第二三八話 「成功」
「パパ、今日は積極的だったッスね。」
「嫌だった?」
「ううん、嬉しいッス!」
晴れやかな笑顔を見せるミツキ。
「また今度、兎人語のミツキと遊びたいな。」
「うー、それは考えておくッス…。」
気まずそうにしてはいるが、嫌ではないような感じだな。
二人きりの時なら…みたいな呟きが口から洩れているのに本人は気づいてないらしい。
結局、お姫様だっこの後、お風呂でもう1回戦して、今は改めて茶兎族の種族衣装(風)を淫魔法【コスチュームプレイ】にプリセットして外に出るための準備をしているところだ。
とはいえ、ミツキの髪が乾いてしまえば、同じく淫魔法【コスチュームプレイ】で一瞬なのだが。
そんな訳で、ミツキの髪をドライヤーで乾かしている。
うさ耳がある関係で、口でうさ耳を固定して、左手でドライヤーを使い、右手でブラシ、みたいな感じになり、ブラッシングがテクニカルになるのが意外と楽しい。
いや、うさ耳を固定しなくてもブラッシングは出来るのだが、これをするとミツキが、くすぐったそうな笑顔になるので、その顔を見たさにやっている感はある。
「ミツキー。」
「なんスか?」
「いつも頼りにしているよ。」
「…はいッス。」
「いつもありがとう。」
「はいッス。」
「これからもよろしくね。」
「はいッス!」
満足げな笑顔のミツキが首を後ろにそらすようにして、こちらを見つめている。
ちょうど髪の毛も乾いたところなので、ドライヤーとブラシを置き、後ろから両手で頬を押さえるようにして、ミツキに口づけた。
「パパにチューしてもらうの好き。」
「うさ耳とどっちがいい?」
「両方―。」
兎人語でそう話すミツキのうさ耳をハムハムして、改めて向かい合いキスをした後、淫魔法【コスチュームプレイ】で身支度を整えてラブホテルの部屋を後にした。
▽▽▽▽▽
「おかえりなさい。」
「ただいまッスー!お!あとちょっとッスね。」
サナとサオリさんが『帰依の儀式』をしている『鬼の間』まで戻ってくると、サナを取り囲むように円筒形にくるくると回っていた紅白の光の玉も、紅の玉が残り3つのところまで減っていた。
「サオリさん、お疲れ様です。順調だったみたいですね。」
「ええ、レン君がいってたとおり、サナには魔法の素養があったみたいです。
特に紅い玉の方に入ってからは習得の速度も上がっているので、予定より大分早く終わりそうですよ。」
部屋の護摩壇に追加の護摩木をくべながらサオリさんがそう説明してくれた。
ミツキは少し離れたところで自分の護摩壇を抱えたままサナの様子を興味深そうに伺っている。
「護摩壇を買ってあげたのですか?」
「ええ、よく聞いたら大事なものらしいので。
サナにも買ってあげれば良かったのに…すみません。」
「いえ、いいんですよ。鬼族は古いものを継続して使う方を好みますから、気にしないでください。
それにしても…ミツキちゃん、明るい顔になりましたね。」
そういってサオリさんはなぜか満足そうな笑顔を向けた。
「成功したみたいね。」
「え?何がですか?」
「いえ、なんでも。
さあ、あと2つです。儀式が終わった途端、倒れることもあるので、レン君はサナの側にいてあげてください。」
「はい、わかりました。ミツキ―、護摩壇置いて、そっち側にサナが倒れないように控えてて。」
「了解ッスー!」
大事そうに護摩壇を部屋の隅に置き、ミツキがサナの横に控える。
いや、そんなに大げさに構えなくても大丈夫だと思うぞ?
▽▽▽▽▽
最後の紅い光の玉がサナに吸い込まれてから数分後、サナを取り込んでいた大きな光が、まるで鼓動するように大きさを変え、その光も点滅まではいかないものの、その光の量を変えている。
それを待っていたのか、サオリさんの呪文が数時間ぶりに再開され、『授法の儀式』の時のように大きな光は石像に戻っていった。
その後、しばらくの間、呪文が続き、最後にサオリさんが、お参りの時の一連の動作をした。
これで終わりなのかな?
と、思った瞬間、立っていたサナの膝が落ちる。
サオリさんに目配せをすると、大丈夫だと頷かれたので、ミツキと二人で両側からサナの身体を支えたが、中々目を覚まさないので、とりあえずそのまま部屋の畳の上に寝かせておく。
「流石に長時間の儀式だったので、しばらく目を覚まさないかもしれません。」
「サオリさん、お疲れ様でした。ミツキ、サナは私が見てるからサオリさんの手伝いをしてあげて。」
「了解ッスー。」
サナを膝枕というか胡坐枕にして頭を撫でる。
少し汗をかいているのか、いつもより髪の毛がしっとりとしていた。
「お疲れさま。サナ。」
サオリです。
なんかミツキちゃん、凄いスッキリした顔してるわね。
レン君に買って貰った護摩壇を凄い大切そうに扱っているのが可愛らしいわ。
次回、第二三九話 「特別なもの」
さすがにちょっとお腹がすいてきたかも…。




