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第二○四話 「仕分け


 カプセルを並べ終わったので、次は先程淫スキル【盗撮】で撮影したギルドの掲示板を特性【ビジュアライズ】で大きく表示する。


 掲示板に貼ってある依頼の中から、今持っているカプセルが達成目標であるものを三人に探してもらい、その依頼書部分を抜き出して再度拡大して表示させた。


 三人とも亜人族なのに地味に全員【共通大陸語】の読み書きが出来るんだよな。

 ミツキの話によると、人族と交流がある亜人族でも普通、【共通大陸語】の会話は出来ても文字は読めない。または簡単な単語や文章なら読めても書けない。という亜人族の方が圧倒的に多いらしい。


 元々【鬼族語】のような種族言語をそれぞれ持っているので、【共通大陸語】も読み書きできるバイリンガルのようなのは珍しくて当然だろうと日本人の私は思ってしまう。


 公用語が2種類以上ある国が出身だと、また違う感想になるだろうな。


 元族長で対外折衝の可能性があるサオリさんが【共通大陸語】を話せるのは分かるし、その娘であるサナも家庭環境的や学習環境的に話せるのもわかるが、何よりミツキが凄い。


 両親の影響や読書が趣味だったというのを加味しても、【共通大陸語】、【鬼族語】、【兎人族語】の会話と読み書きができるトライリンガルだ。


 前に頭が良いんだね。と、褒めたが

 「コツというか感覚的なところが大きいッスねー。あと、話せたとしても、ほら、どうしてもこうして南部訛り出ちゃうから、それほどでもないッスよ?」

 と、謙遜された。


 うさ耳が赤く、尻尾もピコピコ動いてたので、たぶん照れ隠しだったんだとは思う。


 そんなことを思い出しているうちに、依頼書に合わせたカプセルの仕分けがどんどん進んでいっている。



▽▽▽▽▽



 「こんなもんッスかね?」

 「大体、ぴったりね。」

 「余ったお肉類は普段食べる用にするか、おかみさんに相談してみませんか?」

 「そうだね。」


 デミオークやデミミノタウロスなど広い階層で出る敵を相手にしていた前までの狩りと違い、高い階層でのみ出る敵を選んで狩りまくってた関係か、依頼1件当たりの必要ロット数が少なく、今回だけで8件の依頼を達成できそうだ。


 今までの達成件数を考えると二日分で8件は相当多い。

 一般的に考えても相当多い部類じゃないだろうか?


 「別の街とかで売れる事も考えたら希少価値のあるアイテムは依頼として提出しないで、手元に持っておくのも手ッスね。」


 『ゴーレムの核』とか、デミイメンススネークのドロップした『毒石』とかは、これ1個で依頼達成できるくらいのレア率らしい。


 あと、手持ちの中だと1個で依頼を達成できるのはグラスゴーレムからドロップした『ガラスの塊』もそうだな。

 やっぱりこの世界のガラスは迷宮から取れるんだと感心した覚えがあるが、グラスゴーレム自体は幅広い階層で出る敵なので、レアというより需要が高いかカプセルに入っている一塊当たりの量が多いのだろう。


 デミジャイアントトードがドロップした『トードレザー』なんかも2枚で依頼が達成できるので、これもその類なのかな?


 ミツキやサオリさんの話によると耐水性の大きな革なので、防具よりも建材や道具作りに使われるらしい。


 あと、デミイメンススネークから淫魔法【腸内洗浄】でカプセルに回収した『蛇毒 (デミイメンススネーク)』なんかは、依頼書こそ出てないが、かなりレアなアイテムになるのではないだろうか?


 基本、本体を倒した時に一緒に消えてしまう毒だしな。


「それじゃ、『ゴーレムの核』と『毒石』、あとは余った『豚肉』と『牛肉』は残しておくとして、あとは依頼として換金してしまおう。」

 地味に『蛙肉』や『蛇肉』、『蜥蜴肉』の味が気になるところではあるが、依頼書のロット数丁度しかないので諦める。


 サナも調理したことが無いといってたので、無理して食べるほどのものではない。

 換金額的には安いのだが、依頼達成数を稼ぐには良さそうなのだ。


 「あ、そういえば、サオリさん、宿屋の方の部屋の料金、この間渡した分じゃ全然足りなかったんじゃないですか?

 今までいくらくらいかかってます?」


 「そんな、お金なんていいのに…。」

 「いえ、必要経費ですから。」

 私が寝込んだせいと言いかけたが、それをいうと、またサオリさんが自分のせいだといいそうなので、必要経費だと押し通す。


 「今日の分含めて、えーと、銀貨160枚です。」

 「大金じゃないですか、言ってくださいよ。」

 金貨1枚超えてるじゃねーか。

 足りないどころの話じゃない。


 「先にいただいた分も含めて金貨2枚半くらいの手持ちがあるので大丈夫かと…。」

 黙っていたらそのままギリギリまで使いそうだな。


 「前に渡した分の追加として金貨1枚と大銀貨5枚を渡しておきます。」

 「それは駄目です。そのお金はサナの奴隷解放用に使ってください。」

 サオリさんの表情が遠慮がちな顔から真面目な顔へと変わった。


 サナにアイコンタクトを取ると、この表情の時のサオリさんは一歩も引かないみたいなニュアンスが帰って来る。


 サオリさん的に考えると、宿代としては少なくとも自分の分と娘の分、それと自分のせいで倒れた(と、思っている)私の分は自分が出すべきだとでも思っているのだろう。

 そう考えると払いたい気持ちはわからないでもない。


 「…わかりました。探索者ギルドの簡易宿泊所の部屋も取れたことですし、この部屋は今日で出てしまいましょう。

 この部屋の代金はサオリさんにお願いしますが、次の部屋代は必要経費として集めたお金の中から出します。

 それでいいですか?」


 「はい。」

 それならば。と、サオリさんが満足げに頷いた。



 サオリです。

 たった2日でこんなに依頼が達成できるくらい実入りがいいなんて…。

 わたし一人だった時には想像も出来ないくらいです。


 次回、第二○五話 「う。」


 この街に来てからわたし、レン君に甘えてばかりね…。

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