第二六七話 「本番」
『パパそろそろ着くッスよ。』
『付近にも経路にも何もいないから、そのまま最初のルートで連れてきていいよ。』
『了解ッス。』
【隠密行動】スキルを持ったミツキがモンスターの釣り役になり、私がメニューからマップを見ながらミツキを誘導するというスタイルにもだいぶん慣れてきた。
およそ20mのレーダーを頼りに自分1人で釣ってた時より、格段にリンクや巻き込み、飛び出し事故が減っているのは良いことだろう。
そんな事を考えているうちに、デミゴブリン5匹引き連れたミツキが私の横を駆け抜けていく。
「ミツキ、お疲れ。」
入れ替わりの様に淫魔法【脱衣の心得】をデミゴブリンの一団に掛けるとともに、その間をすり抜けるように駆ける。
デミゴブリンの貧相な腰布が魔法の効果で落ちると同時に、種族スキル【フェロモン】と【テクニシャン】、淫魔法【加虐の心得】で命中率をブーストした【精技】が、デミゴブリンのデミゴブリンを的確に捉え、種族特性【ドレイン】がその体力の9割を次々と奪い気絶させてゆく。
デミゴブリンの間を駆け抜けた後、そのまま遅れてホールに到着したデミトロールに退治した。
「行きます!お父さん動かないで。」
そのタイミングを図ったかのようにサナが発動させた魔法により、地面から石のトゲのようなものが3mくらいの道路上に次々と生え、気絶していたデミゴブリンが惨殺さていくとともに、デミトロールの足を縫い付け、悲鳴を挙げさせる。
サナのランクを上げた【魔力操作】により、私が立っている場所だけは無傷だ。
術者を探すかのように睨みつけるデミトロールの視線を遮るかのように、魔法をレジストしたのか生き残ったデミゴブリンをその薙刀で舞うようにトドメを差しながらサオリさんが接近してくる。
サオリさんの移動に合わせてサナの魔法が解かれていくのも息があっている。
デミトロールが一瞬、サオリさんに目を奪われた瞬間、既にミツキはサオリさんが出した2枚の【金剛結界】を足場にデミトロール後方から頭上に飛び上がり、その額の魔素核に種族スキル【男根のメタファー】で【ドレイン】を付与させた短剣を突き立て、体力を根こそぎ奪っていた。
「ホントにみんな強くなったなぁ。」
デミトロールが気絶して倒れるまでの間に、淫魔法【トリコフェリア】ででデミトロールの自己再生を止めてから、槍を数度突き立てトドメを差す。
流石に体力が多いので1度では無理だ。
相手の体力の計算の仕方が分かっているので、この辺りは以前に比べて油断はない。
サナはデミゴブリンを倒した
>10ポイントの経験値を得た
>10ポイントの経験値を得た
>10ポイントの経験値を得た
サオリはデミゴブリンを倒した
>10ポイントの経験値を得た
>10ポイントの経験値を得た
レンはデミトロールを倒した
>110ポイントの経験値を得た
「思ったより余裕だったッスね。」
「ランク3が一体だけだったしね。」
「いえ、普通、レベル35が1体とレベル25が5体は、この人数じゃ狩らないですよ?」
サオリさんが昔のミツキみたいな常識的な事を言っている。
今は午前中の調整も終え、午後からの新迷宮5階での狩りも余裕になったことから、新迷宮の6階での狩りを試しているところだ。
サオリさんが1レベルアップした後、トドメを差す回数を調整して、私以外の全員をレベルアップ寸前の状態に留めてある。
ちなみに私のほうは【ドレイン:経験値】のおかげでレベル34まで上がっている。
半日で4レベルアップとか、初期のサナ並だ。
だって倒す経験値より吸い取る経験値の方が倍以上多いのだもの。
「お父さん、あとあたし達、どれくらいでレベルあがりそう?」
「あー、この辺りの敵なら、あと1戦したら上がっちゃいそうだな。」
「んじゃ、今日はここまでッスね。」
「調子が出てきたところだから、勿体無いけどね。」
「アタシやサナちーにとってはラストチャンスっぽいッスからね、有効に使った方が良いッスよ。」
ミツキの言うラストチャンスというのは、『レベル上げ』に伴うランク差ボーナスの事だ。
サナもミツキもレベル29なので、敵を倒してレベル30になるよりも、『レベル上げ』でランク差ボーナスを貰いつつレベル30になった方がレベル31への早道だという話になったのだ。
主にミツキの発案で。
敵を倒した時に貰える経験値は、パーティーの1番レベルの高い者に合わせられる関係で、【ドレイン:経験値】でモリモリレベルが上がっていく私が、皆の所得経験値の足を引っ張っている形なので、しょうがなく賛同した。
ミツキが発案して、サナが同意して、私が賛同して、サオリさんが「えー。」という、いつものパターンだ。
実際のところ、今戦ったデミゴブリン相手にサナやミツキがランク差ボーナス分の1,000を稼ぐとなったら、100体倒さなきゃならないと考えると、しょうがないのだ。
私を除いたパーティーで稼ぐという選択肢もあるのだが、武器に種族スキル【男根のメタファー】で【ドレイン】を付与させないと、やっぱり戦闘は厳しく、付与させると今度は私も攻撃に参加したものとみなされて所得経験値が減るという状態なので、安全と効率を考えると『レベル上げ』安定となってしまう。
中々清い関係になれないものだな。
サオリです。
『勇者はレベルが上がりやすい。』という話を、昔お母様に聞いたことがありますが、勇者は鑑定能力を持っていることが多い事が由来だったと思います。
自分の強さに見合った相手と戦えるので無駄なくレベル上げが出来るためだったと。
次回、第二六八話 「総力戦」
レン君の場合は、それだけじゃない様子なので、レベルが上がりやすい事自体がレン君の勇者としての能力なのかしら?




