第三一三話 「浜辺」
「わぁっ凄い!」
「これは期待できるッスねー。」
サナとミツキが跳ねるように岩場の間の潮溜まりに向かっていく。
さっき持ち帰った貝やらウニなどを2人に見せたら何処で採ったのかと聞かれたので、全員その潮溜まりに連れてきたのだ。
ちなみにさっき持ち帰った魚は、このまま持っていても活きが悪くなるだけなので放流した。
「ミツキちゃん、ミツキちゃん、こっちこっち。」
「サナちー、そこ足元にもあるッスよ。ほら、ママさんも。」
「あたしも?」
そういいながらも楽しそうについていくサオリさん。
キャッキャウフフしながら磯遊びを楽しんでいる。
というか、もう漁だなあれ。
少なくても娘たちは食べれる物しか狙っていない。
ここのマップは迷宮と同じ系統のマップなので、その気になれば何処に何がいるか探して教えることも出来るから、効率的に捕まえることも可能なのだが、せっかく楽しんでいるところにそれをするのも無粋だと思い、とりあえず私は釣りに勤しむことにした。
ちなみにマップに表示される対象は、選択してからのオンオフも出来るのだが、マップの縮尺によって、そこにデフォルトで表示される獲物の種類が変わるらしい。
種類というか大きさだな。
縮尺を大きくすれば、大きな獲物しか表示されないし、逆に縮尺を小さくすれば小さな獲物でも表示される。
どちらにしても淫スキル【マゾヒスト】の効果で害や毒がある獲物、または敵対心を持っている獲物は縮尺に関係なく表示されるし、昨日覚えた淫スキル【裸エプロン】のせいか、食用可能な物は専用のアイコンが出る仕様になっていた。
淫スキル【淫具鑑定】で、いちいち調べなくてもいいのは便利だな。
毒があっても、鑑定すればどこに毒があるか分かるので食用に出来そうだが。
そんなことを考えながら、マップで見つけた魚群のあるポイントに釣り針を落とす。
「あ、そういえば…」
「なんスか?」
「生きているものはアイテムとして預かれないから、採るなら今日食べる分だけにしてね。」
「余ったら干物か保存食にしようかと思ったけど、駄目?」
おー、サナがガチ勢だ。
「そこまでしなくても、これからはいつでもショートカットで近くまで来れるよ。」
「あ、それなら今日は食べるだけの分にします。」
サナは抱えた巻き貝のうち、幾つかの小さな貝を潮溜まりに戻した。
量を採らない代わりに質を厳選するつもりらしい。
▽▽▽▽▽
「はい、レン君、あーん。」
「あーん…うん、美味しいですね。」
「うふふ、良かった。」
両手で釣り竿を握ってる最中に、手のひらの中で海水で洗ったウニの身をサオリさんが差し入れてくれた。
採れたてで新鮮なウニはまた格別だ。
日本酒欲しくなるな。
サオリさんが捕まえているのはウニ、ホタテのような二枚貝、小さい蟹、などなど、わりとバラエティに富んでいる。
というか、唯一ちゃんと磯遊びを楽しんでいる感があるな。
一方サナは、Tシャツを籠代わりにして貝類を中心に食べでのありそうな物を色々集めているようだ。
もう夕食の仕入れに来ているようなもんだなこれ。
で、ミツキは今、タコと格闘しているが、メインはウニらしい。
潮溜まりの外にも潜って丸い形のウニを集めていた。
あれはバフンウニの仲間になるのかな?
3人共、確保が面倒な魚は対象外としたらしい。
一方私はというと、カワハギっぽい魚が何匹かなんとか釣れたくらいで、足元の小さな潮溜まりに確保してある。
どちらかというと釣りよりもマップを参考にしながら、ガチ勢のサナとミツキを、それとなく獲物のいるところに誘導させるのを優先していたせいだろう。と、強がってみる。
とりあえずこの魚は、あとでサナにお刺身にでもしてもらおう。
▽▽▽▽▽
「2日続けて、お外でご飯なんて、なんか変な感じしますね。」
私が釣った魚と自分で採ったアワビ風の貝を捌きながら、サナがそう話しかけてくる。
水着の上にいつものエプロンという姿なのだが、正面から見ると裸エプロンに見えて落ち着かない。
「ずっと迷宮に籠もりきりよりは健康に良さそうだけどな。はい、あーん。」
「あーん。」
サオリさんに習って、生ウニをサナに差し入れる。
あとでタコを茹でているミツキにも差し入れしに行こう。
飲み物を買いに行っているサオリさんがちょっと心配だが、シルバーのタグを見えるようにぶら下げているし、一応、薙刀も持っていって貰っているので、そうそう絡んでくる相手もいないとは思う。
いやー、でも、今日のサオリさんはセクシー一番星だから、どうかな?
ミツキッス!
ウニはこの昆布を食べている丸いヤツの方が美味しいッスよ!
なんかこう、探しているとテンション上がってくるッスね!
次回、第三一四話 「船」
タコが、タコが離れない。離れないッス。




