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第二三二話 「餅は餅屋」


 ミツキが石畳の上で仏壇に向かい一礼をする。


 その後、右手の人差し指を左胸の前で1回、右胸の前で1回立て、片膝をつき、指を組んで頭を下げる。


 鬼族とくらべ洋風な感じがするな。


 その後は立ち上がり1礼してから板の間に戻ってきた。


 「兎人族だと、こんな感じッス。」

 「よし、覚えた。」


 ミツキと入れ替わりで石畳へ立つ。

 後ろにはサオリさんとサナも並んで立っている。


 ミツキに習ってお参りをし、振り返ると何故かミツキが泣いていた。


 「どうしたの?」

 そのまま両手でミツキの頭を包むように抱きしめた。


 「いや、なんでもないッス。ただ、なんか、もう独りじゃないって思ったら、勝手に涙が…。」

 そのまま、ミツキが落ち着くまで抱きしめ、頭を撫でていた。



▽▽▽▽▽



 「いや、サナちー、もう大丈夫ッスよ?パパもママさんもお騒がせしたッス。」


 私の次はサオリさんにハグをされ、そして今はサナに抱きしめられているミツキ。


 「落ち着いた?ミツキちゃん。」

 「いやー、幸せすぎて逆に落ち着かないッス。」


 「はは、なんかわかるよ。」

 そういってもう一度、ミツキに向かって手を広げる。


 なんだかんだいいつつ胸に飛び込んでくるミツキだが、なぜかサナまで飛び込んできたので二人共抱きしめる。


 「こんな風に心を許して人のぬくもりを感じられるのは、幸せな事だと思うけど、正直、私もまだ慣れないな。」

 「うふふ、少しずつ慣れていけばいいんですよ。」


 そういいながら後ろからサオリさんが優しく抱きしめてきた。

 温かいし柔らかい。


 「これ、動きたくなくなりますね。」

 「そうッスねー。」

 「駄目ですよ?儀式のお買い物にも行かなきゃならないんですから。」


 あ、サオリさんが離れてしまった。

 それを合図にサナやミツキも腕の中から抜けていく。


 手持ち無沙汰に広がった両手を胸の前でパンと叩き、

 「それじゃ、早速、買い物に行こうか。」

 と、3人に提案した。



▽▽▽▽▽



 「とはいえ、サオリさんにお任せなんだけどな。」

 「いやー、餅は餅屋ッスよー。」

 「ほんと、美味しいね。」


 裏門前の屋台で売っていた焼き餅を買い、それを摘みながらサオリさんの買い物を眺めている。


 今後の予定はサオリさんの『授法じゅほうの儀式』を最初にして、その後、サナの『帰依きえの儀式』。


 おそらくこれが時間がかかりそうなので、日を改めてミツキの『帰依きえの儀式』という順番で行う予定だ。


 サオリさんにはそれぞれの儀式で使う祭具や供物などを選んでもらっている。

 ちなみに西本社でも東本社でも少数種族用に本体が消耗しない護摩壇などの祭具はセットでレンタルしてくれるそうだ。


 「おまたせしました。」

 サオリさんが荷物を下げて戻ってきた。


 「お疲れ様です。はい、あーん。」

 「え?あ、あーん…」


 サオリさんの口に焼き餅を咥えさせ、代わりに荷物を預る。


 「あ、美味しい。お餅食べるのも久しぶりね。」

 口に揃えた指を当てるようにしてモグモグしているサオリさん。


 荷物はやしろに来る前にお店で見た修験者用祭具一式のほか、野菜類やお酒、乾物のたぐいもあるな。


 神社へのお供えみたいだ。


 「これってミツキの時も同じものでいいんですか?」

 「ミツキちゃんが目指すのは『野伏のぶし』ですから、またちょっと供物が変わります。お肉寄りになるというか…。でも、ちゃんとこの辺りのお店で揃いますから大丈夫ですよ。」


 そういってミツキに向かって笑顔を向けるサオリさん。

 めっちゃ頼りになる。


 「ママさん、ありがとうッス。」

 ミツキが別の味の焼き餅をサオリさんに、あーんさせてる。


 「あらあら、ありがとう、ミツキちゃん。」


 「仲が良くてなによりだな。」

 「うんうん、なによりなにより。はい、お父さんも、あーん。」

 うん、本当に美味いな、この焼き餅。



 サオリです。

 流石、迷宮で有名なエグザルの街。

 こんなに亜人族用の祭具が揃っている街は初めてです。


 次回、第二三三話 「授法の儀式」


 いまだに、あーんされるの慣れないのよね。

 もちろん嫌じゃないのだけれども、その、照れてしまいます。

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