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第二六話 「ウェット&メッシー」

 「そういや腹減ったな。」

 聞こえなかったフリをしつつ、立ち上がりテーブルの上のクリアファイルを手に取る。

 ホテルのサービスなどなどがファイルしてあるやつだ。


 ピザや寿司などの出前やホテル自体の飲食サービスを見ながら、近くにある電話の受話器を取ってみるが何も聞こえてこない。

 そりゃまー、さすがに出前は無理だよな。


 試しにテレビもつけてみるが電源は入るものの何も映らない。

 電気や水道はどうしてるのか分からないが、基本的に()()()()()()()()()()がする。


 店の名前や住所から繋がっていたとしても外は北海道の旭川のようだ。

 「それ何ですか?本?」


 ページを捲っているとサナがファイルを覗き込んで「すごく上手な絵ですね。」と感想を漏らす。

 写真の説明をすると長くなりそうなので省略する。


 「お父さんの世界の文字なんですかこれ?」

 「ああ、そうだよ。」

 「なんて書いてあるんですか?」

 「コスプレ無料レンタル中」


ピコン!

>淫魔法【コスチュームプレイ】を得た


 いや、今は欲しいのは服より飯なんだよ。


ピコン!

>淫魔法【ウェット&メッシー】を得た


 違う。メッシーじゃなくて飯だ。

 今必要なのは女の子を濡らしたり汚したりして楽しむ魔法じゃない。

 …いや、待てよ?

 メニューの魔法欄から淫魔法【ウェット&メッシー】を選択すると、案の定、カタログ状に何を呼び出すかの選択一覧が視界に出る。


 水、オイル、ローション、金粉、銀粉、泥などの次にケーキや果物、お菓子のような食べ物も数々表示されている。

 なんだっけ?フードクラッシュってジャンルだっけ?

 とりあえず食べ物も出せそうだ。

 召喚時間は相変わらず今から3時間か22時から10時の期間召喚のどちらかだ。


 なんとなく消化途中で時間が終わって栄養にならなそうな気もする。

 カロリーだけでも食い逃げが出来ればラッキーだな。


 とりあえず部屋に備え付けの電気ポットのスイッチを入れてお湯を沸かす。

 戸棚からコーヒーセットを二組出して、カップとソーサーを別に並べ、ソーサーにはティースプーンを添える。


 一応、紅茶の方がいいかな?なんとなくサナは緑茶の方を好みそうな勝手なイメージがあるが。

 紅茶のティーバッグをカップに入れ、お湯が沸くのを待っている間にサナに声をかける。


 「サナ、魔法使うから淫魔族の身体に戻るよ。」

 「えー。」

 えーじゃない。


 淫魔の身体と人族の身体はゲージ共有してないのでこのままでは魔力が少ないのだ。

 逆に言うと淫魔の身体の方はメインにドレインしてないとはいえ、デミオークから吸いまくったおかげでまだまだ魔力は潤沢だ。

 体力をメインに吸っている時でも体力:魔力:精力は9:3:1くらいの割合でドレインすることが出来ていた。

 実際には自分の体力等に変換されるのは、そのドレイン量の更に1/3くらい分くらいだが。


 淫スキル【淫魔】で淫魔の身体に戻ると、早速、淫魔法【ウェット&メッシー】を使い、それぞれのソーサーに苺のショートケーキとチョコレートケーキを召喚する。


 「ご主人様は移送魔法も使えるんですね。なんですかこれ?お菓子?」

 サナは興味津々だ。

 あと淫魔の身体の時は前と同じくご主人様呼びらしい。

 お湯が沸いたようなので紅茶を入れ、サナに「好きな方選んでいいよ。」と声をかける。


 「じゃあこっちの白くて可愛い方を。」

 苺のショートケーキの端をティースプーンで切るとサナはその口に運ぶ。

 サナの口に対してちょっと大きく切り過ぎじゃない?と、一瞬思うが口に入れた途端、サナが仰け反ってベッドに倒れる。

 テーブルの後ろベッドで良かったな。

 ちなみに私は反対側のソファーに座ってる。


 「お…」

 「お?」

 「美味しーーーーい!柔らかくて甘くて軽くて果物の風味もあって凄い美味しいです!」

 テンションが高い。

 「ケーキっていうんだよ。それは苺のショートケーキ」

 「けえき?はー、ご主人様の世界には美味しいものがあるんですね。」

 こっちの世界には無いんだろうかケーキ?


 「こっちのも味見して見るかい?こっちはチョコレートケーキ。」

 「ちよこれいとけいき…。」

 サナは身構えつつチョコレートケーキにティースプーンを伸ばしていった。

 

 なんだかんだで見てて飽きないなこの娘


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