表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

210/979

第二○九話 「職業選択の自由」


 「とはいえ、なりたいと思ってなれるものなの?」

 「本職じゃないとはいえ『僧兵』のママさんがいるから不可能じゃないッスよ。」

 「はい。鬼族のお宮か、せめてほこらがあれば帰依きえの儀式が出来ますから。」

 

 詳しく話を聞くと、既に氏神に通じている者が儀式に参加していれば、その儀式によってその関連職業への道へ導けるものらしい。

 ん?と、いうことは


 「ミツキは今のままでは魔法職になるのは無理なのか。」

 「『修験者』はもちろん、『巫女』や『尼』みたいな専門職はアタシ一人じゃ無理ッスね。

 でも、ランク1どころか今はランク2ですし、帰依の祝詞も覚えてはいるので、さっきの話の中の職業なら『僧兵』か『侍』ならママさんの儀式参考にして出来ないことは無いッス。」


 氏神に近い職業ほど、それに通じた職業の助けが必要な様子だな。

 あと口ぶりからいうと、『僧侶』の女性版が『尼』っぽい。


 「でも…」

 「でも?」


 「うちらのバランス的に考えると、どちらかと言われれば『侍』を選ぶべきだとは思うんスけど、アタシの能力的に考えると中途半端だと思うッス。


 たとえ魔力は多くても筋力は低めだし、魔法に使いそうな精神力や感覚もこのステータス見ると普通ッス。


 それでもパパと同じ人族並だから悪くはないと思うッスけど、ママさんのような物理攻撃力がある魔法職って感じは期待できないと思うッス。


 だから、もっと得意分野を活かしたほうが、みんなの役に立ちそうな気がするんスよ。」


 「得意分野…敏捷や器用を活かすということか。いいんじゃないかな?」

 一芸特化は個人的に非常に好みだし、逆に作戦が立てやすい。


 「そうッスよね?あと、それプラス魔力も活かすとしたら、ここは『野伏のぶし』がいいと思うッス。」

 「野伏?」


 「魔法職と技術職の間くらいッスね。魔法的には探索系や補助系の魔法が使えるッス。

 技術的には同じく探索系の罠探しとか罠外しとか、不意打ちや飛び道具系ッスね。

 技術の方は魔法と違ってすぐ使えるようになるわけじゃないッスけど、帰依の儀式で氏神様からやり方を授かれるッス。」


 「それならせっかく覚えた弓矢の使い方も活かせるね。」

 「そうッス。不意打ちとかもパパの出してくれる今の武器とは相性いいと思うッス。」

 確かにドレインを付与している武器とは相性がいいだろう。


 「うん、いいと思う。」

 「そうなると、後必要なのはお宮か祠ですね…。」

 「そういえばこの街では見たことないですよね?お父さん。」

 「そうだなぁ。」


 特性【ビジュアライズ】を使って淫魔法【夜遊び情報誌】で取得した街の情報を見直してみるが、街の中にはそれらしい場所は無いようだ。


 「普通、迷宮があれば、お宮はともかく祠くらいは、そう遠くないところにあるはずなんですけどねぇ。」

 サオリさんが首を傾げている。


 サオリさんがこの街に来るまでにサナを探しているときに使っていた一週間に1度しか使えない捜し物の方向と距離が分かる魔法も祠で行う儀式魔法だったそうな。


 それでなくても亜人族の魔法使いはその力の根源が氏神ということもあり、お参りの習慣があるため、亜人族の出入りも多い迷宮がある街なんかは普通用意されているとの事だ。


 「ロマさんに聞いてみたらどうでしょう?街の中にないなら、街の外にあったりするかもしれないですし。」

 サナが改めて仰向けに寝て、なぜか私の顎を撫でながらそういった。


 「それもそうだな。亜人族の探索者にとって必須な施設だろうから、どこかそう遠くないところにあるんだろう。

 今度会ったら聞いてみるよ。」

 サナの頭を撫で返しながらそう答える。


 それにしても…

 サオリさんが、その胸が収まりきらない巫女装束のまま屈み込んでビジュアライズの画面を覗き込んでる関係で谷間がエライことになっているのをそろそろなんとかして欲しい。



▽▽▽▽▽



 その後、最初の一手で止まってしまっていたお着替えタイムを何度か繰り返した後、ようやくサナとミツキの二人はくっつきたい欲が満足したのか、お帰りなさい会の買い出しに行くと二人して出かけていった。


 私が子どもの身体の時のように変な男に絡まれないかと心配したが、探索者ギルドが近い東区じゃなければ大丈夫だというので、噴水公園の公衆トイレまでショートカットして行く事、なにかあったらすぐ念話で教えることを条件に送り出したのだが、全員に過保護だ過保護だとからかわれた。


 だって心配なんだもの。


 幸い、会話をしながらダベっていた関係でお昼もとうに過ぎており、普段探索者がうろついているような時間じゃないので良しとしたが、普段なら絶対ついていっているところだ。

 結局、買い出しは北区にしか行かないし、飲み物も全部そこで買ってくるとういうので折れる事にした。


 とはいえ、ついていくとしても発情臭を出しているサオリさんを連れて行くわけにはいかないし、一人留守番させるのも気が引けるので私も部屋に残るのはしょうがない。


 何より


 「あの…わたしもそちらに座っても良いでしょうか…。」


 今度はサオリさんがくっついてくるターンらしいのだ。

 


 ミツキッス。

 茶兎族の探索者としては『侍』も『野伏』もポピュラーな職業ッス。

 あとは『猟兵』や『軽戦士』とかもそうッスね。


 兎人族は攻撃を避ける系の種族なので逆に防御する系の前衛は不向きッス。

 

 次回、第二一〇話 「サオリのターン」


 実は魔法職も人族に比べれば同じかそれ以上らしいッスよ?

 でも魔法をかけるのは得意でも受けるのは苦手らしいッス。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ