第二三話 「トランスセクシャル」
>種族特性【トランスセクシャル】
自身の性別を逆転させる。またはベッドの上等での性転換希望宣言を受理し性別を逆転させるスキル
使いづらいスキル再び。
>淫スキル【淫魔】
ベッドの上などプレイエリアで淫魔に戻るスキル
なんだプレイエリアって。
『戻る』スキルってことはあくまで淫魔がベースではあるんだな。
一応ログを遡ってみると、このラブホ空間に入った時に『プレイエリア内です』の表記が出てた。
あープレイってそういう…。
それはさておき
「サナ。」
「はい。」
泣き止んだ様子のサナに語りかける。
「私の勇者の力って、一定のキーワードか何かで次々新しい力を得る。といったものみたいなんだけど、今、それで元の身体に戻れそうなスキルが手に入ったので試してみてもいい?」
「え?ホントですか?」
「幻滅しないでくれると嬉しいんだけど…。」
種族特性【トランスセクシャル】を自分に使用する。
ビクンという衝撃とともに、おっぱいがみるみる小さくなり背が伸びていくような感覚、身体が作り変わるようなそんな感覚が身体中を走る。
時間にしては一瞬だったかもしれないが、小麦色で豊満な胸は胸板に変わり、細くしなやかだった指も節の目立つ男の手に変わっている。
股間には慣れ親しんだ挟まる感覚。
元に戻った!
「お義父さん…」
先程の話を引きずっているのか元に戻った私を見てサナがそう呟く。
「もしかして私、サナお義父さんに似てたりする?」
サナはゆっくりとうなずく。
「顔というか雰囲気が似てる感じがします。その、今の困ったように笑う顔とかも。」
「そっか、実はね、私もこどもが生まれていたら丁度サナくらいの年頃だったんだよ。」
「生まれていたら…。あの、死産か何かだったんですか?」
「ああ、こどもとも女房とも死に別れだ。」
死産を切っ掛けに妻はノイローゼに陥り半年後に自殺してしまった。
二回目に家族を無くした瞬間だった。
妻の実家からは責められ、縁を切られてしまう。
父親を失うのはこれで二回目、家族を失ったと感じたのは三回目だ。
「だからそうやってお父さんって呼ばれると、なにか少し嬉しい感じがするよ。」
サナはまた顔を伏せ、何か考え込んでいるようだ。
「ごめんね、つまらない事を聞かせてしまったね。」
自分の中では消化しきってしまった心の傷だが、聞く方からしたら重たい話だったろう。
少なくても今話すような話ではない。
ついつい作り笑いをしてしまう。
不意にサナに抱きしめられる。
「そんなに辛そうな顔で笑わないでください。」
胸で、両腕で顎で、全身を使って抱きしめられる。
胸にあたる右耳にサナの心臓の鼓動が響く。
「お父さん」
「え?」
「そう呼ばれたら嬉しいんじゃなかったんですか?お父さん。」
抱きしめる力を強くしてサナはそういった。
「私もまたお義父さんに会えたみたいで嬉しいです。」
なんとか励まそうとしてくれているらしい。
「…そっか、サナがそういってくれるなら私も嬉しいよ。」
サナはそっと腕を離し私の手を取り、ちょっと何か考えるように目を伏せると意を決したように私の目を見てこういった。
「ご主人様、私の故郷に戻るまででいいですから、わたしと親子ごっこをしませんか?『お父さん』って呼ばせてください。」
やっとそろそろキーワード回収できそう。




