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第二二一話 「最低の状況」


 「ただいまー。」

 「今、戻ったッスー。イチャイチャしてる悪い大人はいないッスかー?」

 「人聞きの悪い。」


 肩にしだれかかるサオリさんの湯呑に、お酒を注いでいるタイミングで二人が帰って来た。


 「おかえりなさい。」

 サオリさんはそう返事をしたかと思うと、私の肩にぽてっと自分の頭を乗せる。

 結構酔っているらしい。


 「人聞きの悪いって、めっちゃイチャイチャしてるじゃないッスか!」

 そういってサオリさんの反対側にミツキがくっついてきて、肩にその顎を乗せる。

 そして首を噛まれたので、酒の瓶を置き、背中から腰に手を回して引き寄せ、大人しくさせた。


 「はい、お父さんどーぞ。」

 対面に座ったサナがそういってお酒の瓶を差し出してくる。


 「ありがとう。サナが選んでくれたこのお酒、とても美味しいよ。」

 注いでもらった酒を一口飲み、その湯呑を置いて手を伸ばしサナの頭を角ごと撫でると、そのまま両手で手と手首を捕まれサナの頬に当てられてしまった。


 「お父さんが喜んでくれて嬉しいです。」

 うっとりとしながら頬への感触を楽しんでいるように見える。


 「あ、お母さん、あまり飲みすぎるとお風呂入れなくなっちゃうよ?」

 「そうだお風呂!」

 サオリさんがシャキッと背筋を伸ばして、お酒の入っている湯呑を座卓に置いた。


 「サナ、お母さんと一緒にお風呂はいらない?」

 「うん、いいよ。ミツキちゃんは?」

 「あー、アタシはここでパパとゴロゴロしてるッス。」

 「サオリさん、酔ってるから気をつけてね。」


 「はいー大丈夫ですー。」

 そういって居間から直接露天風呂に繋がる障子を両手でスパーンスパーンと開けていくサオリさん。


 なんか時代劇っぽい。


 居間から広縁へ、広縁から露天風呂の洗い場への障子を開けたかと思うと、そのまま広縁で茶羽織を脱ぎ始めた。


 サオリさんについていったサナが止めるかと思ったが、同じ様に服を脱いでいく。

 おいおい。


 「あ、お父さん。」

 よし、ようやくこっちから丸見えだということ気づいたのか。


 「酔っ払っちゃったお母さんに何かあったら困るので、ここ開けておきますね。」

 違う、そうじゃない。


 サオリさんの肩から滑るように茶羽織りが床に落ちていき、サナの緩めた帯がその身体にまとわりつくように足元に降りていく。


 「パパ、どうぞ。」

 「ありがとう。」

 ミツキにお酒をついでもらいながら、それをぼんやりと眺めている。


 エロいというか色っぽいというか、もちろんそういう雰囲気もないわけではないのだが、二人の女性らしい動きとそのシルエットが、ただただ美しい。


 「ふぁんか…凄いッフね。」

 「そうだなぁ。」


 今の状態を説明するなら、母娘おやこのストリップを見ながらお酒を飲んでいるという最低の状況の上、さらにもう一人の娘を胡座をかいた足の間に座らせて、自分の指を二本、その口に咥えさせている状態なのだ。


 いや、ミツキの方は、お酒を勧めたのだが今日は飲まないというので、淫魔法【ウェット&メッシー】で指から直接ジュースを飲ませてやっているだけなのだが。


 傍から見たら酷い絵面だろうな。

 でもお酒がすすんじゃう。


 全裸になったサナとサオリさんが、こちらに向かって笑顔で手を振って湯船の方に向かっていく。


 「あの二人、裸見られることに抵抗ないんスかね?相手がパパとアタシだからッスか?」

 「地元に温泉があって、裸の付き合いに慣れているとか、そういう感じかもしれないな。」


 サナなんて最初、裸よりも角隠すくらいだったしな。

 でもたぶんサオリさんは酔っ払ってるだけだと思う。  


 「そんなもんスかねぇ。」

 「ミツキみたいに恥ずかしがってくれるほうが盛り上がるんだけどね。」

 「パパ、たまに意地悪ッスよね。」

 ミツキに指で頬を突かれる。


 「だって恥ずかしがっているミツキ、超可愛いし…。」

 あ、うさ耳が赤い。


 「もー!そういうところッスよ!このパパ!兎殺し!鬼殺し!」

 悪口なんだかなんだか分からない言葉で非難(?)されている。


 「パパ、お酒飲むと色々積極的ッスよね。」

 口に出してスッキリしたのか、またミツキがお酒をついでくれた。


 「そうかな?んーそうかも。」

 「普段、色々我慢してるッスか?」

 胸の中のミツキが頭をるようにして見つめてくる。


 「我慢、というのも少し違うような気がするな。

 たぶん、いとしすぎて、そういう事で傷つけるのを怖がっているのかもしれない。」


 「愛しすぎて?」

 「愛しすぎて。」

 「アタシもッスか?」

 「もちろん。当たり前だろ?」

 身体全体でミツキをギュッと抱きしめる。


 「もう…ホントにそういうところッスよ…。パパ…」

 「ん?」

 「大好きッス。」

 そういってミツキは頬ずりしてきた。


 「ミツキ、今日はご飯つくってくれてありがとね。」

 「そんな、サナちーに比べればアタシなんて、たいしたことしてないッスよ?」


 「それでもありがとう。

 前に牧場いった時にもお弁当作ってくれたろ?あの時と同じくらい嬉しかったよ。」

 「もう!あの時のことは忘れて欲しいッス!」


 そういやあの時はサナに騙されてミツキがおにぎりで『私を食べて』の合図出したので、その晩に残さず食べたんだったか。


 お互い、めちゃくちゃ盛り上がってしまってたっけな。 

 残さずどころか、おかわりもしたし。



 サオリでーす。

 酔っ払ってまーす。

 温泉気持ちいいでーす。

 

 次回、第二二二話 「サオリの気持ち」


 胸がドキドキしてるのは、お酒と温泉のせい…ですよね?

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