第三二○話 「ロマの手紙」
「あ、レンさん、ロマさんからお手紙預かってますよ。」
誘拐犯達の現在位置を確認しにエグザルの探索者ギルドに一人で戻って来たところ、受付のお姉さんに呼び止められた。
手紙を受け取ってさっと目を通すと、周辺ギルドには誘拐犯の手配書が周り正式に協力体制が取られることになったらしい。
ただ、その手配をシルバー以上の探索者への依頼にするには各ギルドでも意見が分かれており、探索者の中に誘拐の手引をしているものもいるのではないか?という意見が強いそうだ。
そのため、とりあえず各ギルドで信頼のおける者のみが少人数で誘拐犯の動向を探る。という路線で現在動いており、ここエグザルでは、被害者であり誘拐犯の顔を生で知っているサナ達とその身内である私とサオリさん。
それからロマとそのパーティーの一員が何人かこの依頼に当たることになったそうだ。
ロマのパーティーからというのは戦力的に頼もしいな。
誘拐犯達の居場所は、まだマップには乗ってきていないが、現在、ここエグザルの街から北東の方向に100Kmほどの距離にいるので、方角的にも距離的にも予想通りトルイリの街への街道を移動しているはずだ。
待ち伏せするには貴重な情報なのでロマ達にギルドサイドにも伝えておいた方が良いとは思うのだが、どうやって知った?とか聞かれそうだな。
『わたしかサナの魔法を使って分かったと伝えるのはどうでしょう?
尼系の術者は捜し物の方向と距離が分かる儀式魔法を使えるのはロマさん達も知ってることですし。』
念話で船に戻っているサオリさん達に相談すると、そんな答えが帰ってきた。
『そうッスね。でも、あれって会ったことない人相手にも使えるッスか?』
『えーと、会ったことのない相手を探すには、相手の持ち物か由来になるものがなきゃ駄目。って氏神様に習いました。』
それじゃ、サナが使ったことにすればいいか。
あ、でも
『それって、元奴隷だったサナやミツキも相手の持ち物か由来になるもの扱いになる?』
▽▽▽▽▽
結論からいうと、なるらしい。
そういうことならタイミングを見てロマ達に情報提供をしても問題ないだろう。
場合によっては向こう側も術者を用意してくれるかもしれない。
この流れだとホウマの街に行く意味も時間も無いな。
せっかくそろそろ船がネローネ帝国側の港町、カリーに着くのに勿体ない。
時間が合えば船を降りた後、そのままカリーからホウマへいく馬車に乗るか、カリーに一泊してから同じくホウマに向かうかと思っていたのだが、どう考えてもエグザルに戻ってトルイリの街へ向かうのが安定っぽい。
さて、どうしたものかな…。
▽▽▽▽▽
カリーの港町の船着き場に着く時に湧き上がったサナとサオリさんのテンションを宥めつつも、何箇所か淫魔法【ラブホテル】のショートカットを作りながら、馬車乗り場に向かう。
ここに来る前に女性陣には淫魔法【コスチュームプレイ】で、こっちの世界のお金持ち風の格好に着替えて貰った。
今となってはもう懐かしい王子様や公子の着ていた私服を性別反転させて着せているので、この世界でのフォーマルのドレス姿、しかも貴族風と、本当にお金持ちに見える。
角やうさ耳は帽子などで隠してもらい、私の格好も執事服にして仕えているので、なおさらだ。
そんな格好で馬車乗り場に着たものだから、係員も目の色を変えたように高そうな馬車を薦めてくる。
いわゆる箱馬車だ。
執事のフリをして何台か見せてもらい、内装も確認させて貰うと称して馬車の中にも扉を開けて入らせてもらった。
▽▽▽▽▽
「せっかくお姫様気分だったのに乗らなかったの勿体なかったッスね。」
「でも、運賃すごい高かったから、乗ったほうが勿体ないと思う。」
「少し気が引けますね。」
淫魔法【ラブホテル】のショートカットでエグザルの簡易宿泊所の部屋に戻ってくると、三者三様にそう感想を漏らした。
結局、カリーから直接馬車に乗ってホウマの街に向かうことは諦め、エグザルで体制を整えることにしたのだ。
とはいえホウマに行くの自体を諦めた訳ではない。
「あとは、馬車のどれかがホウマに無事着くのを祈るだけだな。」
乗船して淫魔法【ラブホテル】のショートカットを船内に作った時と同じく、馬車の方に勝手に移動して貰うことにしただけなのだから。
サオリです。
レン君は似合うと褒めてはくれましたが、人族の貴族の格好なんて、落ち着かないものですね。
誘拐犯達がもうすぐ手の届く距離まで来ているそうです。
気を引き締めなくては…。
次回、第三二一話 「依頼」
それにしても、ロマさんの仲間って、どんな方達でしょう?
やはり鬼族なのかしら?




