第三一一話 「港町」
最初の投稿から今日で1年と記念日なので臨時更新です。
「海が見える良い部屋ですね。」
サオリさんが窓際で海風に揺れる髪をかき上げながらそういった。
その姿がドラマかCMのワンシーンのように絵になっている。
今は行商家族から紹介された民宿の2階の部屋に陣取っているところで、ここは4人用の小さな部屋だが、民宿自体は漁港も市場も近く浜辺もそう遠くない場所なので悪くない立地だ。
気の早い人がパラパラともう海水浴に来るそうで、もう私たち以外にも、もう何部屋かが埋まっているそうな。
地元の人も水を扱う仕事人は薄着なので見分けがつきづらいが、そういやこの民宿に着くまでにも何組か水着っぽい人たちがいたな。
エグザルの街では夜は風が吹くとまだ肌寒いので春くらいの季節だと思っていたが、一応、こちらの世界的には初夏になるのだろうか?
そもそも四季があるのか?という話もあるが、少なくてもこの港町は海辺で日差しを遮るものがないためか、海からの照り返しのせいか、エグザルの街よりは気温が高い。
「お父さん、水着が欲しいです。」
「実は前から狙ってたんスよー。」
お使いでサンダルを買いに行っていたサナとミツキが戻って来た。
昼食前だというのに、それぞれの手に焼きいかと焼きホタテ?串があるのはご愛敬だ。
特性【ビジュアライズ】で淫魔法【コスチュームプレイ】の選択画面をみんなに見えるように広げ、こうして水着選びの時間が始まった。
▽▽▽▽▽
最終的にサナが選んだのはパステルピンクの水着で、上はたっぷりのフレアで胸の小ささを補いつつ、細目のストラップで地味に露出の高いビキニスタイル。
道を歩く際とかは、それの上に肩開きデザインの白いTシャツを羽織る恰好だ。
下はボックスパンツが一体化したデニム柄のスカパンなので、Tシャツを着ていれば、夏らしいティーンズスタイルといったところだろう。
ミツキが選んだのは直球のビキニの上下。
白とスカイブルーのストライプが褐色の肌に映え、かなり攻めた感じだ。
流石に露出が高すぎるので下にデニムのホットパンツを履かせ、上は白のパーカーでカバーしたら、なんとなくサナとお揃い感が出てしまった。
一方サオリさんもグリーンのビキニの上下だが、クロスワイヤービキニというものらしく、正面から『X』字に見える布の下がウエストを引き締め、上がバストのボリュームを出すというセクシーなスタイルだ。
下もシンプルな同色のショーツだが、その上にビキニより淡い色の同色ロングパレオでカバーしているのが、逆に女性らしいラインを強調して色っぽい。
ちょっとセクシーすぎるので、今はロングパレオをワンピース風に巻き直して、露出を抑えてもらっている。
全員、ほぼビキニスタイルなのは、おっぱいアベレージが高すぎるこの世界の標準水着自体がビキニスタイルだからだ。
布の伸縮性や縫製技術の関係か、ワンピースだと胸につられて全体が太く見え、スタイルが悪く見えるためらしい。
ちなみに同じく技術的な理由で、今回選んだ水着の色も基本単色だ。
この世界では花柄などの凝ったデザインのものは、そのように最初から織るか刺繍するかしないとならないので、気軽に手に入るものではないらしい。
そういう意味ではミツキのストライプのビキニは布を組み合わせないと出来ないデザインなので高級品の分類になるのだろう。
同じく高級品の眼鏡といい、お高い女の子に見えたりするのだろうか?
3人とも、それぞれの体型のジャンルでスタイルが良いので、何を着ても似合うのだが、褒めているうちに何故か全体的にセクシーよりになってしまっている。
ちなみに私はサナの水着を性別反転して着ているだけなので、デニムカラーのサーファーパンツの上に白のTシャツといういで立ちだ。
「それじゃ日が高いうちに浜辺に行くッスよ!」
「おー!」
いやいや待て待て、まだちゃんと昼ご飯食べてないのだがから、食べるか買うかしてから向かおう。
▽▽▽▽▽
「時期が早いのか、ほとんど人がいませんね。」
浜辺で水をかけあって遊んでいるミツキとサナを見ながら、サオリさんが呟く。
「こちら側の海水浴場は岩場も多いですし、北側の方が砂浜も広く人気だそうですよ。」
ビーチパラソル代わりに淫魔法【ラブホテル】で出した、ロッジタイプのテントを調整しながらそう答える。
コンロが付いているタイプがあって良かったな。
結局、あの後、ミツキ達が買い食いをした飲食店まで降りて、持ち帰りで焼きそばなどを買って、この南側の海水浴場にやってきた。
両側を岩場に囲まれているような形のそれほど大きくない砂浜で、民宿のある街場からは少し歩いた上で、結構な高さの階段を降りていくような立地にあるので、あまり人気がない場所だそうな。
サナです!
海なんてお義父さんがまだ元気だった時以来です。
今日はお父さんやお母さん、ミツキちゃんと来れて嬉しい!
次回、第三一二話 「国境」
この水着も、お父さんが褒めてくれたので、お気に入りになりました。




