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第三十二話 「ドッグタグ」

 とりあえず警備兵からいわれたとおり北門からの道を真っ直ぐ進む。

 どうせ近くまでいけば、それっぽい格好の人たちが迷宮方面に向かって歩いているだろうし。


 10分ほど歩くと左右に出店がでている大通りに出た。

 見たこともないような果物や野菜が並び、怪しげなアイテムを売る行商人など、いかにもファンタジー感がある眺めだ。

 「大きな街ですね…」

 サナから見ても珍しいのかキョロキョロしている。


 人種的には、見た目人族というか白人が7割、黒髪の人族が2割、猫耳、うさ耳、尻尾や角つきと分かりやすい亜人が1割といったところだろうか?

 といってもサナみたいにパッと見が黒髪の人族にしか見えない亜人もいるだろうから割合が正しいのかどうかはわからん。


 「サナ、人族が怖かったりしないかい?」

 人さらいにあってから今まで色々合っただろうし、そう聞いてみる。

 サナは繋いだ手をキュッと握り直すと「お父さんと一緒だから大丈夫です。」と笑顔で答えてくれた。


 「あの、お父さん。ありがとうございます。」

 繋いだ手と反対側の手でそっとサナの頭を撫でる。


 その後、サナと二人でお上りさんのようにキョロキョロとしながら通りを進むと大きな交差点に出た。

 交差点の中央には大きな噴水があり、待ち合わせの場所にもなっているらしく多くの人で賑わっている。


 その交差点には道路標示番が何個かついており、向かって左側に行くと公社と探索者ギルドがあるらしいので、そちらへ向かって歩いていく。


 「さっきの通りとだいぶ雰囲気違いますね。」

  

 こちら側の通りはそれぞれの店に付いている看板によると手前から飲食店が並び、その後に武器屋や防具屋、道具屋などが並び、その後に宿屋兼飲食店が並んでいる。

 いかにも迷宮の探索者相手というような通りだ。


 実際にもう買い物をしている鎧姿やローブ姿の男女の姿が見える。

 あともう泥酔してる奴もいるな。


 その通りの突き当りに白壁にオレンジの屋根の大きな建物があり「エグザル迷宮管理公社」とこれまた大きい看板がついている。

 探索者ギルドの看板もついているのでギルドも建物内に間借りしているのだろう。

 特に門番のようなものもおらず、他のいかにも探索者といった雰囲気の連中も普通に出入りしているので入ってみる。


 雰囲気としては空港とか大きなデパートといった感じだろうか?

 どっちかというと運転免許試験場がイメージとしては一番近いかもしれない。

 中央ホールの壁には色々な案内板や説明文が貼ってあり、それとは別に正面に受付嬢というか案内員が文字が読めない様子の探求者達を身振り手振りで案内している。


 看板によると正面が迷宮の入り口への通路で左手が探求者ギルドのホールや受付、直営飲食店や簡易宿泊施設があり、右手が公社のホールで迷宮からのアイテムの換金所や公社直営のアイテムショップ、迷宮の資料館などがあるらしい。


 壁に貼ってある地図によると迷宮への通路の奥には何重もの壁や門、さらに奥の大きなホールには簡易城壁のようなものもある様子だ。

 そういや迷宮から魔物が溢れ出ることがあるってサナがいってたか。

 それらの物々しい設備の隅にそれなりのスペースを取っている公衆トイレの表示が何か可笑しい。

 公社の換金所は迷宮側の方がメインなのかかなり大きなスペースが確保されている。


 とりあえずデミオークのドロップ品を換金するため公社の換金所へ向かったが、窓口の前に「換金の際には探索者ギルドへの登録が無いと買い叩きます」と遠回しに書いてあったので戻って先に探索者ギルドの方へ向かう。


 公社の方の壁は白壁づくりだがギルド側の方は木の壁になっており西部劇に出てきそうな雰囲気だ。


 手前右手に受付が5つあって、その並びの横に大きな掲示板がある。

 掲示板には紙のようなものが貼ってあり、探索者達がその前に集まっている。

 依頼書か何かが貼ってあるパターンっぽい。


 その横には二階への階段を挟み背後にキーボックスが並ぶホテルのカウンターのような窓口がある。

 建物のつくり的に二階が宿泊施設になっているのだろう。


 左手側は手前に木造りの椅子とテーブルが並びレストランのようになっている。

 奥側にはバーカウンターがあり、その横は厨房に繋がっているのかオクトーバーフェスを思い起こさせるような衣装のウエイトレスがそこから料理を運んでいる。


 中央真正面に小さなステージのようなものまである。


 バーカウンターの横と掲示板の横、つまりこの大きなホール状の部屋の左右の端からは二階への階段が緩やかなアーチを描いて伸びている。

 それぞれ階段を登った先には左右への踊り場と奥への廊下があり、ちょうど一階の正面ステージの真上の位置から奥に伸びる通路と全部で3本の廊下が奥に伸びている形だ。


 この先が宿泊スペースなら廊下の位置からすると一部屋ごとは結構狭そうだ。

 というか間取り的に窓無い部屋とかありそう。


 とりあえず最初は探索者としての登録だ。

 これから事あるごとに真実の双子板で身元を確認されるのは面倒だし、それにそこに表示される


 種 族:人族/


 の最後の『/』をに気づかれるのも困る。

 厳密な自分のステータスは、ここが「人族/淫魔族」なのだ。


 一番中央ホールから近い窓口が登録窓口らしいのでサナの手を引いて一緒に向かう。


 「いらっしゃいませ。エグザル迷宮は初めてですか?」

 スイス風の民族衣装におさげでそばかすの受付嬢が声をかけてくれた。

 若そうだが白人の年は正直わからん。

 日本人の感覚だと二十歳過ぎに見えるが、たぶん十代だと思う。


 「はい、探索者ギルドに登録したいのですが。」

 受付カウンターに置いてある「探索者ギルド加入の手引き」と書かれたボードを指さしながらそう答える。


 実際のところ手続きは簡単だった。

 街に入る時と同じ様に真実の双子板で身元を確認され、記号と番号が掘られた木製の認識票を一人につき二枚渡される。

 ドッグタグみたいだな。と思ったが、使い方も同じらしい。

 仲間の死体を持ち帰れない時はこのタグの片方を持ち帰るためだそうだ。


 この木製のタグは無料らしいが探索者ランクが上がると有料で金属製の新しいタグを作らされると説明された。

 そのときには名前も彫られるらしい。


 「おそろいですね?」

 と、タグを掲げサナはちょっと嬉しそうにしていた。

 

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