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第二二○話 「探検」


 おう、ヤバイ。

 お酒のせいか二人の世界に入ってしまうところだった。


 ミツキを探しに寝室とは反対側の障子を開け、広縁の障子も開けて露天風呂まで来たが誰も居ない。

 っていうか、この露天風呂、洗い場も浴槽も今まで以上に広い上に木造りだ。


 庭にも降りられる造りになっているようだが、見えない壁があり、そこから先へは進めないようだ。

 魔法で作った(?)部屋の限界なんだな。


 「お父さん、こっちこっちー。」

 サナの声がした方に向かう。

 露天風呂に繋がる内風呂の方だな。


 「あ、パパ、やっと来た。」

 内風呂から更に抜け、脱衣所の方に来たところで二人と出会った。

 思いっきり逆周りできてしまったようだな。


 「あー、個室サウナか。」

 「サウナッスか?」

 「蒸し風呂みたいなもんだよ。」

 「いや、それはわかるッスけど、木造りってのは珍しいッスね。」


 ミツキは蒸し風呂やサウナは石造りのものしか知らないらしく、サナ自体はそれ自体を知らないそうだ。


 まあ地元に温泉があるくらい水が豊かなところなら、わざわざ水の節約のために蒸し風呂にしなくてもいいだろうしな。


 そのままサナとミツキと一緒に部屋を巡ったが、小さいながらも書斎や茶室もあった。


 おいおい、一泊おいくら万円なんだこの部屋。

 豪華過ぎない?


 洗面所経由で最初の部屋に戻り、サオリさんと合流する。

 サオリさんも露天風呂を見てきた帰りのようだ。


 「浴衣もありましたよ。」

 開け放たれた寝室の襖から見えるクローゼットを指さしているサオリさん。

 なんかウキウキしているように見える。


 「みんなのために用意した部屋なんだから、あるものは好きに使っていいですよ。」

 「そうですか?」

 胸の前で合わせた両手を首と一緒にちょっと傾け、そそくさと寝室に消えていくサオリさん。


 「じゃ、あたしはちょっと洗い物だけして来ますね。」

 「サナちー、あたしも手伝うッスよ。」

 「じゃあ、私も水出しに行くか。」

 

 淫魔法【ウェット&メッシー】要員として着いていこうと思ったがサナに止められた。

 「今はギルドのお部屋の方で食器を乾かせるから大丈夫ですよ。

 炊事場の方で洗ってくるので、お父さんはゆっくりしていてください。」


 「そうッスそうッス。すぐ戻ってくるッスから、ママさんとイチャイチャするのは程々(ほどほど)にしておいた方がいいッスよー。」


 人をなんだと思ってるんだ。


 そういって二人は扉から消えていったが、座卓に座った途端、サナがお酒の瓶を持って戻ってきた。

 「待っている間、お酒飲んで待っててくださいね。」

 そう言って、かがんで瓶を置いて行くので、捕まえて頬と角にチューをする。


 「えへへー。」

 サナは嬉しそうに頬にキスを仕返して部屋に戻っていった。


 折角だからいただくか。

 湯呑を取り出し、酒を注いだくらいのタイミングで、今度はミツキが戻ってきた。


 「パパ、ズルい。」

 「悪かった悪かった。」

 正座して抗議しているミツキを抱きしめ、そのうさ耳の外側をなぞるように甘噛してやる。

 一山、二山。


 「うー、そこまでは求めて無かったッスー。」

 うさ耳を赤く染め、ちょっとフラフラしながら、再度ミツキは部屋に戻っていった。


 「せっかくですから、レン君も浴衣に着替えませんか?」

 サオリさんが浴衣に茶羽織という姿で、寝室の襖からこちらを覗いている。


 撫肩のせいか胸が豊かなせいかは分からないが、着たばかりだというのにもう浴衣の胸元がちょっと妖しくなっている。


 独りだけ浴衣というのも落ち着かないだろうし付き合うか。

 決してその胸元の引力に引き寄せられたわけではない。



▽▽▽▽▽



 「はい、これで大丈夫ですよ。」

 「ありがとうございます。サオリさん。」

 浴衣に着替え、適当に帯を結んでいたら、サオリさんに着付け直されてしまった。


 帯を貝の口結びにしてもらったのだが、結び方を教えるといって後ろから抱きつくように帯に手を回して結んで貰ったので、もうおっぱいの感触とサオリさんの良い香りで結び方なんて全然頭に入ってきていない。


 たぶん、これ誘ってるんじゃなくて天然なんだろうなぁ。

 こういう所は、ホントにサナのお母さんって感じがする。



 サナです。

 里の離れと同じくらい広い宿ですね。

 お婆ちゃん、元気かな?


 次回、第二二一話 「最低の状況」


 お父さん、お酒足りるかな?

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