い方の騎士が魔術師と二人乗りをしている。
騎士とはいえ、見た目はまだ探索者風の格好をしているので、装甲は比較的薄そうだ。
『ミツキ、サナ、最初は予定通り。
その次は、サナがデカイ方の男、ミツキが細い方の男をお願い。
サオリさんもデカイ方優先で足止めの後は馬と2人の護衛をお願いします。』
『はい。』
『了解ッス。』
『わかりました。』
サオリさんの返事とともに、林道の真ん中に武蔵坊弁慶よろしく薙刀を構えたサオリさんが立ちはだかる。
「!?どこから現れた!?」
動揺し、思わず馬を止める探索者風の3人。
うん、その止まって馬が落ち着くのを待っていた。
「何奴!」という騎士様の声が最後まで響く前に2頭の馬が膝から崩れ落ちる。
「な!?」
デカイ方の男が落馬しそうになって体を崩したところにサオリさんの薙刀の一撃。
倒れる馬から飛び降りるようにして、それを剣で受けるレベル28の騎士。
バランスを崩して普通に落馬しているレベル20の騎士と魔術師に比べれば流石レベル28。
さて関心してないでお仕事お仕事。
淫魔法【睡眠姦】で確実に魔術師を眠らす。
ここで遠距離攻撃持ちを減らせるのはデカイ。
それを追うようにして、馬に引き続きサナとミツキの眠りの魔法が2人の騎士に襲いかかる。
レベル28の騎士の方はサナとレベル差が少ないのでレジストされるかと思ったが、ランク差補正はそれ以上だったみたいで、あっさりと眠りについてくれた。
馬は殺すのは忍びないが、機動力を奪うために必要なのでサオリさんが薙刀の柄で尻を叩いてサルト方面へ走らせた。
騎士たちにも改めて【睡眠姦】を重ねがけして、林道から少し入った人目のつかない場所に縛り付ける。
「作戦どおりッスね!」
「やったね!ミツキちゃん。」
「3人減らせたのは大きいですね。」
3人とも口々に成功を祝っている。
あ、そういやもう会話をしてもいいとジェリーナと御姫様に伝えなくては。
▽▽▽▽▽
作戦とはこうだ。
淫魔法【淫具召喚】と【淫具操作】を使って本来のタイミングからズラして『緊急事態・計画中止』の赤の狼煙上げ、相手の斥候をおびき寄せる。
相手が近くまで来たら、馬車を道の端によせ、サナとミツキが手分けして隠形の魔法を馬車にかけ、自分たちも配置につき同様の魔法で姿を消す。
後は、今やったように斥候が魔法の射程に入るようにサオリさんが隠形の魔法を解除して立ちはだかり、驚いているところに眠り系の魔法の連発だ。
隠形の魔法はソロソロと歩くくらいなら隠れたままでいられるが、戦闘態勢や魔法を唱えると切れてしまうので、サオリさんに相手の視線を集め、その死角から魔法連発がこの作戦の肝だ。
殺すと後が大変そうだしな。
「見事に決まりましたな。」
予想以上に手際よく進んだのでジェリーナも関心している。
「湖までの距離的に、もう1セットいけそうッス。でも、次の見張りの想定位置だと、湖に近すぎるかもしれないッスね。」
「緊急事態を装うなら、定位置じゃなくて、この辺りで狼煙上げてもう一組呼び寄せるほうが、それっぽいかも知れないな。」
抱きついてくるサナを撫でながら、遠巻きに作戦会議に参加する。
一応これでも男が苦手なジェリーナに気を使っているのだ。
「次は本隊ごと来る可能性がありそうですから、気をつけないとですね。」
「本隊ごと来てくれるなら、隠形の魔法でやり過ごして逃げ切るさ。」
今回、一番危険な役割だったサオリさんにそう返す。
問答無用で攻撃してくるタイプだったら袋叩きだった可能性もあるしな。
いや、その可能性もあるから、【金剛結界】持ちのサオリさんにお願いした訳だが。
「了解ッス。それじゃ、パパ、また狼煙の仕掛けお願いするッス。」
「わかったよ。ほら、サナ、ちょっと離れて。」
「嫌。」
そうかー、いやかー。
逃げ切り考えても、もう1セットくらい削って置きたいところだな。
サナを背負いながら仕掛けをかけつつ、そんな事を考えていた。
サオリです。
作戦とはいえ3対1は緊張しちゃいます。
みんなが魔法を唱え初めて姿を表したときは、わかってはいてもホッとしてしまいました。
次回、第三一○話 「騎士」
上手く本隊をやり過ごせると良いのですが…。




