第二七二話 「責任」
サオリさんの赤く上気した頬、トロンとした目に責任感を感じつつも、当初の予定どおり手鏡で角の仕上がりを見てもらう。
簡易宿泊所の部屋では明かりも不十分なため、ハンディライトも用意した。
いずれも淫魔法【淫具召喚】で用意したものだ。
「あ、凄いです。まるで成人前みたいな角の艶…。手触りもこんなに滑らかに…少女の頃に戻ったみたい…。」
サオリさんの今の表情を例えるなら初めて本職に化粧をしてもらって、「これが私…。」みたいな驚きと喜びの表情といったところか。
「こんなに綺麗になるなんて…レン君、ありがとうございます。」
思ったよりテンション高く喜んでくれているサオリさん。
「喜んで貰えたようでなにより。」
「鬼族、特に白鬼族は角の大きさと美しさが美醜の基準らしいッスよ?」
ミツキがそう耳打ちしてくれた。
「ほら、見てみてサナ。こんなに。」
「わぁ、お母さん綺麗…。」
正直なところ感覚的にはサオリさんやサナの気持ちはわからないのだが、鬼族的には凄いテンションが上がる事だったららしい。
こんなに喜んでもらえるなんて、やってよかった。
と、先程のまでの気まずさを誤魔化す。
「ああは言ったッスけど、角も耳もパパにされるなら、みんな嫌じゃないし、むしろ嬉しい事ッスから、これからも気軽に『愛情表現』して欲しいッス。
サナちーじゃないけど、気にしすぎて止めちゃ寂しいッスよ?」
角の色艶にキャーキャーはしゃいでいる母娘を尻目にミツキがそう忠告してくれた。
「約束したからね。止めはしないけど…」
「しないけど?」
「積極的に誘われていると思ってたのが、結果的に積極的に誘ってしまっている側だった。と罪悪感が…。」
「責任取って。なんて言わないッスから、気にしない気にしなーい。それに…」
「それに?」
「ぶっちゃけパパ、癖になってるッスよね?無意識に触ってることもあるし。」
「あー。」
それは否定できない。
▽▽▽▽▽
「いつも思うけどミツキの尻尾って、真っ白でポワポワで可愛いよね。」
サナ、サオリさんに続いてラブホテルの部屋の扉に入っていくミツキのお尻の上で、ぴょこぴょこと動く尻尾に目が止まる。
「むふふー、パパもお目が高いッスねー。最近自慢の尻尾なんスよ。」
プリプリとお尻を振ってその上で踊る丸い白い尻尾をアピールするミツキ。
よく見ると丸というより大葉のように先っぽだけがちょっと尖るように毛が伸びている。
「兎人族的には尻尾の毛艶が良くて、膨らみの大きさがお尻とバランスが取れていて、なるべく丸いのが美人の条件の一つなんスよ。」
そういってミツキはお尻を突き出すようなポーズをとる。
エロいというより可愛らしいイメージが浮かぶのはニコニコ顔のミツキの表情のせいだろうか?
どうやら褒められて嬉しいポイントらしい。
「これもパパのおかげッスよ?具体的には、この部屋の魔法のお陰ッス。」
「あー、手入れがしやすいのか。」
「そうッス!特にアタシは白尾ッスから普通はこんなに綺麗な尻尾の色を維持するのは難しいんッス。
尻尾の形はもっと難しいッスね。」
ミツキの話によると、本来の尻尾の形は、指を揃えた手を甲側から見て親指を隠したような形らしい。
これをいかに真ん丸にするか?というのがオシャレのポイントだそうな。
「そうはいっても真ん丸にするのは難しいので、普通はお祝いの席くらいでしか丸くはしないんスよ。」
ところが、ラブホテルに備え付きの各種アメニティ、それからサナの手伝いもあって今のほぼ丸い形を維持出来ているのは兎人族の女的には凄い贅沢な事だとミツキに熱弁された。
「いろんな価値観があるもんなんだなぁ…、そうだ、ミツキ、もうちょっとお尻高く上げて?」
「ん?どうしたッスか?お手入れはしてるッスけど、匂いを嗅がれるのは、ちょっと恥ずかしいッスよ?」
人をなんだと思ってるんだ。
というか、恥ずかしいだけで断りはしないのかい。
対象の髪型というか髪そのものを変える効果と回復力をコントロールする効果を持つ淫魔法【トリコフェリア】を試しにミツキの尻尾にかけてみる。
お、髪の毛というか、毛全般が効果対象なんだな。
ムダ毛処理とかにも便利そうだ。
魔法で元のミツキの尻尾よりも気持ち大きめで真ん丸に尻尾を整えてみた。
「こんな感じでいいのかな?」
「へ?え?何したッスか?」
「髪型変える魔法があっただろ?あれでミツキの尻尾をさっきより丸く整えてみたんだ。
お風呂場にでもいって見ておいで。変だったらまた調整してあげるから。」
「!?ホントッスか?ちょっと見てくるッス!」
ミツキッス!
白尾だとどうしても汚れが目立ちやすいのと、あまり洗えなかったりブラッシングが出来なかったりすると、毛が広がらずに尻尾が膨らまないんス。
なので普段はあまり毛を広がらせずに本来の尻尾の形を生かしたフォルムにしておくのが一般的ッスね。
次回、第二七三話 「おっぱいの神様再び」
色白だと羨ましがられるけど、お手入れが大変なのは肌と一緒らしいッス。
肌の方がアタシ、全然ピンとこないッスけど。




