第二五八話 「選択」
「本当にやるの?」
うんうん。と、ドアの陰から頷くサナ。
そうはいっても、淫魔法【睡眠姦】の効果中はそれくらいじゃ起きないはずだから起床時間とカウントを合わせなきゃ。
3、2、1、チュ
「!………お、おはようッス、パパ…。」
「おはよう、お姫様。」
寝起きのせいか、それともキスで起こされたせいか、ポーっとした顔をしているミツキ。
ちゃんと目を覚ますには刺激が足りなかったかな?
そっと、うさ耳の根本を軽く握り、親指でモフモフ部分をモフモフする。
「あう。起きてるッス、起きてるッスから!」
「寝たりなかったりしていないかい?」
「大丈夫ッス。頭スッキリしてるッスよ。アタシだいぶ寝てたッスか?」
ベッドの上で両手を天井に向け、大きく伸びをするミツキ。
白いキャミソールに小麦色の肌が映える。
「移動も含めて1時間半ってとこかな?」
「え?思ったより寝てないッスね。」
「眠りの魔法を使ってみたんだけど、やっぱり安眠というか快眠効果があるのかもしれないな。」
「あー、前にサナちーに使った奴ッスね。へー。」
天井に手を伸ばした格好のまま、なぜか斜めになっているミツキ。
と、思ったら、そのまま私の首に手を回すように抱きついて来た。
「むふふー。チューで起こされるなんて物語のヒロインみたいだったッスー。ときめいちゃったッス…よ…?」
ご機嫌な様子だっただったミツキの動きが急に止まる。
『『あ。』』
角度的にサナと目が合ってしまったようだ。
▽▽▽▽▽
「それでは行ってきます。」
「はい、お気をつけて。」
「パパ、寂しかったらいつでも合流していいッスよ?」
「大丈夫大丈夫。たまには一人でゆっくりするさ。」
「お母さんもミツキちゃんも早く行かないと買い出し間に合わなくなっちゃうよ?
それじゃ、お父さん行ってきます。」
「はい、いってらっしゃい。」
夕食の食材の買い出しに3人を送り出して、珍しく一人お留守番をすることになった。
サナの帰依の儀式の後を考えたらミツキも「パパ分が切れたッスー。」とか言って部屋に残るかと思ったが、女同士で買い出しに出かける方を選択したようだ。
なぜ留守番をすることになったかというと、サナが晩御飯の内容をサプライズしたいと言ったから、というのが1つと、もう一つはミツキを中心とした現戦力の把握をしようと思っていたからだ。
淫スキル【ナルシスト】や、メニューのステータス経由なら淫魔の契りで眷属化している3人のステータスを、おそらく本人以上に把握することが出来る。
サナが修験者に、ミツキが野伏になり、戦いの幅が大きく広がっているだろうから、ここらで一度、それぞれが出来る事を整理しておきたかったのだ。
とりあえず最初はミツキのステータスを確認。
職業が【野伏】に変わっており、敏捷がBからAへ、器用がAからA+に上がり、スキルも【神聖魔法:兎人族】、【隠密行動】、【相対回避】が、それぞれランク2で追加されていた。
ゲージも体力ゲージが2本、魔力ゲージは3本まで増えている。
【相対回避】は元々持っていた【絶対回避】の上位スキルらしい。
文字だけだと効果が下がっているように感じてしまうが、絶対回避に比べ、効果対象と効果内容が選べるようになっている。
ミツキは前に【絶対回避】は大雑把に言えば身体が思ったとおりに動くスキル。という言い方をしていたが、前に検証してみた結果、本人の器用のステータスを倍加する能力だと分かった。
【相対回避】でも同様の効果も引き継いでいる。
ちなみにサナの【感覚強化】も同じように感覚のステータスを倍加するスキルだ。
あと地味にサオリさんの【金剛結界】も効果中はサオリさんの耐久力が倍加しているので、試してはいないもののサナの【瞑想結界】も、おそらく効果中は精神力が倍加すると思われる。
それはさておき、器用のステータスを倍加させる能力を他者にも与えられるのが【相対回避】の効果の一つだ。
厳密にいうと、他者の器用のステータスをミツキの器用のステータスに合わせる効果がある。
基本的にはバフ能力だが、裏技的な使い方としてデバフとしても使えるだろう。
例えば自分よりレベルが高く、ステータスも高い相手の器用を自分と同じに出来るのだ。
【相対回避】になった事により、器用のステータスを倍加だけじゃなく、半減出来るようにもなっているのは、このためだと思われる。
あまり低くしすぎると攻撃が当たらなくなりそうな上に、通常は半減で1回、相手に付加で1回精力ゲージを使う大技なので、普通は使うことすら無理なのだが、事前にかけておくと精力が0になった時にゲージ1本分回復する淫魔法【回春】があるので戦略に盛り込むことは可能だろう。
実際には試してみないとなんともいえないけどな。
ミツキッス!
パパにしては珍しい行動だと思ったらサナちーの差し金だったんスね!
正直、感謝するッス。
第二五九話 「エロゲ」
いやー密かに憧れていたシチュエーションだったんスよー。




